成年後見制度を利用するケースについて

成年後見制度を利用するケースについて

2021年1月10日

1.成年後見制度とは

認知症等の原因で、法律上の意思能力が十分でない場合、ご本人だけでは有効に契約等の法律行為を行うことができません。
そうした方の生活をサポートするために、成年後見制度は用意されています。
成年後見制度は大きく2つにわけることができます。サポート役を家庭裁判所が決定する「法定後見」と、サポート役を自ら決定する「任意後見」です。
さらに「法定後見」は、保護の必要性の度合いによって、後見・保佐・補助と3類型にわかれています。

また、「任意後見」は、サポート役を自ら選ぶという性質上、意思能力が衰える前に必要な契約を行わなければなりません。そのため、意思能力が衰えた段階においては利用することができません(任意後援を利用する場合には、事前に準備しておく必要があります。)。 この記事では、法定後見を念頭に置いて、どういったケースで利用がされるのか見ていきましょう。
以下では、法定後見の意味で「後見制度」、後見制度によってサポートされる方を「ご本人」、サポート役を「後見人」としています。

2.どういった場合に、後見制度を利用するのか

法律上の意思能力が十分でない人をサポートするための制度ですので、幅広く利用されることが予定されていたのですが、実際のところは、ご本人をめぐる具体的な法律問題の解決のために利用されるケースが多いように思います。
主観的にではありますが、多い順番にあげると、「遺産分割協議」「所有不動産の売却」「定期預金の解約等金銭管理」といったところでしょうか。
このほかに、身近に生活支援者がいない単居高齢者の方が、認知症等の理由で単独で生活を維持できなくなった際に利用するケースも、最近では非常に多いです。 後見制度の利用は、家庭裁判所への申立てによってスタートします。司法書士は、申立書類の作成サポートはもちろん、相続や不動産売却の事案でも、さらには自身が後見人となるなどして、後見制度に深く関与しています。

3.「遺産分割協議」を目的として利用されるケース

たとえば、Aさんが亡くなり相続手続きを進めるため遺産分割協議を行おうとしていたところ、相続人B・C・Dのうち、Dさんが認知症のため遺産分割協議を行えない(実印の場所すらわからない)ケースです。
高齢化が進み、亡くなられた方の相続人自身も、高齢であるケースが増えています(亡くなられた方の配偶者が相続人である場合や、兄弟姉妹が相続人となった場合。)。
いざ遺産分割協議をやろうにも、相続人の意思確認ができなかったり、印鑑証明書の発行を受けれなかったりということで、後見制度を利用するものです。
こういったケースにおける申立てについては、後見人候補者となるべき人も相続人であることが多く、その場合には、利益相反状態であるとして後見人不適格とされるケースがあります。「誰を後見人候補者とするのか」あるいは専門職後見人(親族ではない司法書士や弁護士等を後見人人すること。)の利用も視野に入れて、申立て続きを進める必要があります。
また、遺産分割完了後においても後見制度は継続されるため、その手続き負担をどう考えるかも、忘れず検討しなければなりません。

4.「不動産の売却」を目的として利用されるケース

たとえば、母Aさんと子Bさんがいたとして、母Aさんの老人ホームへの入所にあたり、Aさん名義の不動産を売却して施設費用に充てたいけれども、Aさんが認知症のため売買手続きができないというケースです。
売買契約に関与する不動産屋さんや司法書士が、意思能力の有無には注意を払っていますので、売買を進めようとする段階で、後見制度を利用する必要性が認識されることが多いです。
冒頭のケースでは、子Bさんを後見人候補者として、裁判所に対して後見人選任の申立てをするのが一般的でしょう。
こういったケースの申立てにおいては、子Bさんの後見人としての適格性のほか、予定されている不動産売買の内容も検討事項となります。さらに、後見人選任後においても、Aさんの居住用不動産の売却にあたっては、別途裁判所の許可が必要になるため、この売却許可が取得できるような売買価格であったり売買条件であったりを検討しなければなりません。
くわえて、不動産売却後においても後見制度は継続しますので、定期報告など後見人としての事務負担に子Bさんが対応できるかも考慮すべきでしょう。

5.「定期預金の解約等金銭管理」を目的として利用されるケース

たとえば、母Aさんの老人ホームの利用料を、Aさん名義の口座から、子Bさんがキャッシュカードを利用して引出していました。しかしながら、普通口座の残高が少なくなってきたので、定期預金を解約しようとしたけれど、銀行から「本人でないと解約できないし、本人が認知症の場合には後見人でないと対応できない。」といわれてしまったというケースです。 上記の例では、Aさんの面倒を見ていたのは「子」でしたが、子がいない方だと甥・姪だったり、誰かしらの親族が介護の面倒を見ている状況の中で、上記のような課題が発生してくることが多いです。
こうしたケースの申立てにあっては、子Bさんが後見人候補者になるのですが、時折、選任前の財産管理の状況などがネックとなって、後見人としての適格性に疑問符がついてしまうことが生じてしまいます。
したがって、申立て前の段階で、仮に財産管理上の課題があるのならば、しっかりと解消することが重要です。もしAさんの財産とBさんの財産が混同してしまっているような状態であるならば、いったん専門職に後見人となってもらい財産状況を整理してもらったうえで、Bさんにバトンタッチする(いわゆるリレー方式)を想定することも必要でしょう。

6.生活支援を目的として利用されるケース

たとえば、単身生活を送っていた高齢者のAさん。ある日、脳梗塞で自宅で倒れているところをヘルパーさんに発見され、緊急搬送され一命をとりとめたものの、後遺症のため認知機能が大きく損なわれ、今後単身での生活は不可能になってしまったというケースです。
この場合、Aさんの生活全般をサポートする人が必要で、これはまさに後見制度の典型的な活用場面ということになるのです。
こうした場面での後見制度の利用は、最近、非常に増えています。
単身で生活しているうえに、子や親族などがおらず周囲に生活支援者のいない方が増えているからだと思います(子や親族がいても、疎遠であったり、遠方で生活しており日常的な生活支援が困難というケースもあります。)。
こうしたケースの申立てにあっては、専門職後見人(司法書士、弁護士、社会福祉士など)を裁判所に選任してもらい、専門職後見人が財産管理のみならず、幅広く生活支援を行っていくことになります。