相続パターンごとの「相続手続きに必要な戸籍」について

相続パターンごとの「相続手続きに必要な戸籍」について

2021年4月30日

相続登記や預貯金の解約など、遺産を承継する手続きにおいては「相続人が誰であるか」を確認するため、「相続関係を確認できる戸籍一式」の提出を求められます。

どういった戸籍が必要となるのか、相続のパターンごとにご説明します。

1.相続人の範囲は法律で決まっている

「誰が相続人となるか」は法律で定められています。ただし、法律には「配偶者」「子」「兄弟姉妹」といった抽象的な形で記載されています。

具体的な相続手続きにおいては、「誰が相続人になるのか」ということは亡くなられた方(被相続人)の戸籍を確認していくことで特定します。

なお、戸籍による特定は、突き詰めると非常に複雑で、認知・養子縁組・代襲相続など、いくらでも場合を分けることができます。
そのため、今回の記事では、特に言及する場合を除いて、これらの特殊事情は検討外としていますので、ご留意ください(その意味でも、個別事案については、司法書士をはじめとした法律専門職への相談をご検討ください。)。

2.子(及び配偶者)が相続人となるケース

子がいる場合には、つぎの戸籍が必要となります。

  1. 被相続人の出生から死亡までの戸籍
  2. 子の現在の戸籍

被相続人に子がいるかいないかは、その方が生まれてから亡くなるまでの戸籍をチェックすることで確認できます。
子が婚姻等している場合には、被相続人の戸籍から、外に出ている形になっているので、子自身の戸籍が必要となります。

なお、相続人となる配偶者は、被相続人が死亡した時点の戸籍で確認することができます。

3.子がおらず直系尊属である父母(及び配偶者)が相続人となるケース

直系尊属が相続人となる場合には、つぎの戸籍が必要となります。

  1. 被相続人の出生から死亡までの戸籍(これにより子がいないことを確認)
  2. 被相続人の父母の現在の戸籍

なお、相続人となる配偶者は、被相続人が死亡した時点の戸籍で確認することができます。

4.兄弟姉妹(及び配偶者)が相続人となるケース

兄弟姉妹が相続人となる場合には、つぎの戸籍が必要となります。

  1. 被相続人の出生から死亡までの戸籍(これにより子がいないことを確認)
  2. 被相続人の父母それぞれの出生から死亡までの戸籍
    (これにより父母それぞれの子の存在を確認)
    (場合によっては、祖父母の死亡が確認できる戸籍)
  3. 兄弟姉妹の現在の戸籍

なお、相続人となる配偶者は、被相続人が死亡した時点の戸籍で確認することができます。

兄弟姉妹が相続人となるケースは、集めるべき戸籍が非常に多くなります
戸籍の読み間違いで、相続人となる人を漏らしてしまうケースもあるので、注意が必要です。

5.子や兄弟姉妹がおらず、配偶者のみが相続人となるケース。

  1. 被相続人の出生から死亡までの戸籍(これにより子がいないことを確認)
  2. 被相続人の父母それぞれの出生から死亡までの戸籍
    (これにより兄弟姉妹がいないことを確認。)
    (場合によっては、祖父母の死亡が確認できる戸籍)

相続人となる配偶者は、被相続人が死亡した時点の戸籍で確認することができます。
第1順位の「子」がいないことだけでなく、第2順位・第3順位の相続人がいないことを確認するために「2」の戸籍が必要となってきます。

6.「法定相続情報証明制度」のススメ

以上のとおり、パターンごとに必要となる戸籍は異なります。
そして、パターンによっては、必要となる戸籍が数十通になるケースもあるのです。

不動産や預貯金の遺産承継手続きを行う際に、これらの戸籍を1回1回、それぞれの窓口に提出する必要があります。
そして戸籍を受け取った法務局や銀行が、時間をかけて「戸籍がそろているのか」「誰が相続人であるか」を確認するのです。手続きを行う相続人にとっても、戸籍をチェックする銀行等にとっても、非常に時間と手間のかかる作業になるのです。

そうした、相続人の手間と遺産承継手続きの時間短縮に役立つのが「法定相続情報証明制度」です。

法定相続情報証明制度は、所定の手続きをふむことで、法務局が公的に正確性を保証した「法定相続情報一覧図の写し」を発行してくれるものです。
一度「法定相続情報一覧図の写し」の発効を受ければ、これが戸籍一式の代わりとなります。相続手続きを行う相続人にとっても、法務局や銀行などにおいても戸籍チェックの手間が省けるというわけです。

詳細は別記事にまとめましたので、ぜひ活用を検討してみてください。

【参照記事:法定相続情報証明制度について】