公正証書遺言による相続登記

公正証書遺言による相続登記

2021年2月28日

1.遺言に基づく相続登記

(1)遺言があれば、相続手続きは遺言の内容にそって進める。

遺産は、相続人に承継されるのが原則ですが、遺言がある場合には、遺言の定めが優先されます。

遺言書の中で「不動産はAさんにあたえる」と記載されていれば、Aさんが相続人であろうがなかろうが、Aさんが不動産の承継者となり、Aさん名義に相続登記をすることになります(なお、Aさんが相続人でない場合には、相続ではなく「遺贈」により不動産を取得したことになります。)。

ただし、遺言に基づいて不動産名義を変更する場合には、
第1に、遺言が形式的に有効であること、を確認する必要があります。
第2に、遺言の内容を一義的に確定できるか、という点も確認する必要があります。

(2)公正証書遺言があれば相続登記の手続きはシンプル

「遺言」は、法律(民法)によって、その様式が厳格に定められています。
公正証書遺言とは、民法に定められた遺言の方式の1つです。

公正証書遺言は、公証人(元裁判官・元検察官が多い)により作成されます。
(遺言の内容は、遺言を残す人が、公証人に伝達します。これにもとづき公証人は遺言公正証書を作成するのです。)

公証人という、いわば「法律の専門家」が関与するため、自筆証書遺言と異なり、形式面においても、内容面においても、不備があるケースは稀となります。

また作成された公正証書遺言の一部は、公証役場において保管されるため、紛失の恐れがなく、さらには一定の条件を満たせば「遺言の有無を検索」することもできるのです。

2.家庭裁判所での検認手続きは不要

(1)検認手続きが不要であるため遺言執行がスムーズ

自筆証書遺言と異なり、公正証書遺言については、家庭裁判所での検認手続きは不要です。
そのため、自筆証書遺言に比べれば、スムーズに遺産承継手続きに移行できることとなります。

たとえば検認が必要ということになると、遺言者の相続人を明らかにするための戸籍一式が必要になります。
一方、公正証書遺言による相続登記を行う場合には、基本的には遺言者が死亡したことを確認するための戸籍、遺言により不動産を承継する人の現在戸籍・住民票があれば、手続きを進めることができます。

(2)金融機関等も問題なく受け入れてくれる

検認が不要である点以外にも、実務上、公正証書遺言のほうが自筆証書遺言に比べて遺言執行がスムーズに進みます

自筆証書遺言により、預貯金等の解約承継を行う場合、金融機関によっては、遺言者の相続人全員から「自筆証書遺言に基づく手続きを行うことへの同意書」と「印鑑証明書」の提出を要求されることがあります。
こうした金融機関の対応そのものに問題が無いともいえないのですが、一方、公正証書遺言において同意書・印鑑証明書の提出を求められることは、ほぼないでしょう(筆者自身は経験したことがありません。)。

(3)遺言は公正証書とするのがオススメ

そういったわけで、筆者は、遺言の作成を検討する際には、まずは公正証書で作成することをオススメしています。

3.「相続」による登記

(1)相続人全員の関与は原則不要

遺言書において、特定の相続人に対して遺産を「相続させる」と記載されている場合には、不動産を承継した相続人のみが名義変更(相続登記)手続きに関与すればよく、相続人全員が関与する必要はありません。

この点は、遺産分割協議に基づいて相続登記をする場合とは大きく異なります。

なお、遺言書に「相続させる」とは記載されていない場合でも、解釈上「相続させる」と考えられる場合もあります。この点については、司法書士や法務局に相談してください。

(2)遺産分割協議をスキップできるのが強み

遺言がない場合、亡くなった方(被相続人)の名義の不動産は、いったん相続人全員の共有となります。

具体的に「誰が不動産を承継するか」を決定し、また不動産登記に反映させるためには、相続人全員による協議と合意が必要になります。(遺産分割協議が必要)

遺言によって不動産の承継先を決めておいてあげれば、遺産分割協議が不要になるのです。

4.「遺贈」による登記

遺言書において、相続人以外の者に遺産を承継させるとしている場合には、「遺贈」による名義変更登記が必要となります。

遺贈による登記の場合には、遺産を承継する者と、相続人全員(または遺言執行者)による共同申請が必要となります。

遺言の中で遺言執行者が指定されていない場合、相続人全員の関与が必要となってくるため、相続開始後、家庭裁判所に対して遺言執行者の選任を申立て、裁判所によって選任された遺言執行者と遺産承継者で登記申請を行うケースもあります。

なお、現時点(令和3年2月)では、相続人に対する遺贈も同じように共同申請となっていますが、今後法律改正が行われ「相続」による登記と同様に単独申請となる可能性があります。