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1.親名義の敷地に子供名義の建物を建てた
マイホームを建てるときに、親名義の不動産の上に、子供の新築建物を建てるケースがあります。
こういったケースは、親の相続をみこして、遺言作成等の相続準備をする必要性が高いといえます。
とりわけ、ご実家と同じ敷地内にお子様名義の建物を建てる場合には、なお一層、相続対策が必要だといえます。
なぜ遺言作成など「相続準備」をすべきといえるのか。
モデルケースにそって考えてみましょう。
2.モデルケース(親名義の敷地に子名義の建物)
三島市に在住のAさん。
Aさんには妻Bさんと、子供が二人(長男Cさん、長女Dさん)います。
5年ほどまえ、Aさんは自身が所有する土地の一角を長男Cさんの新居の敷地として提供しました(土地の名義はさんのままです。)
そのためAさん所有の土地上には、Aさん名義の建物と長男Cさん名義の建物が併存しています。
3.Aさんに相続が発生したら?!
上記事例において、Aさんが亡くなった場合、どのようなことが起きるのでしょうか?
(モデルケースとして考えるため、遺言等は作成していないという前提とします。)
(1)相続関係の確認
Aさんの死亡により、Aさんの財産について相続が発生します。
Aさんの相続人となるのは、妻Bさん、長男Cさん、長女Dさんの3名です。
(2)遺産分割協議の必要性
Aさんの相続が開始すると、Aさんの遺産は、いったん相続人で共有される状態となります。
つまり、妻Bさん、長男Cさん、長女Dさんの3名が、Aさんの遺産を一定の割合で保有する状態となるのです。
こうした共有の状態は、相続人全員で遺産の分け方について話し合いをすることで解消されます。
この「相続人全員での話合い」を遺産分割協議というのです。
たとえば、長男Bさんが「実家の敷地は、自分の家も建っていることだし、自分の名義にしたいよ。」という希望を持っていたとします。
これに対して、妻Bさんや長女Dさんが「実家の敷地は、長男Bさんが引き継ぐということでOKだよ。」といってくれたとしましょう。
そうなれば「実家の敷地は長男Bが相続します。」というような遺産分割協議書を作成し、所定の書類とともに法務局に提出することで、実家の土地の名義はAさんからBさんに引き継がれるのです。
Aさんが亡くなり、Aさんの遺産について、妻Bさん、長男Cさん、長女Dさんの3名は遺産分割協議をおこないました。
協議の結果、つぎのようにAさんの遺産を承継することになりました。
(1)実家の敷地は長男Cさんが相続する。
(2)実家の建物は妻Bさんが相続する。
(3)預貯金は長女Dさんが相続する。以上の内容を、遺産分割協議書にまとめました。
遺産分割協議書には、相続人全員が実印を押印し、また印鑑証明書をつけます。こうして用意した遺産分割協議書その他の必要資料とともに、法務局に相続登記を申請し、実家敷地は長男Cさん名義となりました。
(3)遺産分割協議がまとまらない可能性?
上記のモデルケースでは、Aさん所有の土地は、Cさん建物の敷地になっていました。
Cさんとしては、Aさんの相続において、自宅の敷地でもある実家土地を承継したいと考えるのが普通でしょう(なかには「自分名義の建物が上にあるのだから、自分が相続して当然だ!」という方もいらっしゃいます。。)
しかしながら、後述するような遺言等がない限りは、Aさん名義の土地は、いったん相続人全員の共有となります。
Cさんが単独で承継を希望する場合には、他の相続人も含めた遺産分割協議を行い、そこで「Cさんが相続する。」旨の合意を成立させなければいけません。
万が一、長女Dさんが、自宅敷地の所有権を承継することを希望した場合には・・・。
4.相続への備えとして考えられること
Cさんが、どうしても自宅敷地の所有権を取得することを希望するのならば、つぎのような対応が考えられます。
- Aさんが実家敷地をCさんに生前贈与する。
生前贈与については、贈与税や特別受益を考慮した対応が必要となるでしょう。 - Aさんが「土地はCさんに承継させる」旨の遺言を残す。
遺言書の作成においても、スムーズな遺産承継を可能にさせるような工夫、Dの遺留分への対応などが必要となるでしょう。 - あらかじめ敷地を分筆して、Aさん自宅敷地とCさん自宅敷地にわける。
相続財産の状況によっては、敷地を分筆しておくことも必要になるかもしれません。
分筆することで、実家敷地は妻Bさん、残りは長男Cさんと、わけて相続させることもできます。
いずれの対策には費用もかかりますが、ぜひとも「対策の効果と費用」を冷静に比較して検討していただきたいです。
家族仲が良いなどの理由で、相続対策を行わない方もいらっしゃいますが、親族関係は変化するものです。
また、認知症等の理由で、そもそも遺産分割協議自体が円滑に進められないケースも想定されます。
ご自宅の敷地が自身の名義でない場合については、万が一に備えた対応が必要であると考えます。
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