兄弟姉妹の遺産承継と遺言書の必要性

兄弟姉妹の遺産承継と遺言書の必要性

2020年12月21日
守秘義務および個人情報保護の観点から、実際の事案を変更・編集して記載しています。

代襲相続人による預貯金の相続

依頼者はAさん。(三島市在住)
生涯独身であった叔父様が亡くなり、相続人はAさん自身と、Aさんから見て叔父叔母にあたるBさん、Cさんと、Aさんから見て従兄弟にあたるDさんとEさんとFさん。以上の6名。
そもそも叔母様は6人兄弟であったものの、Aさんのお父さんと、Dさんのお母さん、EさんとFさんのお父さんがすでに亡くなっていたため、その下の代の子供たちが相続人となりました(代襲相続といいます。)

相続財産は、預貯金のみでした。
Aさんは、叔父様の老後の世話を、ひとりでずっと看てきました。
一方、他の相続人は、叔父様の世話には関係してこず、にもかかわらず相続資格を持つことにAさんは当初より納得がいっていませんでした。

遺産分割協議の負担軽減に遺言書作成をおすすめします

Aさんが弊所に来所し、まずは事案の聞き取りを行いました。
内容は、上記のとおりでしたので、場合によっては遺産分割がまとまらない可能性があるように思いました。
Aさんからは、弊所に「相続人間の合意のとりまとめをしてほしい」との依頼がありましたが、こうした行為が可能であるのは弁護士さんだけです。
弁護士さんへの依頼も検討してはとお伝えしましたが、まずは自分で話し合いをしてみるということで、その日はお帰りになられました。

後日、Aさんから連絡があり、話合いの結果、他の相続人からは、法定相続分(法律上で決められた相続人の基本的な承継割合)に基づく遺産分割をするよう要求が出たようです。
自身の看護の努力が一顧だにされていないことに、Aさんは納得ができず、本件については、Aさんが知り合いの弁護士さんに依頼し、弁護士さんを介して遺産分割協議を進めることになりました。

兄弟姉妹の相続のケースでは、物理的にも心理的にも、手続き負担が大きくなりがちです。
従い、ご本人が遺言を用意し、遺産分割協議の負担を軽減する(あるいは無くす)工夫が必要であるように思います。
また、本件のように、相続人の一人や、相続人ではない親族が、ご本人の世話を中心的に行っていたというケースも少なくありません。
そうした場合に、中心的に介護していた人の貢献度(寄与)が、遺産分割協議の結果に反映されるかどうかは、相続人全員の意見にかかっているのです。
それであれば、なおさら、ご本人の遺言により、貢献度を財産承継の割合に反映させてあげてはどうなのだろうかと思ってしまいます。

もちろん、ご本人の身体的・精神的状態により遺言書の作成が困難であったケースもあるでしょう。
また、仮に、そうしたハードルがなくとも、今回のケースのように、Aさんから叔父様に「提案する」というのも心理的には難しいのかもしれません。
しかしながら、結論をみると、ある種の「終活の必要性」を考えずにはいられません。