「遺産分割の方法を指定した理由を伝える」ための付言事項

「遺産分割の方法を指定した理由を伝える」ための付言事項

相続・遺言

1.付言事項とは

付言事項とは、遺言者の思いや希望などを伝達するため遺言書に記載する「法的効力を持たない事柄」を指します。通常、遺言書の末尾に記載します。
一方で、「遺産分割の方法」や「死後認知」など、遺言により法的な効力を発生させる事項のことは「遺言事項」といいます。遺言事項は法律で決められています。
付言事項について、詳しくは、以下の参照記事をご覧ください。

【参照記事:付言事項について(総論)】

2.遺産の分け方について理由・必要性を伝える

(1)意味合い

遺言によって「遺産分割の方法」を定めた場合、相続人はこれに拘束されます。遺言がなければ、相続人同士の話合い(遺産分割協議)によって相続財産の承継者を定めることになるので、相続人にとっては大きな影響を及ぼします。
とりわけ、遺産分割方法を遺言で定めたことにより、期待していたものよりも少ない遺産しか受け取れなかった相続人は、気持ちの面でもモヤモヤしたり、場合によっては怒りを感じることもあるかもしれません。
特定の相続人には法律によって「遺留分」が保障されており、モヤモヤや怒りを感じた相続人は、もしかすると遺留分侵害額について他の相続人に請求をするかもしれません。

そうした、残された相続人のモヤモヤや怒りをゼロにすることはできませんが、付言事項において「どうして、このような遺産分割の方法を指定したのか。」「どうして、このような分割方法にする必要があったのか。」を遺言者が示してあげれば、いくからはマイナスの感情を抑えることができるかもしれません。

(2)付言事項の記載例

具体例がないとイメージがわかないと思いますので、以下のような付言事項の例を考えてみました。実際の事案では、もっと簡潔にしたり、逆に多く記載することがあるかと思いますが、サンプルとして見ていただければと思います。

  • たとえば「自社株式を特定の相続人に承継させた場合」
    今回、自社株式については二男○○に全て相続させることにしました。結果として、長女○○や長男○○の受取る遺産は、二男に比べれば少ないものとなってしまいます。
    その理由を説明します。
    二男は、はやくから○○会社の経営に参加し、最近は、私に代わって経営のかじ取りをおこなっていました。おかげで、一時期の経営危機も脱却することができました。しかしながら、まだまだ小さな会社であり、決して楽な経営状態ではありません。それを考えると、会社の株式については、二男○○に集中させることが、経営安定のためには必要不可欠だと考えて、このような遺言としました。
  • 農地や農業器具を特定の相続人に承継させた場合
    今回、農地や関係する設備については、すべて孫○○に相続させることにしました。その理由を説明します。
    長男○○が若くして亡くなった後、孫○○が農家を継いでくれたことには本当に感謝しています。農業は自分の代で終わりだと思っていたので、うれしく思った反面、苦労をかけることに申し訳なさもあります。
    農家を引継ぐためには、農地だけでは足りません。倉庫やトラクターなども必要不可欠であり、これらをまとめて孫○○に相続させる必要がありました。結果として、遺産の分け方に偏りがでることについては、長女○○・二男○○とは話をしていますが、あらためて、納得してくれるようお願いしたいです。