成年後見監督人の役割について

成年後見監督人の役割について

1.成年後見監督人とは

(ケース)
Aさんは、母Bさんの介護や生活援助をしていました。Aさんは、いまは定年退職したものの会社で経理の仕事をしており、Bさんの財産管理や収支記録も問題なく行っていました。
そうした状況のなかで、Bさんが老人ホームに入所するにあたり、Bさんの居宅であった土地・建物を売却することとなりました。Bさんは、認知症の症状もあり、自身で売買契約の当事者になることは難しかったため、成年後見人選任の申立てを行うこととしました。
申立てにあたっては司法書士Kに申立書作成のサポートを依頼し、Aさんを後見人等候補者として記載したうえで申立てを行いました。
結果として、AさんがBさんの成年後見人に選任されたのですが、司法書士Cが後見監督人として同時に選任されました。司法書士Kからは、後見監督人が選任される可能性を示唆されていたのですが、裁判所から疑われているようで、Aさんは、なんだか嫌な気持ちです。

親族の方が成年後見人となるケースにおいて、成年後見人とは別に「成年後見監督人」が選任される事案が増えてきています。
「成年後見監督人」とは、後見人を監督する役割を担う者であり、「成年後見人の後見事務が適正に行われているかどうか」「成年後見人の権限行使が適当であるかどうか」「成年後見人に不正な行為がないかどうか」を家庭裁判所にかわってチェックします。
ただし、実務上は、「監督=チェック」だけでなく、後見事務に関する「助言」や「指導」を行うことも重要な役割となっています。上記のケースについても、不動産売却という法的課題にAさんが対応するにあたり、身近にアドバイスをしてくれる存在が必要であろうという趣旨で監督人が選任されたようにも思えます。
後見監督人には、司法書士・弁護士・社会福祉士などの専門職が選任されています。そして専門職である監督人に対しては、裁判所の決定により、ご本人の財産の中から定期的に報酬が支払われることとなります。

2.どのようなケースで監督人が選任されるのか

(1)多くが親族後見のケース

後見監督人が選任されるのは、多くが親族後見人に対してです。そして、そうしたケースで後見監督人に期待されているのは、前述の「助言」や「指導」です。
親族後見人は、ご本人との関係性の深さから、丁寧な身上監護を行うことが可能であると評価されています。一方で、法的課題への対応や財産管理の経験がどうしても不足しがちになるため、この点を後見監督人による助言・指導で補っていこうというのが、監督人選任の大きな理由なのです。

(2)ご本人の財産が多い。資産の変動がある。

より具体的に、後見監督人が選任されやすいケースを挙げると、ご本人の財産が多額であったり、収益物件を所有しているたお金の出入りが多いといった事案です。
これらはさらに、「財産管理」のノウハウを指導しながら最終的には独り立ち(後見監督人が辞任)することを見越していくケースと、流動資産の増減が発生しやすいので継続して「監督」していくケースに分別できます。

(3)ご本人に法的課題がある。

遺産相続や不動産売却など法的な課題があり、ある程度は親族後見人でも対応ができそうだが、後見監督人のサポートがあればより安心だろうというケースです。このケースにおいては、法的課題が解決された後には、後見監督人の辞任が予定されているといえます。
親族後見人では対応が難しいとされる場合には、最初は専門職後見人が就いて課題解決後に親族にバトンタッチする方式、あるいは専門職後見人と親族後見人がダブルで選任される方式が選択されることが多いです。
上記のケースについても「Aさん一人でも対応できなくもないかもしれないが、監督人のサポートがあればより盤石であろう。」との判断が裁判所にて行われたようにも思われます。

3.就任中の関係

(1)定期的な監督

後見監督人は、成年後見人に対して監督権をもちます。
具体的には、「財産目録の作成につき立会いを行う」「定期的に後見人から後見事務に関する報告や財産目録の提出を受ける」といったものです。
実務上は、つぎのような流れで監督事務が行われています。

  1. 後見監督人が後見人に指示や助言を与える。
  2. 後見人が後見事務報告書・財産目録を作成する。
  3. 後見監督人はそれらの報告を受ける。報告内容をチェックする。
  4. 監督人は後見事務の状況について家庭裁判所に報告する。

後見監督人は、適宜のタイミングで後見人に報告を行うよう指示することができます。従って、最初のうちは3カ月に1回程度報告を求め、慣れてきたら半年に1回にするなど、後見監督人の裁量で、監督事務は行われていきます。

(2)後見人の権限行使に際して監督人の同意が必要なケース

上記の定期的な監督のほかにも、法律上、後見監督人が選任されている場合には、後見人が一定の行為をなすにあたり監督人の同意が必要とされています。
いくつか例をあげると、(1)不動産の処分、(2)相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割、などです。
不動産の処分については、居住用不動産に限られませんので、後見監督人が選任されている事案においては、不動産売却にあたり後見人は監督人の同意を必ず得る必要があります。同じく相続についても、遺産分割等を行うにあたり後見監督人の同意が必要となります。
後見人のみが選任されている事案に比べると、後見人の裁量の範囲が限定されており、こうした理由からも親族後見人の事案において、後見監督人が選任される傾向にあるのかもしれません。

(3)その他

以上のほか、後見監督人には、後見人の解任請求権、利益相反時の代理権、急迫時の代理権などが認められています。

4.まとめ

親族後見人の中には、自身に後見監督人が選任されたことについて「不正を疑われているのか」「不適格だと思われているのか」といったネガティブな感情を抱く方もいらっしゃるかと思います。
しかしながら、前述のように、親族後見事案において後見監督人が選任されるのは、「監督」というよりも「助言」「指導」の側面が強いのです。そして、親族後見人において、財産管理のノウハウや法的課題への対応力が不足するのは仕方のないことであって、むしろ、そうした不足があっても、なお後見人として選任されることに自信をもっていただきたいです。
後見監督人の助言や指導を受けながら、財産管理の方法や、法的課題を解決していけば、監督人が外れ単独後見となるケースもあります。
身近なサポーターがいるものと前向きにとらえていくことが重要だと考えます。