抵当権を抹消しないとどうなる?抹消のための費用と手続きは?

抵当権を抹消しないとどうなる?抹消のための費用と手続きは?

2020年12月21日

住宅ローンを完済により抵当権は消滅する!

(1)住宅ローンの完済 = 担保に入れられた状態からの解放!

住宅ローンを借りると、購入した建物や土地に「抵当権」という権利が設定されます。
そして、建物や土地の登記簿に、抵当権が設定されていることが記録されるのです。

「抵当権」とは、万が一、住宅ローンの返済が滞った場合には、抵当権を持っている人(=お金を貸している人=金融機関)が強制的に建物や土地を競売できる権利です。
わかりやすい表現をすれば、「担保に取られている」ということ。

とはいえ、住宅ローンを完済した場合には、完済によって「担保に入れられた状態」から解放されることになります。
抵当権は「住宅ローンの返済が滞った場合」に備える権利であり、住宅ローンそのものが完済により消滅すれば、抵当権も消滅することになっているからです。

(2)抵当権の抹消手続きをしない = 登記簿上に登記が残り続ける

住宅ローンの完済により、土地や建物に設定されている抵当権は、消滅します。

ところが、土地や建物の登記に記録されている「抵当権設定登記」は、自ら申請しなければ、土地・建物の登記記録に永遠に残り続けます。

登記記録を管理するのは「法務局」なのですが、法務局に「抵当権は消滅したよ」と教えてあげなければ、法務局が勝手に抵当権を消すことはありえないからです。

そのため、抵当権の抹消手続きをしないということは、建物や土地の登記記録に「抵当権」という登記が残り続けるということを意味します。

(3)形式的な「抵当権」が登記簿に残り続けるデメリットが・・

「抵当権」という登記が残り続けたとしても、これはあくまで「登記という形式」が残っているにすぎません。
住宅ローンの完済により、抵当権は既に消滅しているため、「抵当権に基づいて強制的に競売にかけられて建物や土地が売却されてしまう」ということはありえません。

ところが、形だけの抵当権が残り続けることで、次のような「困ったこと」が起きる可能性があります。

  • いざ抵当権を抹消するときに、必要書類や手間が増える。
    (抹消手続きの期間が数か月、場合によっては数年かかることも!)
  • 形式的な抵当権が残っているため、円滑に不動産を売却することができない。
    (通常、不動産を売却する際には、抵当権等の余計な登記記録を抹消したうえで、買主に引渡しをする必要があるためです。)

そのため、 住宅ローン等の完済後に、金融機関から抹消に関する書類を受領したら、速やかに抵当権抹消の手続きを進めるべきです。

2つの「困ったこと」について、詳しく見ていきましょう。

困る点1 必要書類や手間が増える

(1)金融機関から受け取った書類の有効期限が切れる!

金融機関から交付される抵当権抹消書類のなかに「代表者事項証明書」というものがあります。
この証明書は発行後3ヶ月で効力が失われ書類として利用できなくなります。

その場合には、金融機関に書類の再発行を依頼する必要があります。
書類の再発行については、手数料を請求する金融機関もあります(数千円程度)。

(2)金融機関の代表者が変わってしまう!

変更金融機関から交付される抵当権抹消書類のなかに「(金融機関からの)委任状」があります。

期間が経過することによって、委任状に記載された代表者が交代してしまった場合、新たに委任状を受領しなければなりません。
(新たに委任状を受領せずに登記手続きを進める方法もありますが、添付書類の追加・申請書への追記など通常の抹消登記申請とは異なる対応が必要となります。)

(3)金融機関から受け取った登記識別情報(権利証)の紛失

金融機関から交付される抵当権抹消書類のなかに「登記識別情報(権利証)」があります。
これを紛失してしまうと再交付ができないため、通常とは異なる手続(事前通知制度)をとる必要があります。

この場合、期間・費用が通常よりも多くかかる可能性があります。
また不動産の売却が絡むケースでは、スケジュールの観点からも大きな問題を生じさせます。

困る点2 円滑に不動産を売却することができない

古い抵当権が売却あるいは売却スケジュールの障害となることがあります。
売却にあたっては、既存の抵当権を抹消したうえで、取引を行うことが通常です。

抹消のための書類が、売却時に完全にそろえば問題はありませんが、前述のように期間の経過によって追加の書類や手続が必要となることがほとんどです。
追加の書類あるいは手続きが、所有者限りで完了できるものであればよいのですが、例えば「抵当権者である銀行の委任状が必要となった」ということにあれば金融機関側での手続きに相応の時間がかかることになります。

想定外の時間がかかることによって、売却スケジュールが大きく変更となったり、最悪の場合、取引自体が白紙に戻ってしまうケースも発生しかねません。

当事務所にて「完済してから期間が経過した抵当権を抹消して欲しい」とのご依頼を受けるケースでは、ほとんどが、不動産の売却手続きを進めたいお客様からの依頼です。
そうしたお客様のなかには、抹消していなかった抵当権があったため売却スケジュールを変更せざるを得なくなった方も少なくありません。

抹消書類を受領したら、はやめに抹消手続きをしよう!

(1)手続きは「不動産の所在地を管轄する法務局」にて

抵当権抹消手続きは、抵当権の設定された建物・土地の所在地を管轄する法務局にて行います。
たとえば、沼津市にある建物・土地を管轄する法務局は、「静岡地方法務局 沼津支局」です。

「管轄する法務局がわからない・・・」という場合には、「〇〇市(不動産の所在地) 法務局 管轄」で検索してみましょう。
検索のトップに、管轄法務局のHPが表示されるはずです。
法務局のHPを確認すれば、場所や電話番号が記載されています。

法務局に申請する際には、事前に相談予約をしてから行ったほうが、スムーズに手続きが進むと思います。

なお登記申請は、土地・建物の所有者の方が行うこととなります。
「住宅ローンを借りていた人」と「土地・建物の所有者」が異なる場合には注意しましょう。
この点も、疑問があれば、法務局に事前相談することをオススメします。

(2)必要書類は「金融機関から受領した書類」のなかに

抵当権抹消手続きに必要な書類は、つぎのとおりです。

  • 申請書
  • 添付書類
  • 登録免許税(不動産の個数 × 1000円)
  • 申請人の運転免許証等の本人確認書類
  • 申請人の認印

申請書は、「抵当権抹消 申請書」で検索すれば、法務局が公開している申請書記載例がヒットするかと思います。
そちらを参考に作成ができるでしょう。

また、添付書類は、金融機関から受領した書類の中に一式がそろっているはずです。

法務局窓口にいって、受領した書類で手続きすれば、通常の抵当権抹消手続きは数週間で完了します。
(しかも、そのほとんどは法務局での処理期間です。)
ところが、抵当権抹消手続きを放置することで、抹消手続きの期間が数か月、最悪のケースでは数年となってしまうこともあるのです。

余計な手間を増やさないためにも、はやめに抹消手続をとることをおすすめします。

ご自身で手続きが難しければ司法書士に依頼を!

ご自身で行う時間がない、あるいは手間であるということであれば、是非、お近くの司法書士にご依頼ください。

司法書士に依頼すると、当然ながら司法書士に対する報酬が必要になってきます。
報酬は、個々の司法書士が決めることができるため、依頼する司法書士に確認するようにしましょう。

参考のため、当事務所(沼津の司法書士貝原事務所)の報酬モデルケースをご紹介します。
(なお、当事務所へのご依頼にあたっては、原則、当事務所における面談が必要になりますので、ご了承ください。)

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