代襲相続について(相続を大変にさせる原因!?)

代襲相続について(相続を大変にさせる原因!?)

2021年5月1日

1.代襲相続とは

(1)「代襲相続」の基本

代襲相続とは、本来相続人となるべき人が被相続人よりも先に死亡していた場合に、特定の人が、その相続人に代わって相続資格を受け継ぐことをいいます。
相続資格を受け継いだ人のことを代襲相続人といいます。

代襲相続は、死亡のほか、廃除(被相続人の請求によって相続資格を奪うこと)や欠格(特定の事項に該当して相続資格を失うこと)により相続資格を喪失した際にも生じえます。

一方で、相続放棄をした場合には、代襲相続は発生しませんので注意が必要です。

(2)代襲相続が引き起こす「相続手続きの大変さ」

多くのケースにおいて、相続人となるのは「配偶者」「子供」「親」「兄弟姉妹」のいずれかです。

ところが、代襲相続が発生すると「子供+孫」「兄弟姉妹+甥・姪」となります。
そのため、つぎのようなことが起きます。

  • 世代の異なる相続人が登場することで、遺産分割協議が難しくなる。
    (世代が異なると「相続」「財産」に対する考え方が違ってきます。)
    (また亡くなられた方との関係性が、相続人同士で大きく異なってきます。)
  • これまで交流が少なかったり、もっと言えば面識のない人同士で、遺産分割協議をしなければならない。
    (遺産分割協議を行うために、連絡をとるのも一苦労であることも。)

このように、代襲相続には、相続手続きを複雑にさせる要素が含まれているのです。

そのため、代襲相続が生じている(または生じる可能性がある)のならば、相続準備・相続対策が重要になるのです。

2.子について代襲相続が発生する場合

(1)孫やひ孫が代襲相続人となる

本来相続人となるはずの子が、被相続人よりも先に死亡していた場合、その子に子(被相続人から見た孫)がいれば、その子の子(被相続人の孫)が代襲相続人となります。
(民法では「被相続人の直系卑属であること」という記載になっています。養子縁組を行った場合などに問題となりますが、詳細については難しい話となるため省略します。兄弟姉妹の代襲相続についても同様です。)

ちなみに、子だけでなく孫も死亡し、曾孫(ひまご)がいるというケースでは、この曾孫がさらに代襲して相続人となります。
再代襲といいますが、これは子が相続人の場合にのみ認められるもので、兄弟姉妹については、再代襲はありません。

(2)相続人にとっては叔父・叔母と甥・姪の話合いに

子について代襲相続が発生したケースを考えると、たとえば次のようなケースが想定されます。

モデルケース

亡くなられた方:Aさん

相続人: Aさんの子BさんとCさん。
(ただし、CさんはAさんより先に死亡している。)

代襲相続人:Cさんの子であるDさんとEさん。

このケースだと、Aさんの遺産に関する話合い(遺産分割協議)は、Bさん・Dさん・Eさんによる話し合いとなります。

Bさんからみれば、D・Eさんは甥姪にあたるはずで、世代としても「1つ下」ということになります。

皆さんも、ご自身のこととして考えてみると、なんとなく気まずい感じがするのではないでしょうか。

3.兄弟姉妹について代襲相続が発生する場合

(1)甥や姪が代襲相続人となる

本来相続人となるはずの兄弟姉妹が、被相続人よりも先に死亡していた場合、その兄弟姉妹に子(被相続人から見た甥・姪)がいれば、その兄弟姉妹に子(被相続人の甥又は姪)が代襲相続人となります。

兄弟姉妹については、この場合と異なり、再代襲はありません。

(2)この場合も、相続人にとっては叔父・叔母と甥・姪の話合いに。

モデルケースはあげませんが、この場合においても、一世代の差がある相続人の話合いとなります。

また、具体的な親族関係にもよりますが、亡くなられた方(被相続人)と相続人たる甥姪の関係性が、子について代襲相続が発生した場合と比べて希薄なケースが少なくないです。

子について代襲相続が発生した場合には「おじいちゃんやおばあちゃんの相続」ですが、兄弟姉妹について代襲相続が発生した場合には「おじさんやおばさんの相続」となるからです。

4.代襲相続が起こる場合の注意点

(1)遺産分割手続きを慎重に進める必要性

代襲相続が起きる場合には、相続人間で世代の違いが生じるため、遺産分割協議を進めるにあたり慎重な対応が必要となるケースがあります。
あらためてポイントを確認しましょう。

  • 相続人の中で、被相続人との関係性が大きく異なる点に配慮を。
    (上記の例でいえば、親と子として相続関係に立つ人と、親と孫として相続関係に立つ人が混在することに。)
  • 相続人の中で世代が異なるため、相続や遺産に対する考え方に相違が生じがちな点に留意を。
    (価値観やジェネレーション・ギャップには要注意です。)

相続人が子供同士というのであれば、なんとなくで遺産承継手続きを進めても良いかもしれません。
一方で、上記のように異なる世代間で遺産分割協議をおこなうケースでは、慎重に正確に遺産承継手続きを進めるべきといえます。

【参考記事:【事例で考える】おじ・おばの遺産承継手続きと遺言のススメ】

(2)そもそも遺産分割協議すら難しいケースも

これまで代襲相続が含まれるケースでは「遺産分割協議を慎重に進めていきましょう。」ということを述べてきました。

くわえて、代襲相続においては、これ以上に困ったケースが考えられます。

それは、相続人同士に交流がなく、面識がない(または面識はあるものの数十年あっておらず)、そのため連絡先すらわからないというケースです。

こうした場合には、まずは相続人調査からはじめる必要があり、遺産分割協議の実施にあたっは、より慎重な準備が必要となります。

(3)遺言などの相続準備の検討を

このような理由から、代襲相続が含まれる相続においては、遺言などの相続準備が求められるケースがあります。

とりわけ、上記(2)の遺産分割協議すら難しいケースにおいては、遺言を用意して遺産分割協議を省略するメリットが大きいのです。

【参考記事:叔父・叔母(おじ・おば)の相続と遺言について】

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