1.後見人はオールマイティではない
後見人が選任されたからといって、ご本人に関するすべてのことを後見人が代理できるわけではありません。その代表的なものが、事実行為・身分行為・医療同意です。
2.事実行為とは
ここでいう事実行為とは、ご本人の看護や介護、買い物代行や掃除などを指します。後見人は、これらの事実行為を行うのではなく、介護や看護、買い物代行や掃除など各種サービスを提供する契約を締結し、本人の生活環境が平穏に保たれるようにするのです。
3.身分行為とは
身分行為とは、婚姻・離婚・養子縁組・遺言など、本人の身分関係に変化をもたらす行為を指します。身分行為については、自己決定権が尊重されるため、後見人等による代理になじまないものとされます。従って、後見人の裁量で、ご本人と第三者と養子縁組をさせることはできません。
4.医療同意とは
病気のために外科的な手術を必要とするケース、インフルエンザ等の感染症を防止するために予防接種を打つようなケース、これらのケースにおいては、医療行為を行うにあたり必ず本人の同意が必要となります。
医療行為は、身体への侵襲をともなうため、後見人等の法的な代理権を持つ人でも代理して決定できるものではありません。
5.死後事務
以上のほかにも「死後事務」に関する問題があります。後見業務における「死後事務」とは、ご本人が死亡した後において葬儀や埋葬の手配をしたり、介護施設利用料や入院費用などを清算することを指します。
後見人の権限は、ご本人の死亡によって消滅するのですが、とくにご本人に身近な親族がいない場合には、実質的に後見人以外に死後事務に対応できる人がおらず、後見人が死後事務を行わざるを得ないというケースがよくあります。
6.まとめ
以上の通り、後見人が選任されたからと言って、全てのケースにおいて後見人が問題を解決できるわけではありません。後見人の権限外の部分を補うためには、福祉関係者・医療関係者・親族などと密接に協力していくことが必要となります。
そして、こうした各関係者との間で「ご本人をサポートするネットワーク」を形成することも後見人の職務の1つといえます。
後見制度の利用にあたっては、後見人の職務範囲や「後見人にはできないこと」をしっかりと把握しなければなりません。そのうえで「後見人にはできないこと」を補うための対応をとる必要があるのです。
そのためにも、司法書士等の後見専門家への相談を活用していただきたいです。
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