事例で考える「叔父・叔母(おじ・おば)の介護」と成年後見

事例で考える「叔父・叔母(おじ・おば)の介護」と成年後見

2021年1月24日
守秘義務および個人情報保護の観点から、実際の事案を変更・編集して記載しています。

甥や姪が叔父・叔母の生活援助(介護)をしているケースで後見申立て

依頼者はAさん。(沼津市在住)
Aさんは高齢の叔母Bさんの生活援助(通院の付き添いや介護ヘルパーとの橋渡しなど生活介助全般にわたる援助)をしていました。

Bさんには、ご主人Cさんと、子どもDさんがいたのですが、いずれも先に亡くなっています。現在は、ご自宅で一人暮らしをしています。

以前は、Bさんの兄Cさん(Aさんの父)と妻Dさん(Aさんの母)が、定期的にBさん宅に行くなどして見守りを行ってきましたが、CさんDさん共に高齢となり、最近ではその役割をAさんが引き継いで行っていました。

これまでの生活援助も相当の負担だったのですが、最近、Bさんが認知症を発症してしまいました。
徐々に一人暮らしが困難となり、現在は入所する老人ホームを探しています。

1.ご依頼に至る経緯(施設費用に充てるための自宅売却)

老人ホームの選定を行なっている中で、施設の人から後見制度の紹介を受けて、弊所にご相談にいらっしゃいました。
実は、Bさんだけでなく、母親のDさんについても介護の問題が出てきており、Aさんにとっては、二人分の介護が相当な負担になっている状況でした。

くわえてBさんについては、施設入所料の捻出のため自宅の売却等も必要となっており、そうした財産管理上の課題解決は体力的のも精神的にも限界であったと思われます。

2.後見制度利用の適否

入所契約、入所後の施設利用料の支払い、Bさん自宅の売却などの課題解決のために成年後見制度を利用するということは大筋で決定することができました。

自宅売却が必要となる事案であったため、現状のBさんの状態を考慮すると、後見人選任申立てを回避する手段は選択しえなかったように思います。

親族が関与し、不動産処分や定期預金の解約などがないケースでは、成年後見制度を利用しないという選択をされる方もいらっしゃいます。制度利用による負担等を考慮して、ご本人も含めた親族間での話合いが必要となります。

3.後見人候補者について

現状、主たる援助者となっているBさんは、親の介護負担等でBさんの成年後見人となることはかなり難しい状況でした。

そのため、当事務所の司法書士に成年後見人候補者となってくれないかとの依頼がありました。
受託の判断については、受託可能件数に至っていないこと、親族とご本人双方に対して公正を保ち得る状況であることを要件としています。具体的には、事案ごとの判断となります。

今回は、当事務所の司法書士が受託可能な状況であったため、後見人候補者となることを承諾いたしました。なお、最終的な選任は、当然ながら家庭裁判所の決定によります。
本件においては、申立て内容通り、当事務所の司法書士が後見人に選任されました。

4.後見人就任後

(1)Bさんの入所契約締結

後見人就任後、ご本人が入所希望されていた老人ホームと後見人との間で入所契約を締結しました。契約にあたっては、後見人自身も施設見学を行い、施設の状況を自身の目でも判断します。

また、入所に合わせて、具体的なサービス内容(洗濯、入浴、日用品の購入など)を決定します。ご本人の希望を確認したうえで、施設担当者とご本人の生活能力を考慮して決定します。

入所契約締結後も、定期的にご本人を訪問し、適切に介護サービスが提供されているか、ご本人の身体状況に変化がないか確認します。必要があれば施設担当者と打ち合わせを行い、サービス内容を定期的に見直していくことになります(さらに必要があれば、施設の変更も検討します。)。

(2)Bさんの自宅売却

施設利用料を捻出するため、Bさんの自宅売却を行う必要がありました。Bさんが生活していた自宅となるため、売却手続きに際しては家庭裁判所の許可が必要となります。

家庭裁判所の許可の要否に関わらず、不動産の売却においては、適正価格・適正条件での売却が求められるため、慎重に売却手続きを進めていきます。

また、売却に当たっては、自宅内にある物品の整理をする必要がありますが、それらの業者選定も後見人が行っていくことになります。事案によっては、仏具の撤去にあたって寺院との調整、建物解体にあたって解体業者の選定、など様々な作業を行うことになります(そのため、後見業務を通して、司法書士として様々な経験を積むことができます。遺産承継業務や終活関連業務に非常に役立ちます。)。

(3)親族との関わり

当初、第三者(親族以外の専門家)に後見人を依頼することに、Aさんは非常に抵抗感があったようです。「見放すのではないかと罪悪感を抱いた。」という言葉は強く印象に残っています。

しかしながら、後見人を選任したからといって親族とご本人の交流が途絶えるわけではありません。定期的にお会いしていただくのも全くの自由です。
本件においても、就任後においては「後見人が財産管理や生活環境の整備を行ってくれる分、以前よりも心の余裕を持ってBさんと接することができる。」とのことで、満足のいく選択になったのではないかと思っています。「後見人の選任」は「見放すこと」と同義ではありません。

後見に関する相談を受けていると、精神的・身体的にもかなりの負担を負いながら、親族の介護(生活援助)を行なっている事例をよく目にします。
成年後見人の選任が全てを解決するわけではありませんが、上述のように、後見人を選任することで軽減できる部分もあります。メリット・デメリットを考慮しながら、後見制度を利用するかどうかの判断をすべきでしょう。

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