農地の売買について

農地の売買について

2021年5月31日

1.農地法との関係

(1)農地の売買と農地法

農地を売買する場合、「農地法」という法律による許可が必要となります。

この許可の手続きは、基本的には各市町の農業委員会が窓口となっており、農業委員会に所定の申請をして進めていくことになります。
許可の要件は厳密に定められており、対象となる農地が特定の区域にあると、それだけで「不許可」となることもあります。
農地は、それだけ厳重に保護されているのです。

(2)農地の売買による名義変更(所有権移転登記申請)について

許可がなくとも個人間で売買契約を締結することはできますが、農地の所有権移転の効力は発生しません。

そのため、許可なしに所有権移転登記(売買による名義変更)をすることはできません。

法務局では、登記された地目が「農地」である場合には、農地法所定の手続きが済まされているかを確認します。
確認の結果、「農地法の手続きに不備」ということが判明すれば、所有権移転登記申請は却下されることになります。

2.農地のまま売買(農地として利用)

農地を、農地として利用する目的で売買する場合、農地法3条の許可が必要となります。
許可の条件としては、主につぎのようなものがあります。

  1. 耕作する農地の全部を効率的に利用すること
  2. 権利を取得する者またはその世帯員等が、農作業に常時(原則、年間150日以上。)従事すること。
  3. 下限面積以上の農地を経営すること
  4. 周辺農地の利用と調和すること

とくに2点目に注目してほしいのですが、農地の売買の場合には、買い手の耕作能力も必要となってくるのです。

3.転用して売買(農地以外の目的で利用)

農地を、農地以外の方法で利用することを目的として売買する場合、農地法5条の許可が必要となります。
許可の条件としては、「立地基準」「一般基準」という2つの基準があります。このうち「立地基準」については、農地の種類によって定められているものです。

農地の種類については、別記事にまとめていますのでご参照ください。
【参照記事:農地法の種類と許可の方針について】

「一般基準」のうち代表的なものは以下のとおりです。

  1. 転用目的どおりに確実に土地が使用されると認められること。
  2. 周辺農地の農地経営に影響(土砂の流出や排水など)を与えるおそれがないこと。
  3. 一時的に農地を農地以外に利用する場合には、利用後に確実に農地に復元すること。

従って、そもそも「立地基準」で門前払いされるケースもありますし、立地基準を満たすとしても、上記の一般基準を満たすような申請でなければ「不許可」ということになります。

4.許可ではなく届出で良いケース

これまでの説明では「許可」を取得しなければならないと説明してきましたが、許可ではなく「届出」で足りる場合があります。

その代表例が、「市街化区域内の農地」である場合です。
市街化区域内の農地の場合には、転用や転用を伴う権利移転の場合においても、許可ではなく届出で足りることとなっています。
なお、届出といっても紙切れ一枚を提出すればOKというようなものではなく、各市町で定められている「届出書+添付書類」が必要となりますので、ご注意ください。

関連記事
農地法の許可について
「農地は限られた資源であり、適正に維持・管理・利用しなければならない」との考え方のもと、農地法という法律によって農地の利用については法律上の制限が課せられていま…
office-kaibara.com
農地法の届出について
農地には「農地法」という法律の制限を受けます。そうした制限の1つとして、特定の場合に「農地法に基づく届け出」を出さなければならない、ということがあります。この記…
office-kaibara.com