不動産売却にあたり、成年後見人の選任を求められた場合

不動産売却にあたり、成年後見人の選任を求められた場合

1.「成年後見制度を利用して不動産を売却してください」と言われたら?!

(ケース)
Aさんは、母親Bさんの介護費用を捻出するため、Bさんの所有する不動産を売却したいと考えています。
ところがBさんは重度の認知症で、自ら売買契約の当事者になることはできません。
どうしようかと近所の不動産屋さんに相談しに行ったところ、「成年後見制度を利用してください」と言われました。

2.成年後見制度について

認知症等の影響により、法的判断能力が不十分な場合には、自ら不動産売買契約を締結することはできません。そして、子供だからといって、親の財産を勝手に売却できるわけでもありません。

法的判断能力が不十分な方に対しては、成年後見制度を利用し、成年後見人等を選任します。選任された後見人等が、ご本人に代わり代理人として売買契約を締結します。

なお、成年後見制度については、任意後見と法定後見があり、かつ法定後見についてはサポート権限の範囲により「後見」「保佐」「補助」の3類型に分類されます。この記事では、法定後見の後見類型に焦点をあててご説明します。

3.まずは成年後見人の選任を申立てる

成年後見人を選任するには、まず家庭裁判所に対して選任の申立てをします。
申立てをする資格がある者は法律上限定されており、代表的な人には「配偶者」「4親等以内の親族」がいます。
申立てを受けて、家庭裁判所は成年後見人を選任します。この際、医師からの診断書を添付し、基本的にはこれに基づいて上記の3類型のいずれに該当するか判断します。

また、申立に際しては「後見人候補者」を記載することができるので、候補者欄に親族を記載することもできます。後見人を誰にするかは、最終的には家庭裁判所が決定することですが、後見人になるために法的な資格は要求されないので、事案によっては候補者欄に選任された親族が後見人となることも可能です。

【参照記事:後見人選任の申立てについて】

【参照記事:親族が後見人となることについて】

4.不動産によって手続きが分かれる

選任された成年後見人は、まず自ら調査して不動産売却の必要性・相当性を検討します。

ここで注意したいのは、売却する不動産が「居住用不動産」である場合には、売却にあたって家庭裁判所の許可が必要となるということです。居住用不動産であるにもかかわらず、家庭裁判所の許可を得ないで売却してしまった場合には、売買契約自体が無効となります。

「非居住用不動産」については、家庭裁判所の許可は不要であるものの、重要財産の処分に該当するため、事前に家庭裁判所と協議して「根回し」をしたうえで売却手続きを進めるのが実務的な対応となっています。

【参照記事:後見人による居住用不動産の売却について】

【参照記事:後見人による非居住用不動産の売却について】

5.不動産売却が完了しても後見業務は継続

必要なステップを踏んで、後見人によって不動産売却が完了しても、そこで後見制度の利用が終了するわけではありません。後見制度は、ご本人にとって必要な限りは継続するため、認知症等が回復するか、あるいはご本人が死亡するまで継続することになります。

親族が後見人となっているケースでは、後見人としての業務を継続することが必要となりますし、専門職後見人が就任しているケースでは、専門職後見人の報酬が発生してきます。

【参照記事:専門職後見人の報酬について】

6.最初の事例の解決策

Aさんは、あらためて司法書士事務所に相談に行き、後見人選任の申立てを行うことにしました。
申立てにあたっては、司法書士から後見人の職務内容や責任について十分な説明を受けたうえで、Aさん自身を候補者として記載することとしました。
結果として、Aさんが後見人に選任され、さっそく不動産売却の手続きを始めることになったのです。

売却を予定していた不動産は、Bさんの居住用不動産に該当したため、司法書士のサポートも受けながら「居住用不動産の売却許可」を家庭裁判所から得たうえで、AさんがBさんの成年後見人として売買契約を締結し、無事、不動産を売却することができました。

売却によって得たお金は、Aさんが成年後見人として管理するBさんの口座に入金し、また不動産売却後も、Aさんが成年後見人として、Bさんの財産管理・身上保護を行っていくこととなります。

【参照記事:司法書士による後見サポートについて】