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1.数次相続とは
(1)数次相続について
数次相続とは、相続開始後、さらに相続人について相続が発生することを言います。
三島市にお住いのAさんが亡くなりました。
Aさんの相続人は、妻Bさんと、子Cさん・子Dさんの3名です。
Aさんの遺産の分け方について話し合いをしようと思っていた矢先、子Cさんがなくなってしまいました。
Cさんの相続人は、妻Xさんと、子Yさん・子Zさんの3名です。
上記のケースでは、Aさんの相続人であったCさんが亡くなり、Aさんの相続人たる資格が、Cさんの相続人であるX・Y・Zの3名に承継されることとなります。
そのため、Aさんの遺産分割協議においては、つぎの人たちが参加する必要がでてきます。
- 当初の相続人であるB・Dの2名
- 相続人Cの相続人であるX・Y・Zの3名
(2)似ているけれど違うのが「代襲相続」
勘違いしやすいのが、代襲相続との違いです。
三島市にお住いのAさんが亡くなりました。
Aさんには、妻Bさんと、子Cさん・子Dさんがいました。
ところが、子Cさんは、Aさんより3年前に亡くなっています。
Cさんには、妻Xさんと、子Yさん・子Zさんがおり、いずれも存命です。
代襲相続は、相続開始「前」に、本来相続人となる人が死亡してしまったケースで発生します。
いっぽう、数次相続は、相続開始「後」に、さらに相続人が死亡し、その相続人について相続が発生したケースを指します。
代襲相続と数次相続の違いについては、つぎの項で確認していきましょう。
2.代襲相続との違いに注意
沼津市にお住まいであった母Aさん。
母Aさんが亡くなり、子B・Cが相続人となりました。
なお、子Bには、妻B2、成人した子B3・B4がいるものとします。
(1)数次相続の場合
母Aの相続に際して、相続開始時点ではB・Cともに生存していたものの、遺産分割協議を行う前にBが死亡してしまったというのが「数次相続」です。
B死亡後において、母Aについて遺産分割協議を行う場合には、Bの母Aに関する相続資格が、Bの相続人(B2、B3、B4)に承継されているため、協議に参加するのは次の4名となります。
- 当初から相続人であったC
- 相続人Bの相続人であるB2・B3・B4
(2)代襲相続の場合
母Aの相続に際して、相続開始前にBが死亡していたとしましょう。
この場合には、Bについて代襲相続が発生し、Bに代わって子B3・B4が相続人となります。
母Aの遺産分割協議に参加するのは、次の3名となります。
- 当初から相続人であったC
- Bの代襲相続人となるB3・B4
(妻B2は、代襲相続人とはならず、遺産分割協議に関与しません。)
3.数次相続の注意点(はやめの対応が重要!)
数次相続は、まさにネズミ算式に相続関係が広がっていくので注意が必要です。
上記2の例でみればわかるように、代襲相続においては孫B3・B4が登場するのみでしたが、数次相続においては妻B1も遺産分割協議に関与してくるのです。
世代間の価値観の違いも生じえますし、血族ではない者(B1)も加わることにより、遺産分割協議を円滑にすすめることができない事態も生じえます。
上記2の例では、1次相続(Aの死亡)と2次相続(1次相続人Bの死亡)のみでしたが、さらに深刻な事例では、2次相続が複数発生したり(BだけでなくDも死亡)、3次相続(2次相続人であるB3が死亡)が発生したりして、さらに相続関係が複雑となっていきます。
4.自分たちだけでは遺産承継手続きを進められないときに
(1)遺産承継手続きを放置してしまって数次相続が発生!?
数次相続は、相続発生後、遺産分割協議を行うことなく放置してしまった場合に生じるものです。
司法書士業務においては、何十年にもわたって相続登記を放置したことによって、3次・4次相続が発生し、相続人が数十人に膨れ上がってしまうケースをよく目にします。
相続登記や遺産承継手続きを放置してしまう原因として、つぎのようなことを聞きます。
- どうやって相続登記や遺産承継を進めれば良いのかわからなかった。
- 手続きすべき不動産や預貯金を見落としていた。
- 遺産分割協議に協力してくれない相続人がいた。
(2)対応に困ったら法律専門職に早めに相談しましょう
遺産分割協議について、戸籍を集めたり、遺産承継手続きを行うのが面倒くさいというのであれば、当事務所をはじめとして遺産承継サポートを行っている士業の活用を検討すべきでしょう。
相続人間で揉めてしまい、遺産分割協議が成立しないというのであれば、遺産分割調停や遺産分割審判の活用を検討すべきです。
いずれにせよ、なんとなく遺産分割を放置してしまった結果、次々と数次相続が発生し、いざ承継手続きを行う際に非常に困ったケースをたくさん見てきています。
はやめに法律専門職に相談をし、とるべき対応をとっていただきたいです。