「成年後見関係事件の概況」からみる成年後見制度

「成年後見関係事件の概況」からみる成年後見制度

成年後見

1.「成年後見関係事件の概況」とは

毎年3月くらいに、最高裁判所事務総局家庭局から、前年中の成年後見関係事件の処理状況に関する統計資料が発表されています。
今回は、この「概況」を見ながら成年後見制度の現状をみていきます。

2.申立件数について

(1)

申立件数は合計で37,235件。前年比約3.5%の増加となっています。
類型ごとにみていくと、「後見類型」は前年並みとなっている一方、「保佐・補助」類型が増加しています。

(2:弊所コメント)

法定後見は「後見・保佐・補助」と3類型用意されているのですが、以前はほとんどが後見類型となっていました。現在は、類型判断を細かく丁寧に行うこと、制度利用のすそ野が広がっていることから、「保佐・補助」類型の割合が増加傾向となっています。

3.審査期間について

(1)

利用開始の申立てをしてから後見人の選任等により申立手続きが完了するまでの期間は、2か月以内に完了するものが全体の約70.1%となっています。

(2:弊所コメント)

弊所での取扱事例においては、申立書類作成のご依頼から裁判所での選任手続きの完了するまで、平均して2カ月半から3カ月くらいかかるという印象です。

診断書の取得や財産に関する基礎資料の収集など、どうしてもご依頼主で対応していただく作業があることから、至急での対応が必要な場合には、早めに司法書士等にご相談ください。

なお、申立人たる親族が自分自身を後見人候補者として申立てる事案においては、申立書類の内容もまた「候補者となっている親族が後見人等として適格か否か」家庭裁判所が審査する対象となってきます。
後見人としての、財産管理・身上保護を全うできると思われるような申立書類の作成が必要になることから、十分な準備をして、また司法書士等専門職の助けも借りながら、手続きを進めるべきと考えます。

4.申立人とご本人との関係について

(1)「市区町村長による申立て」が最多に!

申立人とご本人との関係については、「市区町村長による申立て」が最も多く全体の約23.9%となりました。続いて「子による申立て」が約21.3%、「ご本人による申立て」が約20.2%となっています。
一昨年の概況においては、「子による申立て」が最も多かったものの、「市区町村長による申立て」が肉薄していました。今回は、ついに「市区町村長による申立て」が最多となっています。

(2:弊所コメント)「市区町村長による申立て」とは

そもそも後見等開始の申立ては、申立権限が本人、配偶者、4親等以内の親族などに限定されています。
そうしたなか「市区町村長」についても、公益上の必要性から申立権限が与えられています。
実務上は、申立をしてくれる親族がいない(親族がいても協力的でない場合も含む)、親族から虐待を受けているといったケースで「市区町村長による申立て」が利用されています。
最近では、申立をしてくれる親族がいないケースの増加が顕著で、弊所においても「市区町村長による申立て」を利用するお手伝いをしたり、「市区町村長による申立て」事案において後見人等に就任したりしています。
「市区町村長による申立て」においては、上述のようにニーズは年々増しているものの、対応する市町において、マンパワーやノウハウなどの不足によって、相談から申立てまで非常に時間がかかるケースが散見されます。この点については、対応・改善を進める市町と、そうではない市町とで非常に大きな差が生まれてしまっているのが現状です。

5.申立ての動機について

主な申立ての動機は、「預貯金の管理・解約」が最も多くなっています。続いて、「身上保護」が続きます。
このほかにも、介護保険契約や不動産の処分、相続手続きが動機として多くなっています。

なお「身上保護」とは、医療や介護サービス等の契約・変更、老人ホームなどの介護施設への入退去に係る手続きなど、ご本人の生活・療養看護を整えることを指します。

6.成年後見人等と本人との関係について

(1)親族、親族以外の区別

全体の約80.3%が親族以外となっています。
この数字をみると「親族は後見人にはなれないのか」と疑問におもう方もいらっしゃるかもしれません。
しかしながら、後見人の選任は、申立人が挙げる「候補者」か、裁判所の名簿に記載された専門職に限定されます。そのため、親族が後見人となるには、すくなくとも選任申立てに際して「候補者」として記載されていなければなりません。そして、親族が候補者となっているケースは全体の23.6%なのです。
そうしてみると、単純に数字のみの比較することにはなりますが、親族が選任されるのが全体の約19.7%となっていることから、候補者として親族をあげているケース(23.6%)の多くでは、候補者たる親族がそのまま後見人等選任されているものと推測されます。

(2)親族の内訳

内訳は、「子」が54.0%、「兄弟姉妹」が14.0%、「その他親族(甥・姪など)」が17.0%となっています。配偶者7.8%は、親は7.1%となっています。

(3)親族以外の内訳

弁護士、司法書士、社会福祉士が専門職としての取扱を受けていますが、順番に26.2%、37.9%、18.4%となっています。

7.後見監督人等が選任された事件数について

後見等開始時のうち後見監督人等が選任された事件数は1,138件であり全体(全体34,520件)の約3.3%となっています。
内訳としては、弁護士503件、司法書士490件、社会福祉協議会102件となっています。

近年は、親族後見人の選任が増加しています。これにともない、法的課題への対応や、財産管理面での助言・指導を目的として、後見監督人が選任されるケースもまた増えているように思います。弊所でも、裁判所からの監督人就任以来を目にする機会が顕著に増加しています。

8.まとめ

以上が「概況」で紹介されている事項となります。
成年後見制度の利用が増加するなか、裁判所の対応方針は、日々変化しています。
後見制度の利用にあたっては、制度の現状を良く把握した、司法書士等の専門職に相談しながら手続きを進めることをオススメします。