終末期医療に関する意思表示

終末期医療に関する意思表示

相続・遺言

1.終末期医療

近年の医療の発達は目覚ましく、いままでは大きな手術を行っても助からなかった病気が投薬だけで治療できるようになったり、手術後は数週間入院しなければいけなかったものが数日で退院できるようになったりと、私たちは大きな恩恵を受けています。

一方で、延命治療に関する医療技術の発達により、植物状態になっても長年生きている(生かす)ことが可能となり、果たして単に延命を図る目的だけの治療が、本人のためになっているのかという問題提起もなされています。
そこで終末期医療の現場において、治療が望めない患者に対して、本人または親族の意思に基づいて、延命医療を中止し人間らしい死(尊厳死)を迎えるためのケアをおこなうという試みがなされています。

2.尊厳死とは

尊厳死とは「回復の見込みのない終末期の患者に対して、生命維持治療を差し控え又は中止し、人間としての尊厳を保たせつつ、死を迎えさせること。」を指します。

ただし、現状(令和3年2月時点)においては、個人に尊厳死を選択する権利があるわけではありません。本人の意思をベースとして、あくまで医師が医学的判断によって、延命治療の中止と緩和ケアをおこなうこととなっています。

3.終末期医療に関する意思表示(尊厳死宣言公正証書等による対応)

(1)意思表明できない状態になったら?

認知症による判断能力の低下、あるいは何かしらの病気・障害により意識不明となった時に、自分自身では終末期医療の意思表示ができないケースが考えられます。
家族や親族が、本人にかわって意思表示をすることができればよいのですが、そういった親族等がいない場合には、治療方針を決定する医師としても保守的に延命治療を継続せざるを得ません。
弊所でも、成年後見人に就任する事案においては、後見人就任時点において、ご本人の意思表出が難しい状況にあるケースが多く、そうした場合には、本人ではなく親族に判断を仰ぐほかありません。しかしながら、市長申立て等により親族等がいない(あるいは連絡がとれない)事案においては、尊厳死にかかわる意思決定ができない状態となってしまいます。

(2)尊厳死宣言公正証書等による意思表示

そういった状態にならないために、また親族等がいる方においても適切にご自身の意思を伝えられるように、終末期医療に関する意思表示を書面化しておくことが重要です。
とりわけ「尊厳死宣言公正証書」といって、尊厳死に関する意思を公証役場において公正証書とする方法があります。公正証書であれば、尊厳死に関する意思が間違いなく本人にあったことが推定されることから、医師においても、これを尊重して医療方針を決定することができるといわれています。

とりわけ「おひとり様」にとっては、任意後見契約・民事信託・死後事務委任等の各種契約とならんで、人生の終盤に備えるものといえるでしょう。