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1.相続登記だけではない「もう一つの登記の義務化」
令和3年4月に成立した法案によって、相続登記が義務化されたことは大きなニュースとなりました。
しかしながら、司法書士としては「もう一つの登記の義務化」も非常に大きなインパクトのあるものでした。それは、所有権の登記名義人の住所等の変更登記の義務化です。
2.不動産登記と住所・氏名
(1)住所と氏名が登記されている
不動産登記制度は、権利者などの「人」を登記する際に、「住所」「氏名」を記録しています。
たとえば、不動産の所有権をもつ「所有者」を登記する際には、所有者の住所・氏名を記録します。
売買などによって所有者が変更する場合には、現在の所有者(売主)から新たな所有者(買主)に名義を変更するのですが、「売主=現在の所有者」であることの確認に際して、登記されている住所・氏名は重要な役割を果たします。
(2)住所・氏名の変更が生じた際の取扱い
これまで、登記された住所・氏名が変更になっても、変更事項を登記に反映すべしとの義務はありませんでした。
一方で、現所有者の住所・氏名に変更があった場合、売買による名義変更(所有権移転登記)を行う前に、住所・氏名の変更登記を済ませていないと所有権移転登記申請は却下され登記できません。
多くのケースでは、所有権移転登記を行うタイミングで、住所・氏名の変更登記を行うことが一般的となっています。
3.登記の義務化!
そうした中で、令和3年4月の不動産登記法改正により、所有権の登記名義人の住所等については、その変更があった時から2年以内に変更登記を申請しなければならないこととなりました。
なお、改正法の効力発生日は、公布(令和3年4月)から5年以内の日とされる予定です。
(1)所有権登記名義人の住所等変更
変更登記の義務がかされたのは「所有権登記名義人」のみです。
住宅ローンを借りた際の「抵当権」など、「人」が登記されるケースは色々あるのですが、今回の改正では「所有権」にフォーカスして義務化がなされました。
なお、会社などの法人も所有権登記名義人となることがありますが、会社等についても登記された本店・商号に変更が生じた場合、この義務を負うことになります。
(2)いつまでに変更登記をしなければいけないのか?
登記義務のカウントは、住所等が変更となった日から始まります。
変更日から2年以内に変更登記を申請する必要があります。
(3)義務に違反すると?
義務に違反すると、5万円以下の過料を科されます。
「正当な理由がある場合」には過料とはならないのですが、現時点(令和3年6月)においては、具体的な基準は公表されていません。
(4)改正法の効力発生前に住所等の変更が生じていた場合には?
相続登記の義務化に関しても同じことが言えますが、今回の登記義務化においては、遡及適用があります。
改正法の効力発生前に所有権登記名義人の住所等の変更が生じていた場合には、効力発生日から2年以内に変更登記申請をする必要があります。
4.今後の対応について
(1)すでに住所等に変更が生じている方
今回の法改正では、改正法の効力発生前に変更が生じている方についても、義務化の対象となっています。
従って、住所等の変更が生じているけれど、まだ登記を行っていないという方は、早めに変更登記申請を行ったほうが良いと考えます。
現時点(令和3年6月時点)では改正法の効力発生日もわからない状況ですが、いずれ義務化の対象となるからです。
(2)住所等変更登記について
住所等変更登記の際には、登記されている住所等と変更後の住所等の繋がりを示す書類が必要となります。
たとえば住所を変更した場合には、現在の住民票を取得すると「前住所」の欄に登記されている住所が記載されているはずです。
この住民票が「前住所から現在の住所に移り変わったことを証明する書類」となります。
法務局にて手続相談をしながら申請を進めても良いですし、費用が掛かっても手間を省きたいのであれば司法書士に依頼すると良いでしょう。