【事例で考える】子供のいない夫婦の終活(遺言・後見)

【事例で考える】子供のいない夫婦の終活(遺言・後見)

2021年1月31日
守秘義務および個人情報保護の観点から、実際の事案を変更・編集して記載しています。

子供のいない夫婦の終活

ご相談者はAさん(夫)・Bさん(妻)夫婦。
ご夫婦には子供がおらず、最近「終活」に関する話を聞いて、自分たちについても相談したいということで来所されました。

1.「もし相続が発生したら」を考える

(1)相続の順番によって、相続関係は大きく変化

子のない夫婦の場合には、お互いの相続が発生する順番を考慮しつつ、パターンをわけて検討する必要があります。

(2)Aさんが先に亡くなったとき(Bさん方の親族が関係してくる)

Aさんが死亡した際には、まず配偶者であるBさんが相続人となります。

子供がおらず、また父母・祖父母は死亡しているため、Aさんの兄弟姉妹が相続人となります。Aさんは3人兄弟の長男で、既に亡くなっている弟が1人います。

ヒアリングの結果、弟のCさんと、亡くなった兄弟の子供であるD・Eさんが相続人となることがわかりました。既に亡くなっている兄弟姉妹がいる場合、その子が代襲して相続人となる点がポイントです。

結論としては、Bさん含め、相続人は4人でした。

(3)Bさんが先に亡くなったとき (Aさん方の親族が関係してくる)

Bさんが死亡した際には、まず配偶者であるAさんが相続人となります。

Bさんについても、子供がおらず、父母・祖父母が死亡していたので、兄弟姉妹が相続人となります。
しかしながら、Bさんには兄弟姉妹がいませんでした。

結論として、相続人はAさん1人でした。

2.子供のいない夫婦においては「遺言」が有効

(1)Aさん相続について

上記のとおり、Aさんの相続が先に発生したケースでは、残された配偶者Bさんは、他の3名の相続人と遺産分割協議をしなければならないことが判明しました。

幸い、いずれの相続人も近所に住んでおり、また交流もあるといううことでしたが、将来どのような事情が発生するかわかりません(例:弟さんが認知症等になり遺産分割に参加できなくなってしまう等)。

Aさんとしても、全財産をBさんに承継させる意思があったので、それならば遺言を作成しようという結論になりました。

(2)Bさん相続について

「Bさん→Aさん」の順番で相続が発生した場合には、遺言がなくともAさんが単独承継するため、一見、遺言は不要であるようにも思われます。

しかしながら、「Aさん→Bさん」の順番で相続が発生した場合、Bさんには相続人がいないため、相続人不存在となります。そのため、最終的にはBさんの財産は国のものとなります。
遺言を作成することで、Bさん方の親族に遺贈することもできますし、福祉団体・公益団体に寄付をすることもできます。

「それならば、Bさん方の甥っ子や姪っ子にあげたい。」ということだったので、Bさんについても遺言作成を検討することになりました。

【参照記事:遺言の「ある・なし」と相続(兄弟姉妹が相続人)【比較事例】】

3.認知症等への対応(老後の財産管理の問題)

(1)介護が必要になった時を想定する

ご夫婦にお子様がおらず、主体的に介護をおこなう人が互いの配偶者しかいません。
ご夫婦の一方が、たとえば認知症等になった場合には、もう一方の配偶者が身の回りの世話のみならず金銭管理もする必要があります。

認知症等への対応策の1つとして、成年後見制度があげられます。
成年後見制度は、判断能力が低下した場合に、その方の財産管理や生活環境の整備をサポートする人を選任する制度です。サポーター(後見人)は、ご本人を代理して金銭管理や介護サービス契約をおこない、ご本人の財産や生活を保護します。

(2)後見制度をどのように利用するか(利用しないのか)

成年後見制度には、おおきく2つにわけて「任意後見」と「法定後見」があります。
両者には様々な違いがありますが、大きな相違点として、「任意後見」は事前に契約してサポーターとサポート内容を自分で選びます。一方で法定後見は、サポーターもサポート内容も家庭裁判所が決定します。

【参照記事:任意後見と法定後見について】

現状、AさんもBさんも判断能力の低下は全くありませんので、任意後見契約を締結して、自らサポーターやサポート内容を選択することができます。
あるいは、判断能力が低下したときに、法定後見の利用を本人や配偶者(あるいは4親等以内の親族)が家庭裁判所に申立てるということもできます。

今の段階では、制度の理解を深めるにとどめ、時機を見て具体的な検討をしたいということになりました。

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