叔父・叔母(おじ・おば)の相続【甥や姪が相続人となる場合】

叔父・叔母(おじ・おば)の相続【甥や姪が相続人となる場合】

2021年1月24日

1.おじ・おばの相続は増加傾向

昨今、当事務所の業務において、甥・姪にあたる方が相続人に含まれる事案が増加しています。叔父・叔母の死亡により、甥・姪が相続人となっているのです。

具体的な内容は様々で、シンプルな相続登記(不動産の名義変更)のご依頼から、遺産承継業務、相続放棄、遺言作成、成年後見など、多岐にわたります

【参照記事:叔父・叔母(おじ・おば)の相続と遺言について】

【参照記事:叔父・叔母(おじ・おば)の介護と成年後見】

おじ・おばの相続に関連したご依頼が増えているのは、「生涯独身で子供がいなかった方」「婚姻はしていたが、子はいなかった方」が増加していることに起因しています。
生涯未婚率、子のいない夫婦の割合のいずれも、ここ数十年にわたり増加傾向で、増加傾向は今後も続くものと思われます。

こうしたことから、「おい・めいにあたる方が、おじ・おばの相続人になった。」あるいは、将来そうした相続が発生することが予想されるという方が、増えているのではないでしょうか。
この記事では、こうした相続のことを「叔父・叔母の相続」と名付け、その特徴を解説していきます。

2.「叔父・叔母の相続」は相続手続きが複雑になりがち

「叔父・叔母の相続」は相続手続きが複雑になりがちがちです。
それは、一言でいえば、相続人が枝分かれするからです。相続手続きのそれぞれの場面で、そのことがどのように影響してくるか見てみましょう。

(1)相続人確定のための戸籍集めが大変

「叔父・叔母の相続」では、集めるべき戸籍が、子が相続人となるケースと比較して多くなりがちです。
それは、まず、次のような戸籍を集める必要があるからです。

  1. 亡くなられた方(被相続人)の出生から死亡までの戸籍が必要。
  2. 被相続人の父母の出生から死亡までの戸籍が必要(ケースによっては、祖父母の死亡の戸籍も必要。)。
  3. 被相続人の兄弟姉妹全員の現在の戸籍が必要。
  4. 被相続人の兄弟姉妹で死亡していた人がいた場合には、その方の出生から死亡までの戸籍と、その子の現在の戸籍が必要。

どうでしょうか。文章にしてみるだけでも「複雑だな」と思われるのではないでしょうか。
相続手続きの入り口である、戸籍調査の段階においても一苦労なのです。

(2)叔父・叔母の産調査が大変

「叔父・叔母の相続」は遺産調査においても、大変です。

これは、亡くなられた方(被相続人)と相続人が別々で生活しているケースが多く、被相続人がどのような資産あるいは負債をもっていたのか相続人がわからないことに起因します。

もちろん配偶者が生存しており、相続人となるケースであれば、それほど苦労はないでしょう。
しかしながら、相続人たる配偶者自身が高齢であったり、正確には被相続人の財産状況を把握していなかったり、認知症等により確認ができないということもあります。

配偶者が既に死亡しており、被相続人が単身生活していたという場合には、被相続人の自宅を捜索するところから遺産調査を開始するということは多々あることなのです。

生活実態が不明であることから、負債の存在を懸念し、相続放棄を検討される方もいらっしゃいます。

(3)遺産分割協議が大変

「叔父・叔母の相続」において相続人となるのは、原則として亡くなられた方の兄弟姉妹です。
そのため、相続人が枝分かれし、話合いをするだけでも大変な労力が必要となります。

くわえて、最近は高齢化が進み、
被相続人が90歳代で亡くなると、相続人である兄弟姉妹も同じような年代となるため、既に死亡していて代襲相続が発生したり、認知症等で話し合いができないという方がいるケースが多いのです。
認知症等で話し合いができない場合には、成年後見人等の選任を裁判所に申し立てる必要があります。

さらに、既に死亡している兄弟姉妹がいる場合は、その子(甥・姪)が代襲相続人として遺産分割協議に参加することになります。
世代の違う相続人(叔父・叔母と甥・姪)が遺産の分割方法について話し合うこと、あるいは普段全く付き合いのない相続人(甥・姪同士が交流のないケース)が遺産の分割方法について話し合うことが求められます。

いわゆる「争続」ではないものの、不動産や預貯金を分割する話合いをどのように進めれば良いのか、戸惑う方は非常に多いと思います。

3.遺言の効用(=遺産分割協議の省略)

以上のように、「叔父・叔母の相続」においては、相続手続きが複雑となりがちです。

この問題を解消する方法の一つが、生前に叔父・叔母に遺言を作成してもらうことです。
遺言によって、財産全ての帰属先を決めてもらえば、遺産分割協議を行う必要はありません。

また、甥・姪・が叔父・叔母の相続人となるケースでは、いわゆる「遺留分」の問題が生じません。
「遺留分」とは、法律上認められた相続人の最低限の取り分を保障する制度ですが、これは「叔父・叔母の相続」には適用されません。
したがって、正しく遺言をのこせば、100%そのとおりに遺産承継がなされるのです。

とくに配偶者が相続人となるケースでは、遺産分割協議をしたところで、結論としては「配偶者の方が100%遺産を相続する。」というような内容になることがほとんどではないでしょうか。
それであれば、「全財産を妻に相続させる。」というようなシンプルな遺言を作成するだけで、上記のような複雑な相続手続きを大幅に省略することができます。
【参照記事:シンプルな遺言について】

遺言の作成は、「叔父・叔母の相続」においては、遺す方(叔父・叔母)にとっても、受け取る側(相続人)にとっても、非常にメリットのあるものなのです。

4.当事務所(沼津の司法書士貝原事務所)について

私ども司法書士貝原事務所は、沼津・三島をはじめとする静岡県東部地域を中心に活動する司法書士事務所です。

司法書士2名が所属しており、相続・遺言・登記・成年後見などの司法書士サービスを提供しています。

今回の記事でご紹介しました「叔父・叔母(おじ・おば)の相続【甥や姪が相続人となる場合】」に関しては、遺言の効用が非常に大きいにもかかわらず、そのメリットに気づかないままに、相続を迎えるケースが多々あります。

当事務所では「遺言がない状況での叔父・叔母(おじ・おば)の相続手続き」をサポートする業務も行っています。

そうした遺言のない相続手続きにおいては、つぎのような問題が発生することが多いのです。

  • 相続人が多く、遺産分割協議にたどり着くまでが大変。
    そして、その先の相続人の合意形成(遺産分割協議)も大変。
  • 相続人のなかに認知症(成年後見の必要性)や音信不通(遺産分割調停や不在者財産管理人)の人が含まれるために、手続きをスムーズに進められない。
  • 結局、叔父・叔母の面倒を近くで見た人が、相続の場面においても非常に大きな苦労をする。

ご自身が「叔父・叔母」として、これから相続を迎える方。

甥・姪として「叔父・叔母」の面倒を見ている方。

それぞれにおいて「遺言の作成」は、是非とも検討してほしいことがらです。
そして、その検討の際には、司法書士をはじめとした法律専門職の知識・経験をご活用ください。