預貯金を相続したときの手続き(預貯金の名義変更・解約)

預貯金を相続したときの手続き(預貯金の名義変更・解約)

2021年3月8日

0.預貯金の相続におけるポイント

預貯金を相続したときに、どういった手続きが必要となるのでしょうか。
この記事では、預貯金を相続するための手続きを順番にご説明していきます。

具体的な「預貯金の相続手続き」について確認する前に、相続手続きのポイントを確認しておきましょう。

  • 金融機関が、預貯金の名義人が死亡した事実を把握した時点で、預貯金は凍結される。
  • 凍結された預貯金を解約するためには、「相続人全員の合意」が必要になる。
  • 「相続人全員の合意」を証明するために、相続人全員の印鑑証明書が必要になる。

それでは、具体的な預貯金の名義変更・解約にともなう手続きを確認していきましょう。

1.預貯金の承継・解約の流れ

(1)預貯金の残高を確認したいケース

たとえば当事務所で、預貯金の相続手続きのサポートを行う場合、つぎのようなステップで相続手続きを進めていきます。

  1. 亡くなられた方が取引をしていた金融機関の洗い出し。
  2. 取引をしていた金融機関から残高証明書を発行してもらう。
  3. 残高証明書をもとに相続預金の一覧表を作成し、相続人に渡す。
  4. これをもとに相続人が遺産分割協議(預貯金を誰がどれくらい取得するの決める会議)を開催する。
  5. 遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名押印する。また相続人全員が印鑑証明書を提出する。
  6. 遺産分割協議書とともに金融機関に対して預貯金の承継・解約手続きを実施する。
  7. 承継・解約した預貯金を各相続人で分配する。

親族間で手続きを進める場合には、上記2の「残高証明書」まで取得しなくても、通帳に記帳された金額をもとに上記4の「遺産分割協議」を実施することもあるかもしれません。

(2)各金融機関から書式の取寄せ

上記2(残高証明書の取得)のタイミングで、金融機関から、その後の名義変更・解約に必要となる書類を受領すると効率的です。

金融機関ごとに所定の書式があるので、複数の金融機関に相続預金がある場合には、まずは、すべての金融機関から手続書類を取得するようにしましょう

2.取引支店が遠い場合

(1)郵送や最寄店舗での対応が可能かを確認する!

最近は金融機関の統廃合が相次ぎ、最寄に相続預金の取引支店がないということも考えられます。

預貯金の相続手続きを進めるにあたっては、①最寄りの支店に往訪し手続きをおこなうところ、②郵送で手続きを完結できるところ、③取引支店への往訪をもとめるところなど、様々です。

取引支店が遠い場合には、まずは取引支店に連絡をしてみて、郵送あるいは最寄支店での手続きが可能かどうか、確認してみましょう。

(2)店舗の統廃合や通帳の電子化には注意!

すこし話がそれますが、店舗の統廃合や通帳の電子化により、亡くなられた方のもっている預貯金が判明しにくくなるケースが増えています。

たとえば三島市のケースだと「みずほ銀行」「三菱UFJ銀行」が該当するのですが、以前までは支店があったものの、支店が統廃合されて、現在は市内に店舗が存在しないというケースがあります。

通帳が残っていれば、そこに口座があったとわかるのですが、たとえば統廃合から何十年と経過したあとに「まさか、みずほ銀行に口座が?」ということになりかねません。

同様のことは通帳の電子化にもいえます。
通帳があればまだしも、通帳レスが進むと「その銀行に口座があったのか?」というのは限りなく、わかりにくくなってしまうのです。

3.遺産分割協議

預貯金の名義変更・解約にあたっては、相続人全員による遺産分割協議が必要です。

「預貯金を誰が相続するか。」「複数名で相続する場合には、どのような割合で相続するか。」などを決定します。

そのうえで、決定事項を遺産分割協議書にまとめて、相続人全員で押印します。

なお、推奨はしませんが、遺産分割協議書を作成せず、金融機関に対して提出する届出書に相続人全員が押印することでも手続きは可能です。
この場合には、相続人による押印作業が一度で済むように、あらかじめ金融機関から相続手続きのための書類を受領しておくことが重要になります。

4.必要書類の提出と名義変更・解約

名義変更・解約に必要な書類は、一般的には次のとおりです。

  1. 金融機関所定の届出書
    遺産分割協議書に、取得者や相続人代表者が明示されていれば、それらの人のみが署名押印すればよく、相続人全員が署名押印する必要はありません。
  2. 遺産分割協議書
    相続人全員で協議し決定した、遺産の分割方法を記載します。これに相続人全員が実印を押印します。
  3. 相続人全員の印鑑証明書
    有効期間の定めがあるのが一般的です。金融機関によって期間は異なりますが3~6カ月としているところが多いです。そのため、手続きに時間をかけていると、印鑑証明書の有効期間が切れてしまい、再度、相続人に印鑑証明書の取得をお願いする必要が出てきますので注意が必要です。
  4. 口座名義人の出生から死亡までの戸籍一式と、相続人の戸籍
    相続人を確定するために、出生から死亡までの戸籍一式が必要となります。また、相続人についても、戸籍が必要となります。

なお、法務局で発行する「法定相続情報一覧図の写し」を利用すると、とくに複数の金融機関に対して承継手続きを行わなければいけない場合に、手続きが簡単となりオススメです。
【参照記事:法定相続情報証明制度について】

5.手続きが負担である場合には(当事務所の遺産承継業務について)

預貯金の相続手続きに際しては、戸籍の収集や遺産物協議書の準備のほか、残高調査など必要に応じて各金融機関を往訪することも求められます。

そうした手間や時間を省きたい・少なくしたいという方は、当事務所の遺産整理業務の活用をご検討ください。

口座の名義変更・解約の手続き代行はもちろんのこと、前提となる戸籍の収集や遺産分割協議書の作成も行っています。