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1.遺産分割協議書の役割と記載内容
(1)遺産分割協議書の役割
遺産分割協議書は「遺産の分け方について、相続人で話し合った事項を書面にまとめたもの。」です。
遺産分割協議書は、不動産や預貯金などの相続財産について、名義を変更したり解約したりするときに利用します。
遺産分割協議書の要点は、つぎの3つです。
- 相続人同士の合意内容を正確に反映していること
- 遺産相続の手続きをスムーズに進められる内容であること
- 相続人全員の実印が押印され印鑑証明書が添えられていること
(2)相続人同士の合意内容を正確に反映していること
遺産分割協議書には、相続人全員が合意した内容を正確に反映している必要があります。
遺産分割協議書は、最終的に相続人全員が実印を押印します。
押印の際に「合意した内容と違う!」「そんなつもりではなかった!」といった、思い違いが生じないようにしましょう。
思い違いは、相続のトラブルにつながりかねません。
(3)遺産相続の手続きをスムーズに進められる内容であること
遺産分割協議書は、作成した後に法務局や銀行・証券会社などにおいて、遺産を承継する手続きに利用します。
そのため、法務局や銀行・証券会社において受付をしてもらえるような、正しい内容を記載する必要があります。
(法務局や銀行・証券会社において「この土地だ」「この口座だ」と特定できる記載方法であること)
- 相続した不動産(土地・建物)を、それぞれの登記事項証明書に記載のとおり、記載されていること。
- 相続した預貯金を、銀行名・支店名・口座番号・種別(例:普通預金、定期預金)等で特定していること。
- 相続した上場株式・投資信託を、それぞれの名称・株数・口数などで特定していること。
相続した財産の種類によって、特定の仕方が異なってくるのがポイントです。
2.遺産分割協議書に記載すべきこと
(1)はじめに【注意点・留意点】
遺産分割協議書の記載方法は、法律で決められているわけではありません。
そのため「このように記載しておけばOK」という一定の答えがないのです。
とはいえ、最低限、つぎのような事項は記載が必要でしょう。
- 亡くなった方(被相続人)の情報
- 相続人全員で話し合いをしたこと
- 遺産相続した財産とその振分け方
- 相続人の情報と署名押印(実印)
それぞれの項目については、次号以下で確認していきます。
(2)亡くなった方(被相続人)の情報
だれの遺産分割協議書が特定をするためにも、亡くなった方(被相続人)の情報は必須です。
たとえば次のような事項が必要となります。
- 最後の住所
- 氏名
- 死亡年月日
このほかにも、生年月日や「最期の本籍」を記載します。
相続登記の場面では、さらには「登記簿上の住所」を記載するケースもあります。
(3)相続人全員で話し合いをしたこと
遺産分割協議の成立には、亡くなった方(被相続人)の相続人全員の同意が必要です。
したがって「被相続人〇〇の相続人全員が協議の上、次のように被相続人の遺産を取得・承継した。」というような文章を記載し、相続人全員が合意したことを明確にしておく必要があります。
(4)遺産相続した財産とその振分け方
遺産分割協議の結果、被相続人の遺産を「誰が」「どのように」「どれくらいの割合・額」で取得したのかを記載します。
相続人同士の合意内容を明確にすること、遺産の承継手続きをスムーズに進めるためにも重要なポイントです。
(5)相続人の情報と署名押印(実印)
遺産分割協議書は、相続人全員の合意によって成立します。
「合意したこと」を証明するため、遺産分割協議書には相続人の情報(住所・氏名)と押印等をする必要があります。
この押印は、市区町村に登録した「実印」によって行い、実印であることの証明として印鑑証明書を添付します。
- 相続人全員が署名押印をする。押印は「実印」によって行う。
(署名ではなく、記名(名前を印刷する)するケースもあります。) - 海外に居住している日本人など、印鑑証明書が発行できないケースでは、署名をする。
署名について大使館・領事館発行の署名証明を受ける。
最近は、海外居住の方が相続人になるケースも増加しています。
相続人の合意を証明する方法にも、さまざまなバリエーションがあります。
3.相続財産や振分け方をどのように記載するのか?
(1)どこまで詳しく記載するのか?
相続財産や振分け方の記載には、財産ごとに、分け方ごとに、様々な記載方法があります。
以前、お客様から「別件で遺産分割協議書に押印をしたときには、不動産や預貯金の価格が記載してあったのに、今回の協議書には記載がない。間違っているのではないか?」との質問をいただいたことがありました。
さきほど記載したように、遺産分割協議書の記載方法は、法律で決められているわけではありません。
そのため、合意内容を正確に反映し、遺産承継手続きができれば、ある意味「正解」といえるのです。
質問をいただいた「価格」については、遺産承継手続きを進める観点からは、必要不可欠というわけではありません。
どちらかといえば遺産分割協議前の話合いの場面(分け方を決める場面)で必要となる情報といえます。
(2)「すべての財産を相続人〇〇が取得する」との記載
相続財産や振分け方の記載は、相続財産ごとに細かく決めていくこともできますが、つぎのように非常にシンプルな内容とすることも可能です。
「被相続人の遺産は、その全てを相続人〇〇が取得・承継する。」
具体的な相続財産の内容を記載しなくても良いケースがあるということは知っておいて損はないでしょう。
(4)「記載のない財産は相続人〇〇が取得する」との記載
また、具体的な相続財産や振分け方の記載をしたうえで、つぎのような文章を入れるケースもあります。
「本協議書に記載のない財産は相続人〇〇が取得する」
これは、あとから相続財産(とりわけ不動産)が発見されたケースで、あらためて相続人同士での話合いや実印の押印、印鑑証明書の取得を省略する意味合いがあります。
とくに不動産の相続登記手続きにおいては、印鑑証明書の有効期間が問われないため、ある意味で便利な方法となります。
ただし、この文章を悪用すると、わざと記載をしないで相続財産を取得することも可能となります。
(他の相続人が知らない銀行預金を・・・。)
したがって、上記のような文章を入れるのは、やはりケースバイケースでの判断となります。
4.遺産分割協議書の作成を専門家に相談
(1)「正しい」遺産分割協議書が重要に!
ここまでで、遺産分割協議書の作成にあたっては、相続人の合意内容や相続した財産の内容によって、さまざまなバリエーションがあることが、わかったかと思います。
遺産分割協議書の作成は、個々の相続ごとに「正しい作成方法」が異なると言えるのです。
誤った遺産分割協議書の作成は、つぎのようなトラブルを引き起こす可能性があります。
- 相続人同士の認識の違いを生じ、遺産分割協議や、協議書への押印が進まなくなってしまう!
- 苦労して作成した遺産分割協議書なのに、いざ法務局や銀行・証券会社にもっていったら「この内容では手続きできない」と言われてしまった!
そうしたトラブルは、できれば避けたいものです。
(2)沼津の司法書士貝原事務所の紹介
当事務所は、沼津市を中心に活動する司法書士事務所です。
行政書士資格を兼務する司法書士も所属しています。
不動産を含む相続だけでなく、預貯金のみの相続においても、遺産分割協議書の作成や、遺産承継手続きのサポートを行っています。
詳しくは、下記の関連記事をご参照ください。