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1.株式会社の吸収合併を利用するケース
(1)吸収合併とは
「吸収合併」とは、消滅する会社の権利義務の全部を存続する会社に承継させる手続きのことをいいます。
A社(存続会社)がB社(消滅会社)を、飲み込んでしまうようなイメージです。
合併には、このほかにも新設合併というものがあります。
こちらは、新しく設立する会社にA社もB社も飲み込まれるようなイメージです。
(2)さまざまな吸収合併のパターンがある
ひとくちに吸収合併といっても、合併に至る経緯や、合併当事者の状況により、さまざまな合併のパターンが考えられます。
株式会社の吸収合併の手続きについては「会社法」という法律で基本的なルールが定められているのですが、会社や株主の状況により、複数の手続きの進め方が規定されています。
そのため、吸収合併の手続きについてご案内する際には、手続きの分岐がいくつも存在するのです。
そこで、この記事では「おおまかな吸収合併手続きの流れを確認する」という目的のもと、細かな点への言及を省略していますので、ご了承ください。
2.吸収合併の手続き
(1)全体の流れ
吸収合併の手続きの、おおまかな流れは次の通りです。
- 吸収合併契約の策定・締結
- 吸収合併契約の株主総会における承認
- 債権者保護手続きの実施(官報公告・各別催告など)
- 吸収合併の効力発生
- 吸収合併による変更登記
このほかにも重要な手続きが存在しますが、大きな流れとしては以上のようなものとなります。
すべてを上から順番に進めていかなければならないというわけではありません。
順番を入れ替えてもよい手続きも存在します。
一方で、債権者保護手続きにおける「官報公告」のように、希望日での掲載に向けて数週間前には掲載申込みを済ませておかないといけない手続きも存在します。
吸収合併の手続きを進める際には「段取り」が何よりも重要です。
以下では、ポイントを絞って確認していきます。
(2)株主総会における吸収合併契約の承認
合併手続きにおいては、原則として、株主総会において合併契約書の承認をする必要があります。
承認を受ける合併契約の内容は、当然ながら合併当事者間で確定・合意されたものになります。
そのため、たとえば「取締役会(あるいは取締役の過半数による決定)における合併契約の承認」なども、「株主総会における承認」の前提となる手続きとして必要になってきます。
株主総会における承認は、原則的には特別決議になりますが、決議要件がかわるケース(とりわけ消滅会社)や種類株主総会の決議を要するケースに留意しましょう。
(3)官報公告などの債権者保護手続き
会社法は、それぞれの会社に対する債権者を保護するため、吸収合併を進めるにあたり、つぎのような「債権者保護手続き」をとることを各会社に義務付けています。
- 債権者に対して異議申述期間を少なくとも1カ月以上設けること。
- 合併及び異議申述期間について、官報公告等の方法により債権者に知らしめること。
- 【原則】官報公告+(知れている債権者に対する)各別催告
- 【例外】官報公告+(定款に定めた)電子公告等
掲載申込みの締切日、決算公告の状況、各別の催告を行う場合の通知方法など、実務的な課題が多く存在します。
(5)合併の効力発生と登記
吸収合併の効力は、必要な手続きを完全に完了させることで、合併契約に定めた「効力発生日」に発生します。
効力発生により、消滅会社は「解散」し、存続会社は消滅会社の権利義務を承継します。
そして効力発生日から2週間以内に、消滅会社については「解散登記」を、存続会社については「合併による変更登記」をしなければなりません。
吸収合併と同時に、存続会社において登記事項に変更がある場合(後記3(2)のようなケース)には、それらの変更も登記に反映させることとなります。
3.吸収合併の手続きと他の登記手続きの関係
(1)吸収合併に先立って行う登記手続き
吸収合併に先立ち、事業目的を精査したり、既存役員の退任手続を行うことがあります。
また、吸収合併前に、たとえば特定の会社資産(不動産など)を処分することもあります。
こうした点が、吸収合併契約や関連契約の内容となることもあり、その場合には当該契約に従い、吸収合併の効力発生前に、定められた約束事を完遂させる必要があります。
(2)吸収合併と同時に行う登記手続き
吸収合併と同時に、存続会社側ではつぎのような手続きを行うことがあります。
- 商号変更
- 目的変更
- 本店移転
- 役員変更(取締役の追加等)
こうした変更を行う場合には、存続会社にあっては、吸収合併にともなう手続きを進めるのと並行して、それぞれの変更に則した手続きを行っておく必要があります。
4.吸収合併の手続きと司法書士
(1)登記まで含めた司法書士の役割
吸収合併の手続きにおいては、複数の要件を完ぺきにクリアすることが求められます。
「〇〇の手続きにミスがあった。」「〇〇の手続きを忘れていた」ということになると、関係者が想定してたスケジュールに大きな変更がでるためです。
また上記3で確認したように、たんに合併手続きのみを行うのではなく、合併に関連した各種手続きを行う必要があるケースも存在します。
そのため、最後の「合併による変更の登記」に関与するだけでなく、「合併による登記を問題なく完了させるため」に司法書士がプロセス全般に関与するケースが増えているように感じます。
(2)沼津の司法書士貝原事務所
わたしたち「沼津の司法書士貝原事務所」では、税理士事務所さん等と連携し、吸収合併をはじめとした組織再編に関係する手続きのサポートを行っています。
最後の登記手続きにのみ関与するケースだけでなく、問題なく登記手続きを完了させるために、手続き開始時点からご一緒させていただくケースもございます。
吸収合併については、兄弟会社や親子会社の整理・再編のために利用されるケースが増加しており、当事務所を活用いただくべく、日々研鑽を重ねております。