親族が後見人になれるのか

親族が後見人になれるのか

2021年1月11日

以下の記事では、「後見人」とは法定後見(後見・保佐・補助)における支援者を、「本人」とは後見人によって法的なサポートを受ける人を指します。

1.後見人を選ぶのはだれか~家庭裁判所による選任~

まず、大原則の確認ですが、後見人を選ぶのは家庭裁判所です。
後見人を選任することを求める申立てに際しては、申立書に後見人候補者を記載することはできます。しかしながら、あくまで「候補者」であり、家庭裁判所が必ず、この候補者を後見人に選任しなければならないわけではありません。

2.後見人には資格が必要なのか

(1)資格は不要!

後見人になるのに特別な資格は必要ありません。法律上、いくつかの欠格事由(未成年者や破産して復権していない者など)はありますが、弁護士でなければとか、司法書士でなければということはないのです。
実際、毎年後見人選任される者のうち、約20%は親族となっています(平成31年の司法統計より。)。

(2)ただし向き不向きはある!?

後見人になるのに特別な資格は必要ありませんが、人により向き不向きはあると思います。これは親族に対してだけではなく、司法書士や弁護士等にもいえることです。
後見実務においては、ご本人及びご本人の支援者(福祉関係者や親族等)とのコミュニケーションが重要となりますし、また財産管理を行うにあたり正確性・几帳面さというのは必須になってきます。また、裁判所への定期報告も必要となるため、報告書類の作成等も求められます。
こればかりは、能力というよりも向き不向きなので「後見人となった場合に、どういった職務を行うのか」ということは、事前にしっかりと把握しておくべきでしょう。そして、親族の中に適格者がいないという場合には、候補者となってくれる専門職を探したり、見当たらなければ家庭裁判所に一任(候補者は空欄)とすれば良いのです。

3.親族が後見人になることについて

以前は、とくに財産管理面でのトラブルを懸念し、裁判所も原則として専門職後見人を選任すると言われていました。当事務所でも、過去には「一定金額以上の資産があるケースでは、親族後見人は難しい。」とアドバイスすることもありました。
しかしながら、ここ数年で方針転換がなされており、紛争性のないケースにおいて親族が候補者に挙げられている場合には、原則として親族を選任するようになったと言われています(裁判所から選任方針が公表されているわけではありませんが、その傾向は当事務所でも確認できています。)

考えてみれば、実際に身の回りの世話をしている親族が、後見人として継続的にご本人とかかわることは理想的であり、財産の多寡で、その繋がりを断ってしまうことは、ご本人の意向や気持ちを推測すると問題があると言えます。

ただし、一定の事案では候補者以外の者が選任される傾向は継続しており、また、親族後見人では解決が難しいような課題を抱えるケースでは複数後見となったり監督人が付けられたりリレー方式(最初は専門職が選任され、課題解決後に親族にバトンタッチするもの)が選択されたりします。

4.親族以外が選任されるケースについて

(1)親族が選任されないケース

まず挙げられるのが「紛争」事案です。たとえば、母親の介護や財産管理を巡り子供同士で紛争が生じている状態において、後見人の選任申立てがなされるようなケースです。
親族による高齢者虐待が疑われるような事案も考えられます。
さらには、裁判所の調査や面談の結果、候補者が不適格と判断されることもあります。不適格となる理由としては、シンプルに資質に問題ありとされるケース、高齢であり体力的に後見人の職務に耐えられないと判断されるケース、遠方に居住しており継続的な後見職務が困難とされるケースなどが挙げられます。

(2)親族+αの選任となるケース

まず挙げられるのは「遺産分割」事案です。たとえば、父親が死亡したことに伴い遺産分割協議を行いたいが、母親に後見人選任の必要があったため、子を候補者としたうえで申立てをしたケースが想定されます。
この場合、母親と子は双方が相続人となっており、利益相反状態になっています。仮に子が後見人となっても、遺産分割につき母親を代理することはできないので、さらに特別代理人等の選任が必要になってしまいます。
こうしたケースでは、複数の後見人が選任され、遺産分割を含む財産管理については専門職後見人が対応し、その他身上監護等については子が対応するという方法最初は、専門職後見人が選任され、遺産分割完了後に、子にバトンタッチする方法(リレー方式)後見監督人が選任され、継続的に監督を受ける方法などが選択されます。
また、多額の資産がや賃貸不動産の管理など財産管理が複雑なケース、身上監護面で専門的対応が必要とされるケースなども挙げられます。

5.後見制度支援信託について

親族後見との関係で知っておきたいのが「後見制度支援信託」です。当初は信託銀行のみが扱っていたのですが、最近は銀行も扱うようになっており、その場合には「後見制度支援預金」といわれます。
これは、ご本人が一定の流動資産(現金や預貯金)をもつ場合に、親族後見による横領や逸失のリスクを無くすため、日常生活に必要な分を除いた預貯金等を「後見制度支援信託」にまわすというものです。信託されると、信託銀行は裁判所の許可がない限り、後見人に対しても払い戻しを行いません。そのため、本人資産を保護できるというわけです。
ご本人が一定の流動資産(現金や預貯金)をもつ場合には、親族を候補者としても、この「後見制度支援預金」の要否を専門職に判断させるため、複数後見にしたりリレー方式にするというケースがあります。

6.最後に

結論として、親族でも後見人になることは可能です。
ただし、後見人としての職務の内容を、しっかりと理解したうえで申立てをすべきです。理解不十分なまま選任されてしまった結果、あとから後見人を辞任したいと思っても、自分の意思だけで自由にやめることはできません。辞任に際しては家庭裁判所の許可が必要です。
後見人は、非常に広範な法律上の代理権をもつこととなります。正しい制度理解の上で、責任感をもって職務にあたらなければ、なによりご本人が不利益を受けることになるでしょう。