相続登記と不動産の売却

相続登記と不動産の売却

2021年2月28日

1.居住予定のない不動産を相続する場合

不動産の所有者が死亡した場合、「相続」が発生します。
遺言等がなければ、死亡した方(被相続人)の財産は、法律で定められた相続人に引き継がれることになります。

不動産を引き継いだ相続人が、不動産を売約したい場合には、相続人が自身の財産として売却する必要があります。
そのため、相続開始後に、不動産を売却する場合には、まずは相続人名義に変更をする必要があります。
この「相続人の名義に変更すること」を、一般に「相続登記」といいます。

2.相続人の一人が引き継ぐが、複数で引き継ぐか?

(1)相続人が1人だけのケース

売却にあたり名義変更する際に、相続人が1名であれば、その相続人名義に変更すれば良いだけです。
「相続登記」の申請も、その相続人1名の関与のみで進めることができます。

(2)相続人が複数人いるケース

では、相続人が複数人いる場合には、どのようにすれば良いのでしょうか。

この場合には、2つの観点から検討する必要があります。

  1. 不動産を売却することで得た「お金」をどう分配するのか。
  2. 不動産を売却することともなう手続きを誰が進めるのか。

この2つの点に注目しながら、相続人1名が登記名義人となるケース、相続人複数名が登記名義人となるケースで、場合を分けて考えていきましょう。

ちなみに、相続人が複数いるけれど「登記名義」も「お金」も1名の相続人が取得するのであれば、その相続人名義に相続登記することになります。
【参照記事:ご相談・ご依頼から業務完了まで【相続登記(子が相続)】】

以下では、「複数の相続人で、売却して得たお金を分け合いたい」という前提で、説明をしていきます。

3.単独所有にする場合

まず第一に、相続登記は単独名義としつつ、売却代金相当額を代償金として、他の相続人に支払うという方法があります。

この方法では、売却手続きは登記名義人が単独で進めることになります。

フットワーク軽く売却手続きを進めることができる点はメリットですが、この方法をとる際に注意したいことは、売却に伴い仲介手数料・建物解体費用・譲渡所得税などの負担が発生する点、登記名義人となった相続人の国民健康保険料・介護保険料などに影響がでるケースがある点です。
そのため、これらの売却に伴う負担を考慮して代償金額を決定する必要があります。

さらには、つぎのようなリスクも考えられます。

  • 予定していた価額では売却できず、想定以上に代償債務が負担となった。
  • 不動産が売却できず、不動産の維持・管理にかかるコストを1人で負担することに。
  • 残地物の処分、建物解体費用など想定していなかった費用が発生した。
  • 譲渡所得税や介護保険料・健康保険料など売却に伴う負担を予定していなかった。

4.共同所有にする場合

相続登記は共有名義として、売却代金をそれぞれの持分で分割するという方法があります。
売却手続きは、登記名義人となった相続人が歩調をあわせて進めていくことになります。

この方法をとる際に注意したいことは、売却手続きも共同して進める必要がるということと、万が一、売却ができなかった場合には共有名義が残り続けることになる点です。

とりあえず共有名義にしておいたところ、共有者のうちの1名が亡くなって、その方の配偶者や子供が相続人となるということも考えられます。
そうなると、一層売却手続きが大変になってきますので、注意が必要です。

「とりあえず共有で相続登記」
⇒数十年が経過
⇒さらに相続が発生して、共有関係が複雑化・・・(売却手続きも困難に・・・)。

こうしたケースを、司法書士として仕事をする中で、よく目にします。

一方で、メリットとしては、持分に応じて売却代金を受け取り、課税や国民健康保険料等の負担も各人がそれぞれで負担することになるので、相続人同士で公平な状況となるという点です。

5.いつまでに売却?

とりあえず相続登記だけしてしまって、しばらくは故人のことも思って、そのまま所有しておくという方がいらっしゃいます。

もちろん、そういった感情を否定するわけではありませんが、不動産を保持し続けるためには、それなりの維持・管理を行う必要があり、また固定資産税等の税務負担も生じます。

また、譲渡所得税に関する「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」などのように、特例を利用できる期間が限定されている制度もあります。

この制度は、相続等により取得した被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等を売却した際に、一定の要件に当てはまるときには譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除するものです。

控除額が大きいので、譲渡所得が発生する場合には、この特例の利用を検討するべきかと思いますが、この特例は、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却することが1つの要件となっています。
この特例は、相続開始から3年経過すると、利用できなくなってしまうので、注意が必要です。

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