【事例をもとに考える】成年後見人の報酬について

【事例をもとに考える】成年後見人の報酬について

2021年4月12日

1.「成年後見人の報酬」は制度利用に際して悩みどころ

成年後見制度について調べている人、あるいは成年後見制度の利用を考えている人にとって、
「成年後見人の報酬」は非常に気になるポイントでしょう。

「本人のためには成年後見制度を利用したいけれど、本人の財産が少ない!」
「専門職の報酬を支払うことで、本人の生活が苦しくなることは避けたい!」
「親族として後見人となっているけれど、報酬をもらえることはできるの?」
など、いろいろな疑問があると思います。

私ども司法書士法人貝原事務所は、沼津・三島などの静岡県東部地域において、成年後見制度の利用支援(後見人等への就任や申立てのサポートなど)を積極に行っております。
こうした成年後見制度の利用支援の経験を踏まえつつ、「成年後見人の報酬」について、モデルケースを利用しながら、皆様と確認していきます。

2.成年後見人の報酬を考えるためのモデルケース

Aさんは、叔母Bさんの介護や生活援助を長年行ってきました。

ことの始まりは今から3年ほど前。
Bさんは自宅で転倒して骨折し、介護が必要な状況になったのです。
Bさん自身には子供がおらず、親族同士で「誰が中心となってAさんの介護を行うか。」話し合いをおこない、結果、Bさんの亡兄の子で、近所に住んでいたAさんに白羽の矢が立ったのでした。

当初は、週に数回の見守りと、月に2回くらいの通院補助のみで、Aさんとしてはそれほどの負担とは思っていませんでしたが、ここ1年くらいでBさんに認知症の症状が出始めてから状況は一変してしまいました。

認知症の症状のため、Bさんから一日に何度も呼び出されたり、Bさん自身で財産管理ができなくなってしまったためときにはAさんがお金を立て替えたりと、とてもAさん一人では対応できなくなってしまったのです。

あらためて親族間で話し合いを行い、また司法書士への相談もしながら、つぎのように対応することとしました。

  • 成年後見人の選任を申立てる。
  • 親族で対応できる範囲は超えているので、できれば専門職に後見人となってもらいたい。

ただ、Aさんが気になったのは、「Bさん自身の資産が少ないため、弁護士や司法書士などの専門職が後見人となった場合に、その報酬をどうすればよいのか?」ということでした。

3.成年後見人の報酬の基本(本人が負担できる範囲で)

(1) 成年後見人の報酬は本人財産のみが原資

成年後見人の報酬負担の大原則は、次のとおりです。詳細は、次項以降で解説しています。

  • 成年後見人の報酬は、本人のみが負担する。
  • 成年後見人の報酬額は、家庭裁判所が、本人の財産状況を踏まえて、決定する。
  • 親族だからといって後見人としての報酬が受け取れないわけではない。

(2)今回のモデルケースでは?

今回のモデルケースにあてはめると、つぎのようになります。

  • 専門職後見人の報酬は、Bさんのみが負担し、Aさんら親族が負担することはない。
  • 専門職後見人の報酬額は、家庭裁判所がBさんの財産や支出をふまえて決定する。そのため、原則的には、Bさんが負担できる範囲での金額となる。
  • かりにAさんが後見人になったとして、状況によっては後見人としての報酬を受け取ることができる。

4.専門職後見人の報酬の目安

そもそも後見人の報酬は、各地の家庭裁判所(より正確にいうと裁判官)が決定します。
全国統一の算出基準があるわけではなく、それぞれの家庭裁判所が独自の基準で決定しているのが現状です。

ただし、多少の差異はあるものの、おおむね次のような基準であると言われています。

  • 1000万円以下の場合には報酬月額2万円。
  • 1000万円超5000万円以下という場合には、月額3~4万円。
  • 基本的な後見事務以外の事務を行った場合には、一定額を加算。

これは、東京家庭裁判所がHP上で公開しているものです。
地域によっても差がありますし、また本人財産の状況によっても変わってきますが、一つの目安となる数字です。

参考までにですが、当事務所の司法書士が受任しているケースでは、管理財産1000万円以下の場合には年額で年間15万円から20万円くらいがベースとなるように思います。
ご本人の資産がわずかなため、より低い金額だったり、報酬を受領できない案件もあります。
逆に、基本的な後見事務以外の事務を行い、報酬が加算される場合もあります。

5.本人財産では負担できないとき

ご本人の財産や収入が少ないため、上記基準による報酬額を負担できない場合には、家庭裁判所が受領可能額まで報酬額を減額したり、あるいは基準通りの報酬認定がされても後見人が報酬を受領できないことになります。

こうした状況においても、ご本人の親族や関係者が、専門職後見人の報酬を負担する義務はありません。
ただし、そうなると財産や収入の少ない人が後見制度を利用しにくい状況が生まれてしまいます(いくら専門職といえども、無報酬の事案を何件も受けられるわけではないためです。)。

そこで、一部自治体では、そうした無報酬事案に対して報酬助成を行っています。
ただし、各自治体の予算の都合もあってか、非常に厳しい要件の下で限定的な場合に限って助成が行われているのが現状です。

とはいえ、報酬負担が困難ケースにおいて「専門職の報酬が負担できないから申立てをやめよう」というような考えになる必要は全くなく、ご本人にとって成年後見制度を活用するメリットがあるのならば、後見人の報酬を気にすることなく申立てをすべきです。

6.親族後見人と報酬

これまでは、専門職後見人の報酬について話をしてきましたが、親族後見人についても報酬付与の申立てを家庭裁判所に行うことは可能です。
ただし、親族の場合には法律上の扶養義務との関係もあり、公表されている基準に沿った報酬が認定されるかどうかは一概にはいえません。

公表されている基準は、専門職後見人に対する報酬基準とされており、親族後見人については上記基準から減額される可能性があることを明示しています。
このあたりは、ご本人の財産状況や収支の状況、ご本人と親族後見人との関係性も影響してくると考えられます。

(おまけ)任意後見においては「契約」で決定

なお、本記事では、成年後見人(法定後見)を前提として説明をしてきましたが、後見制度には「任意後見」というものもあります。

この「任意後見」の場合には、任意後見人の報酬は契約(任意後見契約)によって決定されます。
この点は、家庭裁判所によって成年後見人等の報酬が決定される「法定後見」とは大きな違いです。

なお、任意後見の場合には「任意後見監督人」という人が家庭裁判所によって選任されますが、この任意後見監督人の報酬は、家庭裁判所によって決定されます。

任意後見契約について気になる方は、つぎの記事をご参照ください。
【参照記事:任意後見契約について】

この制度に関連する事例