相続した実家を売却したいとき

相続した実家を売却したいとき

2021年7月29日

親が亡くなり、親が住んでいた実家の土地・建物を相続したけれど、実家に住む相続人はいないので売却してしまいたい。そうした場合には、どのように手続き進めていけば良いのでしょうか?また、どれくらいの費用がかかるのでしょうか?

1.実家の売却の前に【まずは名義変更(相続登記)】

相続により実家を引き継いだ方が、ご実家を売却される際には、前提として相続登記が必要となります。

例えば、親が亡くなり、子供たちが実家である土地・建物を売却したいという場合を考えてみましょう。その時点では、実家(土地や建物)の登記名義人は親になっているはずです。

このままの状態では、実家を第三者に売却した際に、買主である第三者の名義にすることができません。まずは、親の名義から、売主となる相続人の名義に変更する必要があるのです。こうした名義変更の手続きを相続登記といいます。

2.相続人が複数いる場合に誰の名義にするべきか

相続人が1名であれば、あとは名義変更手続きを粛々と進めていくだけです。

一方で、相続人が複数いる場合には、どういった形で名義変更すれば良いのでしょうか?
相続人のうちの1人の名義にするべきでしょうか ? あるいは相続人全員の名義にするべきでしょうか ?

(1)売却代金の分割方法に影響

この点は、売却代金の分割方法と大きく関係してきます。
売却代金は、売却した際の登記名義人(=所有者)が取得しますので「共有名義での相続登記」をした場合には、あらたに登記名義人となった相続人全員が代金を取得します。
一方「単独名義」にした場合には、登記名義人となった1名の相続人が売却代金全額を取得しますが、かわりに他の相続人に金銭を支払うことで、全体のバランスをとることができます。「実家を単独取得するかわりに、金100万円を他の相続人に支払う」といった方法を「代償分割」といいます。

(2)どちらが良いかは一長一短(各事案ごとの判断が必要)

どちらが良いかは一長一短であり、具体的なケースに沿って検討する必要があります。
一般的なことを言えば、すぐに売却できるような物件であれば共有にするメリットがあります。一方で、共有名義にすると、共有者全員で売却手続きに参加する必要があり、手続きの負担は増加します。また、売却手続きに時間がかかるケースでは、共有関係が変化してしまうリスクが無視できません(名義を入れた相続人がさらに亡くなってしまうケースなど)。くわえて、売却による譲渡所得税などの帰属についても確認する必要があります。

(3)少なくとも安易な共有は避ける

ご自身で相続登記をされる方の中には、その後の手続きを検討することなく「共有名義」としてしまう方が散見されます。実家の名義変更をする際には、「名義変更後にどうするか?」を十分に検討する必要があるでしょう。とりあえず「共有名義」で相続登記をしてしまい、10年たったら共有関係が大きく変化し、売却はおろか不動産の管理にも困った状態になることは少なくありません。
方針に困るようであれば、たとえば司法書士に相談するというのも1つの方法です。

3.実家の売却に伴う手続・費用について

まず、実家の名義変更については、別の記事にまとめていますので、詳細が気になる方はこちらをご参照ください。
【参照記事:相続登記の報酬モデルケース(家族内での相続)】

実家の名義変更のほかには、次のような手続きが必要となります。

  • 売却に際して土地の測量が必要となるケースでは測量費用。
  • 建物の取り壊しが必要となるケースでは取壊費用。
  • 建物内の家具や動産を処分する必要があるケースでは、家財道具の処分費用。
  • 不動産業者に仲介を依頼すれば仲介手数料。
  • 不動産を売却した場合には確定申告が必要となるケースも。

4.実家の名義変更や売却を考える際には

相続した実家の売却を考える際には、相続開始後から計画的に物事を進めていく必要があります。とりわけ「実家の名義変更」は、遺産分割や実家売却の際に大きく影響を与えるものです。
安易な名義変更(相続登記)によって、その後の売却手続きが混乱する場面も目にします。是非とも慎重に検討を進め、必要があれば司法書士など法律専門職を活用してください。