農地法の許可について

農地法の許可について

2021年5月29日

1.農地法による制限

「農地は限られた資源であり、適正に維持・管理・利用しなければならない」との考え方のもと、農地法という法律によって農地の利用については法律上の制限が課せられています。

いくつかある制限のうち、代表的な「3つの許可」についてご紹介します。

2.3条許可

(1)農地について権利移動が発生する場合

3条許可は「農地の権利移動に際して農業委員会の許可が必要」というものです。

たとえば、現在農地を所有し耕作している人が、隣地の農地所有者に農地を売却する場合に3条許可が必要となります。
3条許可でいうところの「権利移動」とは、売買などの所有権移転をともなうものだけでなく、賃貸借など使用収益権のみの移転も含む概念です。

(2)3条許可の要件

3条許可に際しては、つぎの4条件を満たすことが審査されます。

  1. 耕作する農地の全部を効率的に利用すること
  2. 権利を取得する者またはその世帯員等が、農作業に常時(原則、年間150日以上。)従事すること。
  3. 下限面積以上の農地を経営すること
  4. 周辺農地の利用と調和すること

この条件を見ると、取得者や取得する農地だけでなく、農作業に従事する世帯員や既に所有する農地、さらには周辺農地の利用状況も許可の判断材料となっていることがわかります。

3.4条許可

(1)農地を転用する場合

4条許可は「農地の転用に際して許可が必要」というものです。市町の農業委員会経由で県知事に提出します。
たとえば、農地を所有している人が、農地を駐車場にかえる場合に4条許可が必要となります。

(2)4条許可の要件

4条許可に際しては、「立地基準」「一般基準」という2つの基準があります。このうち「立地基準」については、農地の種類によって定められているものです。
農地の種類については、別記事にまとめていますのでご参照ください。
「一般基準」のうち代表的なものは以下のとおりです。

  1. 転用目的どおりに確実に土地が使用されると認められること。
  2. 周辺農地の農地経営に影響(土砂の流出や排水など)を与えるおそれがないこと。
  3. 一時的に農地を農地以外に利用する場合には、利用後に確実に農地に復元すること。

(3)「転用目的どおりに確実に土地が使用される」という条件について

このうち上記(2)1「転用目的どおりに・・」という条件については、主として次の要素に分解されます。大前提として、実現可能な計画であることと、

  1. 転用するために必要な資力等があるか。
  2. 許可後、速やかに転用目的に供することが確実であるか。
  3. 転用目的について、他法令の許認可の見込みはあるか。
  4. 計画している面積が転用目的に対して妥当であるか。

【参照記事:農地法における農地の種類と許可方針について】

4.5条許可

5条許可は「農地の転用及び権利移動に際して許可が必要」というのものです。
たとえば、宅地とする目的で、農地所有者が第三者に農地を売却するケースが該当します。許可の条件としては、基本的には4条許可と同じように考えていきます。

5.届出

(1)市街化区域内の農地について

なお、4条と5条については、許可ではなく届出で足りるケースがあります。代表例が、該当する農地が市街化区域内にある場合です。

(2)相続による農地の取得

相続(相続人以外の者が特定遺贈によって取得した場合を除く)により農地を取得した場合、これもある種の権利移動に該当しますが、3条許可は不要とされています。

これは相続(農地所有者の死亡)という、当事者の意思によらない権利移動であるからです。

そのかわり、農地法においては、相続により農地を取得した者に対して農業委員会への届出を義務付けています。相続により農地を取得したことを知った日から10カ月以内に届け出る必要があり、これを怠ると過料(行政罰としての罰金)が課される可能性があります。

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