遺産分割前の相続預金の払戻し制度

遺産分割前の相続預金の払戻し制度

2021年1月31日

1.相続預金の払戻し制度について

金融機関が預金名義人死亡の事実を確認すると、預金口座は凍結されてしまいます。

凍結されてしまうと、原則として口座取引が停止し、払戻しや振込みができなくなってしまいます。
これは相続人にとっては困ったことで、たとえば葬儀費用や扶養家族の生活費など、早急に出金したいケースもあるはずです。

凍結された相続預金の払戻しを行うためには、亡くなった預金名義人の相続人全員の同意が必要です。
しかしながら、「相続人のうちの一人が、仕事が多忙で手続きに対応できない。」とか
「甥や姪が相続人となるはずだが、交流がなく、住所や連絡先がわからない。」とか、
相続人全員の同意を得るのが難しいことが多々あります。

そうした場合に活用できるのが「遺産分割前の相続預金の払戻制度」です。

この制度を使えば、相続人のうちの1人が、単独で相続預金の一部払戻しを受けることができるのです。

2.いくら払戻しができるの?

払戻し可能な金額は、法律で決まっています。
次の、いずれか低い金額です。

  • 相続開始の時の債権額の 3分の1×法定相続分
    (注)預貯金債権ごとに判断される。
    (注)「相続開始時の債権額」が基準。
  • 預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額(150万円)

実際の払戻可能金額は、金融機関の数や預金種別(普通預金、定期預金の本数)によって変化してきます。複数口座があると思いのほか大きな金額となりえますし、一つしか口座がないと上限額にひっかかったりと、払戻可能額はケースバイケースです。

3.注意点

第1に「相続放棄」との関係です。
引き出した現金に使用使途によっては、単純承認に該当し、相続放棄ができなくなります。相続放棄を選択する可能性のある方は、注意する必要があります。

第2に、払戻しを受けた預貯金債権については、払戻しを受けた相続人が遺産の一部分割として取得したのと同じ扱いになります。

4.払戻しをするにあたって必要な書類

金融機関ごとに若干異なる点もあるかもしれませんが、一般的に必要とされる書類は以下の通りです。

  • 金融機関所定の申込書
  • 被相続人の出生から死亡の戸籍
  • 相続人全員の戸籍
  • 払戻しを希望する相続人の印鑑証明書
  • 払戻しを希望する相続人の本人確認書類(免許証等)
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