相続登記の義務化と「とりあえず共有」

相続登記の義務化と「とりあえず共有」

1.相続登記の義務化

令和3年4月に民法・不動産登記法等の改正法案が成立し、「相続登記の義務化」がなされることとなりました。3年以内に「相続登記の義務化」=「相続登記を怠ると罰則をかされる」ということになります。

「相続登記の義務を果たした」と言えるのは、つぎの3つの場合です。

  • 相続発生後、法定相続登記または遺産分割協議等に基づく相続登記を行った。
  • 法定相続登記のあと遺産分割協議を行った場合には、さらに遺産分割協議に基づく相続登記を行った。
  • 相続申告制度に基づく申出を法務局に対して行った。

2.法定相続登記や相続申告制度について

(1)相続申告制度に基づく申出をすればOK?

このうち、3つめの「相続申告制度に基づく申出」とは、とりあえず相続開始の事実と自身が相続人であることを申出あることで、義務違反による罰則を回避するものです。
相続登記よりも簡単にできるので「これをやっとけば全て解決!」と勘違いされる方も多いのですが、この申出には「相続登記」と異なり権利変動を公示する機能はありません。

後日、不動産を売却するなどの手続きが必要になった場合には、あらためて相続登記を行わなければならないため「どうしても期限内に相続登記ができない」といった限定的なシーンで利用されるにとどまるのではないかと推測しています(令和3年6月時点)。

(2)「とりあえず共有での相続登記」

もう一つ、法定相続登記も、相続人の1名から登記が可能です。これは法律上の相続人全員につき、相続分割合に基づいてとりあえず登記をするものです。相続人の1名からも申請することができるので、遺産分割協議が整う前でも登記することができます。
なお、遺産分割協議の結果、法定相続登記とは違う割合で遺産承継をした場合には、その内容に変更する登記を申請することになります。

現在の実務では、法定相続登記が行われるケースは限定的で、多くの場合には遺産分割協議の結果に基づいて、最終的な遺産承継者に直接相続登記をするケースが大半です。

しかしながら、相続登記の義務化によって、早期に相続登記をなすべき必要が出てきて、それに対応するため「法定相続登記」を行うケースが増えてくるのではないかと懸念していきます。そして、そのまま遺産分割協議を行うことなく、共有のままで時間だけが経過したり、あるいは相続人間で「法定相続割合で分割する」との遺産分割協議が成立することになるかもしれません。

(3)「とりあえず共有」を推奨しない理由

司法書士の多くは不動産を「とりあえず共有」することを推奨しないと思います。それは、共有によるトラブルを数多く目にしてきたからです。

  • とりあえず法定相続分で共有の登記をした。その後、遺産分割協議を行うことなく放置していたら、共有者間でさらに相続が発生した。そのため今から単独名義にするためには、数十名が相続人として手続きに関与してくることになってしまった。
  • 不動産を売却したいけれど、共有者間の歩調が整わず売却できない。結果として、不動産を塩漬けにせざるを得ない。

いずれも、事の発端は「相続時にとりあえず共有にした」ということが少なくないのです。

3.「とりあえず共有」を避けるために

(1)遺産分割協議の実施

とはいえ、遺産分割協議を円滑に実施できないケースは当然想定されます。
相続人同士で遺産承継について意見の食い違いがある場合はもちろん、認知症や行方不明などの原因によって協議そのものができない場合も考えられます。
また、遺産分割協議がまとまったとしても、その結果を遺産分割協議書にまとめ、かつ相続人各人の印鑑証明書を揃えるという手間もあります。

(2)遺言の用意

こうした遺産分割協議の手間を省略するためには、遺言を用意しておくことが効果的です。遺言の中で、正しく遺産の承継方法を定めてあげれば、遺産分割協議を省略して相続登記をすることが可能となります。
もちろん、遺言は相続開始前に、不動産所有者が準備する必要があります。手間も、場合によっては費用も掛かりますが、それでも事案によっては遺産分割協議を省略する大きなメリットを得ることができるでしょう。

4.是非とも司法書士の活用

相続登記の義務化によって、相続登記を所定の期間内に完了させることが求められます。
相続発生後、遺産承継手続き全体を俯瞰しながら、相続登記をスムーズに進める必要が生じてきたのです。
また、相続発生後にスムーズに手続きを進められないことが予想されるのであれば、相続発生前において、将来の相続登記を見越して遺言等の準備を行うべきケースもあるでしょう。
これらのケースにおいては、相続登記の専門家である司法書士を、是非ご活用いただければと思います。