配偶者居住権について

配偶者居住権について

2021年3月22日
相続・遺言

1.配偶者居住権とは

配偶者居住権は、被相続人(亡くなられた方)の配偶者が、被相続人の死亡後においても住み慣れた住居に居住する権利を確保しやすくするための方策として制定されたものです。
配偶者居住権の設定を受けると、設定を受けた配偶者は、原則として自身が死亡するまで、住み慣れた住居に無償で住み続けることができます。

2.配偶者居住権の設定の仕方

配偶者居住権の設定を行うためには、主として次の2つの方法があります。

(1)遺言による方法

建物の名義人が、遺言によって配偶者に「配偶者居住権を遺贈」することで、配偶者居住権を設定することができます。

(2)遺産分割協議による方法

また、相続人全員が遺産分割協議により配偶者居住権を設定することも可能です。この方法による際は、当然ながら相続人全員の合意が必要となります。
遺産分割協議が不調に終わった際には、遺産分割調停など裁判手続きを利用せざるを得ませんし、調停や審判によって必ず配偶者居住権の設定を受けることができるとも限りません。相続人同士での話し合いが困難と予想されるケースにおいては、遺言による設定を検討すべきでしょう。

3.配偶者居住権のメリット

(1)低価額での居住権の取得

残された配偶者が、居住していた建物や敷地の所有権を取得する場合、これだけで配偶者の法定相続分を超過してしまい、生活資金としての現金・預貯金を相続する余地がないケースが想定されます。
配偶者居住権であれば、居住用建物のみについて、しかも所有権より低額で取得できるため、預貯金等のその他資産を相続できる余地が生まれます。

(2)残された配偶者の死亡によって消滅する

配偶者居住権は、設定を受けた配偶者の死亡によって消滅します。これが所有権の場合には、配偶者の財産として相続が発生することになるので、大きな違いとなります。
この点をもって、相続税の節税効果があると主張する人もいますが、他の税制度との兼ね合いでプラスにもマイナスにもなりえますので、具体的な事案に即した税理士によるシミュレーションは必須です。

また、配偶者に所有権を取得させる場合には、配偶者の相続関係によっては建物所有権が配偶者の傍系に流れていってしまうことも考えられます。一方で、配偶者居住権の場合には、たとえば前妻の子に所有権を承継させつつ、子のない後妻に配偶者居住権を取得させることで、後妻の死亡後においても子に所有権が残る形にすることができます。

(3)持戻しの免除(婚姻期間20年以上の場合)

さらに、婚姻期間が20年以上の夫婦間において配偶者居住権が遺贈された場合については、持戻し免除の意思表示がなされたものとみなされ、相続分算定の際に当該遺贈が考慮されません。これにより、配偶者は、相続による取得分とは別枠で配偶者居住権を取得することができるのです。

4.配偶者居住権の留意点

(1)譲渡禁止

配偶者居住権は、あくまで残された配偶者の居住権を確保するための制度です。従って、配偶者居住権を譲渡したり、建物所有者の承諾なく建物を賃貸することはできません
何らかの事情で建物を第三者に譲渡したい場合には、後述の放棄等により配偶者居住権を消滅させたうえで譲渡することになるでしょう。

(2)建物共有の場合

配偶者居住権を設定する建物について、被相続人が配偶者以外の者と共有していた場合には、配偶者居住権を設定することができません
被相続人と子が共有しているケースでは、配偶者居住権を設定することはできないということになります。

(3)相続開始時点での「居住」が必要

配偶者居住権の設定に際しては、配偶者居住権を取得する配偶者が設定を予定する建物に相続開始時点において居住していることが要件となります。一時的に入院していたケースであればともかく、相続開始時には既に老人ホーム等に入所しており自宅に戻る予定はなかったという場合には、配偶者居住権を取得することはできません。

5.配偶者居住権の放棄について

配偶者居住権を取得した配偶者が、病院に長期入院したり介護施設に入所するなどして配偶者居住権が不要となった場合には、配偶者居住権を放棄することが可能です(放棄する対価として、建物所有者から代償金を受け取ることも考えられます。無償で放棄する場合には贈与税の課税に留意する必要があります。)。
放棄する方法のほかにも、建物所有者の承諾を得れば、建物を賃貸することも可能です。

6.まとめ

配偶者居住権の概要は以上のとおりです。
設定の要件が複雑だったり、利用によるメリット・デメリットが明確でない点もあるかと思います。また、税制面のメリットは、まさにケースバイケースです。
利用にあたっては、司法書士や税理士等の専門職に相談の上、検討を進めていただければと思います。