終活としての「財産管理契約」

終活としての「財産管理契約」

2021年7月3日

1.主に財産管理について

「終活」の定義は様々で、一般的には「人生の終わりに向けた活動」とされます。
具体的には、相続・遺言・葬儀などの準備、身の回りの物品や思い出の整理、自分史や活動記録のまとめ、終末期における医療・介護の意思表示などがあります。

この記事では、司法書士が、主として財産管理面に関する終活に関して、とりわけ「財産管理契約」についてご紹介したいと思います。

2.財産管理契約の内容

(1)財産管理契約とは

財産管理契約とは、ご本人の判断能力に問題がない状況において、預貯金の入出金や記帳、小口現金による生活費の支払いなどを、ご本人の委託を受けて第三者が代理して行うものです。

判断能力は十分にあって後見制度によるサポート対象にはならないけれど、身体能力の低下等の原因により、財産管理面の負担を第三者に肩代わりしてほしいというニーズに対応します。

(2)財産管理契約の締結の要否

現状では、「財産管理契約」単体での利用は多くありません。任意後見契約との組合せで活用されていることが多いです。
単体で利用されるケースも理論上は考えられるのですが、親族や介護関係者が事実上代行しているケースが多いのでしょう。

頼れる親族がいないケースでは、もっと活用されて良い契約だと思いますが、実際のところは介護関係者が丸抱えして代行していることが非常に多いです。
「介護関係者が丸抱え」のケースにおいては、非常に親身に丁寧に対応してくれる介護関係者がいる一方で、適切といえない金銭管理・支出が行われている場面も散見されます。

なお、「財産管理契約」類似の制度として各市町の社会福祉協議会・地域包括支援センターの提供する「日常生活自立支援事業」があります。
ただし同事業の対象は、認知症高齢者・知的障害者・精神障害者等であって、日常生活を営むのに必要なサービスを利用するための情報の入手・理解・判断・意思表示を本人のみでは適切に行うことが困難な方に限定されています。

3.どういった方に効果的か

(1)典型例(身体能力の低下)

モデルケース

沼津市に在住のAさん。単身で生活しており、親族との交流もほとんどありません。

先月、自宅で転倒し、大腿骨を骨折してしまいました。1カ月ほど入院したのですが、退院後も車いすでの生活となってしまいました。

自宅に戻ったものの、入院費用の清算、介護ヘルパーの費用支払いなど、今までは自分でやっていたことが急に難しくなってしまいました。

(2)利用上の注意

Aさんのケースでは、財産管理契約によって、月々の収支管理について第三者の助けを借りる方法が有効と思われます。

ただし、後見制度のように、第三者(裁判所や後見監督人)によるチェックが効かない点には注意が必要です。
従って、預貯金の引き出し権限を与える場合にあっても、特定の口座に限定したり、残高が一定額以上にならないようにするなどの対応は、誰に財産管理を委任するにせよ必要となります。

4.専門家への相談を

(1)親族関係の変化

昨今、司法書士の業務の中でも「終活」に関係する仕事が増加してきています。
その背景には、「終活」が必要である人が増加しているということが考えられます。

昔であれば、子供なり親族なりが対応してきていた介護・相続・葬儀などの各場面において、単身世帯(おひとり様)の割合が増加したことで、これらの事柄を自らの力で解決することに迫られているのです。その際に、終活にかかわる法的制度を扱う司法書士は、皆様の助けになるでしょう。

(2)様々な制度を組み合わせる必要性

また、終活に関する法律的な制度は、いくつもの種類があります。
そして、この制度を利用すればOKというわけではなく、利用する方の実情に合わせて、各制度を組み合わせていくことが求められます。

「財産管理契約」を必要とする状況にあれば、財産管理契約に加えて「後見制度」や「遺言」が求められる状況にあることが多いです。もちろん、必要性の度合いは具体的な事案によって様々ですが、各種制度の利用を検討すらしないことは問題です。

こうした「選択」や「組み合わせ」は、たとえネットや書籍で勉強しても難しい事柄だと思います。各種法制度の内容を理解し、かつ実務的な使われ方を知っている専門家と一緒に取り組んでいくのが効率が良いでしょう。

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