成年後見人等を選任するための手続きについて

成年後見人等を選任するための手続きについて

2021年1月11日

成年後見人等の選任を求める場合には、管轄の家庭裁判所に申立てを行う必要があります。申立てに際しては、所定の書類を用意しなければなりません。
また、後見人候補者を申立書に記載することができますが、望みどおりに候補者が選定されるかは、裁判所の裁量にかかっています。申立て前に、どういったところを裁判所がチェックしているのか、把握しておく必要があります。
以下では、「後見人」とは法定後見(後見・保佐・補助)における支援者を、「本人」とは後見人によって法的なサポートを受ける人を指します。

1.申立てから選任までの流れ

  1. 申立て準備:必要書類等を集めます。候補者の検討を行います。
  2. 申立て  :管轄の家庭裁判所に、申立書及び付属書類を提出します。
  3. 調査   :家庭裁判所による調査が行われます。ご本人等への調査が行われることもあります。
  4. (鑑定) :事案によっては、裁判所からの依頼を受けて意思がご本人の判断能力等を調査します。これを鑑定といいます。必ず行われるわけではありません。
  5. 審判   :家庭裁判所により、後見人が選任されます。
  6. 審判確定 :申立人・後見人に審判所が送付されてから2週間で審判が確定します。

2.申立人について

法律上、後見人の選任を裁判所に求めることができる人は限定されています。
親族後見との関係でいえば、本人・配偶者・「4親等以内の親族」・任意後見人・任意後見受任者・市町村長が重要です。
このうち、4親等以内の親族については、ご本人の子・孫・兄弟姉妹・甥姪・叔父叔母などが含まれます。
市町村長とは、ご本人がお住いの市町長をいいますが、具体的には各市町の福祉関係課が担当となって、申立てを行います。ご本人の生活支援者の中に、4親等以内の親族がいなかったり、いたとしても申立てへの協力を拒むケースで利用されます。
近年は、支援者の中に親族がいない高齢者等の増加が一因となり、市町村長による申立ては増加傾向にあります。沼津市や三島市など静岡県東部地域でも一定数の申立てがなされていますし、弊所でも市長申立てによる後見人等に就任しています。

3.申立てをする裁判所

選任申立ては、ご本人の住民票上の住所地を管轄する家庭裁判所です。
管轄は各裁判所のHPにて確認できますが、参考までに静岡県東部地域の管轄を記載します。
静岡家庭裁判所沼津支部の管轄は、沼津市、御殿場市、裾野市、駿東郡(清水町 長泉町 小山町)、三島市、伊豆市、伊豆の国市、田方郡(函南町)です。
静岡家庭裁判所熱海出張所の管轄は、熱海市、伊東市です。
静岡家庭裁判所富士支部の管轄は、富士市、富士宮市です。
静岡家庭裁判所下田支部の管轄は、下田市、賀茂郡(東伊豆町 河津町 南伊豆町 松崎町 西伊豆町)です。

4.申立てに必要な書類・費用

(1)必要な書類~ 診断書・本人情報シート に注意!~

必要な書類・費用については、静岡家庭裁判所のHPで確認することができます。必要書類をそろえるのには、それほど苦労しないとは思いますが、診断書・本人情報シート・「登記されていないことの証明書」等は、どのように依頼すればよいか悩むこともあるかもしれません。
診断書・本人情報シートについては、ご本人を担当するケアマネージャさんに確認すると良いでしょう。
「登記されていないことの証明書」は、静岡地方法務局本局あるいは郵送にて東京法務局に請求するものです。こちらも法務局HPに申請書が掲載されています。

(2)申立費用~裁判所に納めるお金~

申立て費用については、いずれの類型で申立てるかによって若干変わってきますが、7000円から1万円くらいとなります。家庭裁判所の手続き全般に言えることですが、申立費用自体は、それほど高額ではありません。

(3)司法書士への報酬~申立書類の作成を司法書士に依頼した場合~

申立書類は自分で作成することもできますが、司法書士に申立書類の作成を依頼した場合には、司法書士に対する報酬が必要となってきます。

5.後見人候補者どうすればよいのか?

申立てに際しては、後見人候補者を記載することができます。
候補者欄を空欄のままで申立てをすれば、完全に裁判所の裁量によって、後見人を選任してもらうことになります。
この場合、裁判所は、裁判所が備える候補者リストの中から、適任と思われる者を選任します。
候補者を挙げた場合には、まずはその候補者が適当であるかを裁判所が検討し、適当であれば候補者を、不適当であれば候補者以外の者を選任します。
後見人になるためには、特別な資格は必要ありません。したがって、親族の方でも裁判所によって選任されれば、後見人となることができます。

【参照記事:親族が後見人になれるのか】