おひとり様の老後・相続・遺言

おひとり様の老後・相続・遺言

2021年2月14日

老後問題に関するご相談、相続や遺言に関するご相談を受ける中で、「おひとり様」に関する悩みを良く伺います。
※この記事において「おひとり様」とは、お子様がおらず配偶者もいない(あるいは死別した)方を指します。

たとえば、こういったお悩みです。

  • 「身体機能が低下してきて、日常生活や財産管理ができなくなった場合には、どうすれば良いの?」
  • 「認知症等により判断能力が落ちてきて、自宅での生活が難しくなった時に、施設入所の手続きはどうすれば良いの?」
  • 「自分の相続が発生したときにそなえて、どういった準備をすれば良いの?」
  • 「誰に、自分の葬儀や埋葬のことを依頼すれば良いの?」

ご自身が「おひとり様」であるケース、あるいはご親族に「おひとり様」がいらっしゃるケースなど、それぞれのケースで必要な対応は異なります。
この記事では「おひとり様」に特徴的な課題を整理するとともに、その課題に対する対応策を確認していきます。

1.おひとり様と老後問題

(1)日常生活におけるサポートの必要性

年齢を重ねていく中で、身体能力や判断能力の低下により、日常生活あるいは重要財産の管理・処分に支障がでてくることがあります。
日用品の購入や定期的な入出金の管理といった、ごく簡単な事柄についても、身体能力が少し低下した途端に、非常に負担になるというのは頻繁に耳にする話です。

(2)住まいを変える必要性 ~自宅売却や施設入所~

また、身体機能の変化によって、今の住まいから転居が必要となるケースもあります。
郊外の家から交通アクセスの良い場所に住替えをしたり、ご自宅から有料老人ホーム等へ転居したりといった場面です。
こういった場面では、不動産売却のみならず、不動産仲介業者との調整や売却後の税務申告など、財産上重要なイベントに複数・連続して対応していく必要があります。

(3)やはり心配な「認知症」対策の必要性

認知症等による判断能力の低下も懸念事項となります。
判断能力が低下した場合には、日常的な金銭管理のほか、老人ホーム等への入所契約(入所施設の選定も含みます。)、これにともなう自宅不動産の処分など、ご本人にとって影響の大きい判断を「ご本人に代わって」行っていく必要があります。

(4)利用可能な法制度を確認していく(成年後見・死後事務・遺言)

おひとり様の場合には、こうした「一人では解決できない課題」が生じるときへの備え(ある種の「終活」!)が不可欠といえるのではないでしょうか。
その備えとして利用を検討すべき、いくつかの法制度を、次項以下でご紹介します。

2.おひとり様と成年後見制度

認知症等を原因とする判断能力の低下に対しては、成年後見制度の活用が有効的です。
成年後見制度は、大きく2つの種類「法定後見」「任意後見」に分けることができますが、認知症への備えとしては、任意後見がより効果的です。

任意後見においては、サポーター(任意後見受任者といいます。)とサポート範囲(サポーターの権限)について、自ら契約で決定することとなります。判断能力の低下が生じていない状態で契約を行い、将来の能力低下に備えるのです。

詳しくは、次の記事をご参照ください。

【参照記事:おひとり様と成年後見】

【参照記事:任意後見契約について】

3.おひとり様と相続

おひとり様の相続においては、多くの場合、相続人となるのはご自身の兄弟姉妹(すでに死亡している人がいる場合にはその子。すなわち姪や甥。)となるでしょう。

相続人がいなければ、相続人不存在となり、最終的には国に承継されることとなります。
相続人がいない場合には、相続財産管理人を選任して、その管理人が清算作業を行い、最終的には国に遺産を引き渡します。
「国に遺産が引き継がれる」ということを、どう評価するかは個々人の判断によるところですが、国以外の誰かに遺産を引き継いでほしいという場合には遺言作成等の対応が必要になります。

また、遺産を受け取る側の相続人からしても、日頃の交流がない場合には、財産関係を把握してるわけではないので遺産承継手続きが負担となりがちです。
弊所でも、甥・姪にあたる方からの遺産承継業務の依頼が、増加傾向にあります。

自身の財産が、誰に承継されることになるのか、また、遺産を承継するのにどどういった手続きが必要になるかという点は、一度、専門家に相談しておいた方が良いでしょう。どのように手続きが進んでいくのかを把握することで、どう言った準備をするべきかが見えてくると思います。

つぎの参照記事では、おひとり様の相続関係の確認から初めて、相続準備のステップを順に確認しています。【参照記事:おひとり様と相続準備(遺言・終活)】

4.おひとり様と葬儀

おひとり様にとっては、自身の葬儀や埋葬手続きを行う人をどうするかは切実な問題です。

親族の中に、葬儀・埋葬手続きを主体的に行なってくれる人がいればよいのですが、費用をどのように負担するか見当が必要になりますし、多くの人にとっては経験したことのない手続きですので日ごろ交流のある親族にとっても心理的な負担を感じるケースが少なくありません。

また、葬儀・埋葬の方式や進め方についてご本人の希望がある場合には、その希望をどのように伝達すればよいのか困惑してしまうこともあるのではないでしょうか。

こういった課題に対応するのが、死後事務委任契約です。
死後事務委任契約とは、葬儀や埋葬等の手続きを、生前に第三者に委託する契約です。
委託先は、親族を含めて誰でも良いのですが、最近では司法書士や弁護士などの法律専門職が受託するケースが増えていると言われています。

「葬儀はどういった形式で行うのか。」「埋葬は、どこに、どのような方法で行うのか」など細かな事柄を事前に打ち合わせ、死後事務委任契約に落とし込む事によって、ご本人の希望に沿った葬儀・埋葬を実現することができます。

【参照記事:終活としての「死後事務委任契約」】

5.おひとり様と遺言

先ほど「おひとり様と相続」という項目で紹介したように、おひとり様の相続においては、相続人が遠縁の甥・姪になったり、あるいはそもそも相続人がいないというケースが生じえます。

しかしながら、「誰に承継させるか」「どのように承継させるのか」といった事柄は、遺言書を残すことによって、法律の規定を上書きすることができるのです。

たとえば、親族とは疎遠であったものの、死別した配偶者方の甥・姪(※法律上は相続人とはなりません。)に世話をしておらっており、そういった方に遺産を承継させたいといった希望がある場合には、遺言を書くことによって簡単に遺産承継させることができます。
また、相続人はいなけれど、福祉団体・公益団体に遺産を寄付したいという場合にも、遺言を残すことによって寄付が可能となります。

おひとり様にとって遺言は非常に有効なツールです。

ただし、遺言の作成にあたっては、方式の選択、遺言内容の検討、遺言執行者の選定など、検討すべき事項がいくつもあります。
検討事項の漏れによって、遺言執行の際にトラブルになったり、最悪のケースでは遺言が無効になってしまうということもあります。
作成に際しては、是非とも、司法書士をはじめとした法律専門職を活用していきましょう。

【参照記事:おひとり様と遺言】