親族後見人の職務

親族後見人の職務

2021年1月11日

以下の記事では、「後見人」とは法定後見(後見・保佐・補助)における支援者を、「本人」とは後見人によって法的なサポートを受ける人を指します。

1.成年後見人の職務

成年後見人の職務は、大きく2つにわかれています。

(1)身上監護~ ご本人の生活環境を整える ~

1つめは、身上監護(しんじょうかんご)です。
これは、ご本人の生活環境を整える仕事です。

ご本人が自宅で生活されているのならば、ヘルパー等の介護サービスや給食サービスを手配して、日常生活を送ることをサポートします。

そして、ご本人の状態が変化し、自宅での生活が難しくなってくれば、ご本人とともに適切な施設を選択し、その施設と入所契約を締結します。

また、施設入所後においても、施設サービスがご本人にとって適切であるかをモニタリングし、必要があれば施設担当者と話し合いを行い、ご本人の生活環境を適切に維持していくことが求められます。

(2)財産管理~ ご本人の財産を適切に管理・利用 ~

2つめは、財産管理です。
これは、ご本人の財産を適切に管理・利用することです。

収入面の管理としては、年金などの収入の管理、医療保険や介護保険が関係する補助制度の適切な利用が挙げられます。

支出面の管理としては、介護サービスや給食サービスへの支払い、公租公課の支払いなどが挙げられます。

また、ご本人が不動産を所有している場合には、それらの管理保全も仕事に含まれてきます。

2.親族後見人と身上監護

親族後見人による身上監護については、専門職後見人(司法書士や弁護士等が後見人に就くこと)に比べれば、関わり合いの深さにおいて、充実した職務がなされることが多いように思います。

一方で、必要な介護サービスの選択、適切な入所施設の決定、各種補助制度の活用など、専門的に後見職務を行っている専門職に比べて、情報面で少しだけビハインドがあるケースが、稀に見受けられます。
このあたりを、補うように日ごろから留意が必要かもしれません。

ケアマネジャー、社会福祉協議会、地域包括支援センターなどとの繋がりづくりが大切です。

3.親族後見人と財産管理

親族後見人による財産管理については、専門職後見人に比べると、課題を指摘されるケースが多いと聞きます。

とはいえ、能力に問題があるわけでは決してなく、後見人として求められている財産管理の内容を一度把握してしまえば、その後は問題なく、後見人としての財産管理を行うことができるように思います。

すべてを列挙できるわけではありませんが、重要と考えるポイントを3点あげさせていただきます。

(1)ご本人の家計簿をつける

第1に「しっかりとした家計簿をつける」ということです。

後見人就任以前に、支援者として関与していた際には、多少大雑把に入出金の管理を行っていたかもしれません。
後見人就任以降は、預貯金だけではなく、手元現金も含めて、しっかりとした収支管理を行う必要があります。

(2)後見人の財産と本人の財産を分離する

第2に、本人財産と自身の財産を完全に分別する必要があります。

出金のしやすさを考えて、ご本人のお金を自分名義の口座に入金して、必要な時に出金して利用するなどといったことは、後見人になってからは論外です。
また、自身の食事代を本人負担としたりすることも問題となりえます。親族が後見人の場合、ご本人や親族の扶養義務との関係で、この財産分別が曖昧になるケースが見受けられます。

(3)ご本人にとって必要な支出を適切に行う

第3に、適切な支出をおこなう必要があります。
後見人はご本人の財産を増やしたり節約したりするのが仕事ではありません。

ご本人にとって必要であれば、金を払って介護サービスなどを締結する義務があります(身上配慮義務といいます。)。

一方で、資産運用や相続税対策などを後見人のみの判断で行うことは、原則として禁止されています。
本人の財産を不必要に減少させるおそれのある行為だからです。
使うべきところには使い、支出してはいけないことには支出しないという判断が求められます。

4.後見監督人が選任されるケースも

以上のように、親族であるといえども、後見人となった以上は「法律が後見人に対して求める職務」をしっかりと行っていく必要があります。

理論的には、親族であろうが、専門職(司法書士や弁護士など)であろうが、後見人として求められていることは変わりがないのです。

そして、後見人としての職務に不十分なところがあれば、家庭裁判所の裁量により、後見人や後見監督人の追加、最悪の場合には「後見人の解任」ということも考えられるのです。