遺贈(遺言)による配偶者居住権の設定

遺贈(遺言)による配偶者居住権の設定

2021年6月16日

1.配偶者居住権とは

配偶者居住権とは、亡くなられた方(被相続人)の配偶者が、被相続人の所有していた居住建物に居住していた場合に、相続開始後も無償でその建物に居住できるという権利です。
権利の内容については、次の参照記事をご覧ください。

【参照記事:配偶者居住権について】

2.遺言による配偶者居住権の設定

(1)配偶者居住権の取得方法

配偶者が配偶者居住権を取得するためには、つぎのような方法があります。

  • 遺産分割協議による方法
  • 家庭裁判所の審判による方法
  • 遺贈又は死因贈与による方法

このうち「遺贈」による方法は、被相続人が配偶者のために遺言書を作成し、そのなかで配偶者居住権を取得させるものです。

(2)遺言書によることのメリット

遺産分割協議による場合、他の相続人の合意が必要となるため、必ずしも配偶者が配偶者居住権を取得できるとは限りません。

残された配偶者に配偶者居住権を取得させたいのならば、遺言にその旨記載することで確実に取得させることができるのです。

3.配偶者居住権と遺言の記載について

(1)「相続させる」ではなくて「遺贈する」

遺言によって配偶者居住権を取得させる場合には、その記載方法に注意する必要があります。

たとえば、相続人に対して不動産を承継させたい場合には「妻Aに○○の土地建物を相続させる」と記載します。
一方で、配偶者居住権の場合には、「妻Aに○○の建物について、配偶者居住権を遺贈する」と記載します。

(2)建物の所有権についても検討が必要

配偶者居住権とは、ある建物に居住する権利を与えるものであり、建物の所有権とは異なるものです。

配偶者居住権は、配偶者だけに与えられる特別な権利であり、配偶者が死亡した際には消滅します。
一方、建物の所有権は、所有者が死亡した際には、所有者の相続財産として承継されていくことになります。

「配偶者居住権について遺言書に書いて終わり」とするのではなく、建物の所有権を誰に承継させるかという点も重要です。

(3)具体的な遺言文例

配偶者居住権を含めた遺言文例は、つぎのとおりです。なお、関係者や不動産の表示については、文例紹介なので簡略的に記載しています。

第1条 遺言者は、遺言者の自宅土地・建物を、遺言者の長男Aに相続させる。
第2条 遺言者は、遺言者の自宅建物について、遺言者の妻Bに配偶者居住権を遺贈する。

上記の文例では、つぎの2つのポイントに注意を払っています。

  • 土地・建物の所有権を誰が相続するのか明確にすること。
  • 妻Bに対して配偶者居住権を確実に取得させること。
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