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1.曾祖父・曾祖母名義の不動産を相続する?!
(1)曾祖父・曾祖母名義の不動産の不動産は少なくない
【先祖代々の敷地上に新たに家を建てるケース】
沼津市に在住のAさん。
実家の敷地内に、自分たち夫婦の家を新築することに。
住宅ローンを利用しようと手続きを進めていたところ、敷地の一部が、自分の曾祖父名義であることが判明しました。
このままでは住宅ローンのための抵当権が設定できないため、住宅ローンの利用ができなくなる可能性が・・・。
【祖父母・父母の相続手続きのなかで見つかるケース】
三島市に在住のBさん。
司法書士に依頼して、亡くなった母の相続登記の手続きを行っていました。
司法書士が周辺不動産の状況を確認しているで、敷地の一角に、曾祖母名義のままの土地があることが発覚しました・・・。
(2)見つけたら早めの対応を!
曾祖父・曾祖母名義の不動産(とりわけ土地)が見つかったときには、早めに司法書士に相談することをオススメします。
「早めに」と記載したのは、時間が経過するにつれて、原則として手続きの難しさは増していくからです。
そもそも、土地の相続登記(相続による名義変更)を行う際には、現在の相続人の署名押印・印鑑証明書が必要となってきます。
そして時間の経過は、相続登記の手続きにとって、つぎのようなマイナスの影響を及ぼします。
- 相続人に更に相続が発生し、相続関係が枝分かれしていく。【相続関係の複雑化】
- 相続関係の枝分かれに伴い、親族同士の交流が少なくなっていく。【親族関係の希薄化】
具体的な内容は、次項でご紹介します。
(3)「相続登記の義務化」との関係
2024年4月1日からは、相続登記の義務化がスタートします。
すでに相続が発生している不動産についても、義務化の対象となっていることに注意が必要です。
制度スタートから3年間の猶予期間が設けられていますが、法律上、その猶予期間内に相続登記をすることが求められています。
相続登記の義務違反に対しては、条文上、10万円以下の過料(罰金のようなもの)が科されることになっていますが、実際にどこまで過料が科されるのかは現時点では不明です。
ただし、曾祖父・曾祖母名義のママになっている不動産についても、形式的には「相続登記の義務化」の対象になることに留意しましょう。
2.曾祖父・曾祖母からの名義変更(相続登記)の流れ
(1)大きな流れは一般の相続登記と同じ
曾祖父・曾祖母からの相続登記についても、名義変更の手続きの流れは、一般的な相続登記の手続きと大きくは変わりません。
- 戸籍調査による相続関係の確認
- 対象となる不動産の確認
- 相続人全員による遺産分割協議の実施
- 協議結果に基づいた相続登記(相続による名義変更)
ただし、曾祖父・曾祖母の相続登記においては、つぎの2点が、通常の相続登記とは大きく異なる可能性があります。
- 相続関係の確認
- 遺産分割協議の実施
つぎの項目で詳しく見ていきましょう。
(2)相続関係の調査が大変!【相続関係の複雑化】
曾祖父・曾祖母のような、いわゆる「ご先祖様」からの相続登記においても、通常の相続登記と同様に、戸籍調査による相続人の確定が必要となります。
戸籍調査とは、要するに、つぎのような作業をすることを言います。
- 登記名義人である曾祖父(または曾祖母)の出生から死亡までの戸籍を集める。
- 出生から死亡までの戸籍をみて、相続人を確定し、その相続人の戸籍を集める。
調査の結果、子どもがいれば、その方が相続人ということになりますが、ご先祖様からの相続においては、相続人が更に死亡しているケースがほとんどです。
その場合には、さらに次のような作業を行います。
- 相続人であった人が更に亡くなった場合、その相続人の出生から死亡までの戸籍を集める。
- 出生から死亡までの戸籍をみて、「相続人であった人」の相続人を確定し、その相続人の戸籍を集める。
こうした相続の形態を「数次相続」といいます。
【参照記事:数次相続について】
親族関係によっては、戸籍調査をした結果、現在の相続人が30人となることも少なくありません。
(3)遺産分割協議が大変!【疎遠な親族との協議】
関係する相続人の人数が多くなるということは、それだけ遺産分割協議を実施することも大変となります。
遺産分割協議が大変になるというのは、さらに細かく整理すると、つぎのことを指します。
- 関係する相続人に連絡を取るだけでも一苦労(電話番号がわからなければ、まずはお手紙から。)
- 連絡が取れたとして事情説明するのに一苦労
(遠縁であれば、ご自身が相続人になる理由がわからない方も。) - 「遺産の分け方」について協議を行うのに一苦労
- 話合いがまとまったとして、遺産分割協議書に実印を押してもらったり、印鑑証明書を提出してもらったりで一苦労
身近な親族同士でも、なにかと苦労することが多い遺産承継手続きを、親族とはいえ、さほど親密ではない親族と進めていくのは非常に困難といえます。
3.手続きが簡単になるケース(過去の遺言・遺産分割協議書)
(1)過去に作成された遺言書が残っている場合
ここまでは、「相続人による遺産分割協議をおこなう」ことを前提に説明を行ってきました。
しかしながら、すべての相続手続きにおいて遺産分割協議が必要となるわけではありません。
その代表例が遺言が残されている場合です。
適式な遺言が残されており、その遺言において遺産を承継する相続人等が指定されていれば、その遺産は遺産分割協議を経ることなく相続人が取得することになります。
そして、遺言書に有効期間はありませんから、曾祖父や曾祖母が遺言をのこしていれば、その遺言書に基づいて相続登記ができる可能性もあるのです。
(2)過去に実施された遺産分割協議書が残っている場合
また、遺言があるケースのほかにも、過去に「遺産分割協議」は成立しており、たんに相続登記を忘れていただけというケースもあります。
当時の遺産分割協議書が残っていて、かつ遺産分割協議書に押印されている印鑑の印鑑証明書があれば、それをもとに相続登記ができることもあります。
相続登記においては、印鑑証明書の有効期間は問題にならないため、50年前の遺産分割協議書(と印鑑証明書)であっても、形式が整っていれば、それに基づいて登記手続きを進めることができるのです。
実際、当事務所の取扱い事例でも、曾祖父の遺産分割協議書、祖父の遺産分割協議書を利用して亡父名義に相続登記したうえで、父の相続についてのみ遺産分割協議をおこなって更に相続登記をしたというケースもありました。
4.曾祖父・曾祖母からの名義変更が難しくなるケース
曾祖父・曾祖母名義の不動産の相続登記においては、つぎのような理由で、相続登記が進まなくなることが度々生じます。
- 認知症や行方不明者など協議に参加できない相続人がいる
- 連絡をしても応答してくれない相続人がいる
- 遺産分割の合意をしてくれない相続人がいる
曾祖父・曾祖母名義の相続登記においては、手続きに参加すべき相続人の人数が多くなります。
そして、相続人の人数が多くなればなるほど、上記のような相続人が含まれる可能性が高くなるのです。
上記のような相続人がいると、相続人同士の話合いだけでは遺産分割協議をまとめることができません。
それぞれの原因にあった、解決手段を選択し、課題を解消する必要があります。
こうした解決手段には、家庭裁判所における遺産分割調停・審判が含まれているのですが、この調停・審判については、つぎの項で確認していきましょう。
【参照記事:相続人に判断能力が十分でない方が含まれる場合の遺産分割協議】
5.遺産分割協議が整わないときには(調停・審判の利用)
(1)遺産分割調停の申立て
遺産分割調停は、相続人同士での話し合いがまとまらない場合に利用する「家庭裁判所」における法的手続のことです。
裁判官や調停委員2名がサポーターとして相続人の話し合いに参加し、相続人同士での合意成立を目指す手続きです。
裁判手続きといっても、最終的には調停成立のために相続人全員の合意が必要となるので、合意が成立しないときには「審判」手続きに移行することになります。
(2)弁護士の利用を検討するべきケース
遺産分割調停や審判は、家庭裁判所における手続きです。
調停も審判も、当事者となるご本人が出席して手続きを進めることができます。
しかしながら、調停や審判は、法律や過去の裁判例などの法的知識を参照しながら課題解決するものです。
また、ときとして遺産分割調停や審判は、親族間の熾烈な感情対立の場となります。
弁護士に依頼するということは、もちろん弁護士費用という少なくないお金がかかるものではありますが、法的知識に則した主張をすることで合理的な解決にスピーディに到達する可能性が高まるでしょう。
くわえて、とりわけ「争族」(相続人間での争いがある相続)においては、感情面での負荷から解放されることにもなりますし、そのことが課題解決にとってもプラスになると考えます。
6.曾祖父・曾祖母からの名義変更と当事務所
(沼津の司法書士貝原事務所)
(1)沼津の司法書士貝原事務所のご紹介
当事務所は、沼津市内に2か所の事務所をおく司法書士事務所です。
多くの相続登記(相続による不動産の名義変更)を扱っており、そのなかには当然ながら、曾祖父・曾祖母名義からの相続登記も含まれています。
(2)曾祖父・曾祖母からの名義変更の特徴
曾祖父・曾祖母からの名義変更においては、ここまでで確認したように、通常の相続登記の手続きに比べて、多くのハードルが存在します。
そうしたハードルをクリアするために、当事務所の法的知識や実務経験をご活用ください。


