相続人がいない場合について(相続財産管理人)

相続人がいない場合について(相続財産管理人)

2021年5月1日

1.相続人がいない場合

ある方が亡くなられた際に、相続人が存在しない場合にはどのようになるのでしょうか。
また、相続人がいたものの、相続資格のある方全員が相続放棄した場合にはどうなるのでしょうか。

こうしたケースは「相続人不存在」の状態となり、相続財産管理制度により遺産の清算が行われます。

2.相続財産管理制度(=遺産の清算)

相続財産管理制度は、相続人が存在しないケースで活用されます。

ただし、自動的に制度利用が開始するわけではなく、特定の人が家庭裁判所に「相続財産管理人の選任」を申立てることによってスタートします。

裁判所によって選任された相続財産管理人は、①相続人の捜索、②相続財産の調査、③相続財産の清算を順番に行います。

3.特別縁故者の有無を調査

相続財産管理人は、相続財産の清算を行います。「清算」とは、プラスの財産とマイナスの財産を精査し、マイナスの財産(つまり借金などの債務)を解消することをいいます。

清算してもなお、プラスの財産が残った場合には、この財産を「特別縁故者」に対して分け与えることができます。

ただし、特別縁故者は家庭裁判所が認定するもので、かつ分与される財産も家庭裁判所が決定します。
また、特別縁故者に該当すると考える人は、家庭裁判所に対して、自らが分与を請求する必要があります。

4.最終的には国庫に帰属

以上の手続きを経てもなお、相続財産が余る場合には、余った財産は国庫に帰属します。

つまり、国のものになってしまうのです。

5.遺言の効用(法律専門職の活用を!)

以上の説明は、亡くなられた方に相続人がおらず、かつ遺言もなかった場合に適用されるものです。
亡くなられた方が遺言を残していれば、相続財産の処分は遺言に従って行われます。

「国庫に帰属するくらいなら、特定の人・団体に財産を遺贈したい。」とか「お世話になった相続人ではない親族に財産を承継させたい。」という場合には、遺言の作成を検討しましょう。

また、相続人がいない場合には、遺言執行者の定めなど遺言作成にあたって、通常よりも慎重な検討が必要となります。そうした場合には、是非とも当事務所をはじめとした法律専門職への相談を検討いただきたいです。

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