後見人(とりわけ専門職後見人)の報酬について

後見人(とりわけ専門職後見人)の報酬について

2021年4月11日

1.専門職後見人の報酬は誰からもらうのか

専門職後見人の報酬は、ご本人のみが負担します。

ご親族の方が申立人となり後見人の選任申立てをするケースにおいて、選任される専門職の報酬を親族が負担しなければならないと心配される方がいらっしゃいますが、そのようなことはありませんのでご安心ください。

また、ご本人の財産が僅かしかないという場合には、後見人は報酬を受領できないこととなります。
市町によっては、そうした場合に後見人の報酬を助成する制度を設けているところもありますが、要件が厳しいこともあり、無報酬となっている事案も一定数存在するのです。

2.報酬受領の流れ

専門職後見人の報酬は、その金額を家庭裁判所が決定します。

また、報酬受領にあたっては、後見人自らが家庭裁判所に対して「報酬付与の申立て」を行う必要があります。
従って、ご本人の財産が少なく、報酬受領の余裕がない場合には、報酬付与の申立てすら行わないケースもあります。

3.報酬額

専門職後見人の報酬額については、東京家庭裁判所が公開している基準額が有名です。

ただし、身上保護の重視など後見実務における考え方が変化している面もあり、現在も、そのまま基準額通りに決定されているとは言えない面もあります。

(1)基本報酬

基本報酬とは、管理している財産額を目安として付与されるものです。

たとえば管理財産が1000万円以下の場合には報酬月額2万円。1000万円超5000万円以下という場合には、月額3~4万円というような形で決定されます。

筆者も後見人として報酬を受領していますが、管理財産1000万円以下のケースでは、基準額よりも更に少なくなることもあり、年間15万円から20万円というのが相場になっているようにも感じます。

こうした点は、管轄する家庭裁判所の方針、ご本人の収支予定なども影響してくるのかもしれません。

(2)付加報酬

上記の基本報酬に加えて、身上監護等に特別の困難があった場合には「基本報酬額の50パーセントの範囲内で相当額の報酬を付加」するものとされています。

また、遺産分割や不動産売却などの特別の行為を行った場合についても「相当の報酬を付加」するとしています。
この点については、事案ごとに認定は様々です。

4.後見監督人について

親族後見の事案において、後見監督人が選任される事案が増加しています。

後見監督にが選任された場合については、専門職後見人と同様に、ご本人の財産にて監督人報酬を負担する必要があります。

報酬基準については、上述の東京家庭裁判所の基準によれば、管理財産額が5000万円以下の場合には月額1~2万円、管理財産額が5000万円を超える場合には月額2万5千~3万円とされています。

5.今後の家庭裁判所の方針は?

後見人の報酬については、上記の通り、原則として管理財産の金額によって決定されます。

この点については「報酬体系も財産管理に偏重している」とか「身上監護(身上保護)における後見人の活動を評価できていない」といった批判があり、基準の見直しが行われているといわれています(令和4年1月現在)。

今後も、さらなる変化が生じる可能性があります。