会社設立時に検討すべき「取締役の任期」について

会社設立時に検討すべき「取締役の任期」について

2021年5月15日

取締役の任期については、会社の機関設計等により大きな変化があります。

本記事では、当事務所で取扱いの多い、非公開・非取締役会設置の会社を前提としています。

1.株式会社の取締役には任期がある

(1)原則は2年任期

株式会社の取締役には「任期」が定められており、会社法上の原則は「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」です。

「選任から2年」ではないのでご注意ください。

定時株主総会は事業年度終了後の一定時期に開催する株主総会のことをいいます。
また、事業年度を変更した際には、結果として取締役の任期が短縮されることもあります。

(2)定款で任期を伸長可能

非公開会社(発行する株式の全部に譲渡制限がついている会社)については、定款規定で、上記の「2年以内」というのを「10年以内」とすることができます。

では、取締役の任期を「2年以内」とするのと「10年以内」とするのとで、違いがあるのでしょうか?

2.取締役の任期は長いほうが良い?

(1)任期を長くすれば登記申請の回数を減らせる!?

取締役の任期が満了した場合には、再度、取締役の選任を株主総会で行う必要があります。

そして、選任された取締役が、以前の取締役と全く同じ場合においても、法務局に役員選任登記を申請する必要があります。

規模の小さな会社であれば、この役員選任登記の登録免許税は1万円なのですが、これらの費用や選任手続きの手間を軽減したいということで、年数を上限の10年とする会社が非常に多いのです。

(2)任期を長くすることの弊害!

とはいえ、取締役の任期を長くすることの弊害もあります。

  1. 株主が任期途中で取締役を辞めさせたいと思ったときに解任という方法をとらざるを得ない。
  2. 仮に解任という選択肢を選んだとしても、解任された取締役から損害賠償を受けるリスクがある。

任期を長くした場合の弊害として挙げられるのが、第1に「株主が任期途中で取締役を辞めさせたいと思ったときに解任という方法をとらざるを得ない」点です。

もちろん、辞めさせたい取締役が自ら辞任してくれれば良いのですが、そうでない場合には株主から「解任」というアクションを取らなければなりません。
「解任」は会社の登記簿にも記載されるため、極力避けたいと考える会社が多いです。

第2に「仮に解任という選択肢を選んだとしても、解任された取締役から損害賠償を受けるリスクがある」点です。
解任された取締役は、解任について正当な理由がない場合には会社に対して損害賠償請求が可能です。

損害賠償の金額は、任期満了までに受領できたであろう役員報酬が基準となるため、任期満了までの年数が長いと、それだけ賠償額は増えていくのです。

3.増員や補欠の場合の任期

取締役の任期については、定款上で次のような規定を定めることが可能です。

「補欠または増員により選任された取締役の任期は、前任者または他の在任取締役の任期の残存期間と同一とする。」

これは、任期途中で取締役が辞任したので穴埋めのために選任された取締役(補欠)や、必要に迫られて他の取締役の任期中に追加選任した取締役(増員)について、他の取締役と任期をそろえるための規定です。

こうした規定がない場合には、取締役ごとに任期が異なるため、任期管理が複雑になったり、前述のような登記申請の回数が増えることになります。

4.役員任期の確認の仕方

冒頭で役員任期の規定として「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」という会社法の条文をご紹介しました。

パッと見ても理解しにくい部分があると思いますので、任期計算の例をご紹介します。

(1)事例

2021年3月20日に取締役全員が選任された。

  • 取締役の任期は、会社法の原則通り。
  • 事業年度は、毎年1月1日から同年12月31日まで。
  • 定時株主総会は、毎年2月25日に開催。

(2)上記事例における任期計算

上記事例の場合には、任期は次のように考えます。

  1. 「選任後2年以内」=「2023年3月20日」
  2. 「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のもの」=「2022年12月期」
  3. 「上記事業年度にかかる定時株主総会が終結する時」=「2023年2月25日の定時株主総会終了時」
    (※定時株主総会の開催時期は、会社の決定によります。)

この事例では、2023年2月25日の定時株主総会終了時に任期満了となります。

5.株式会社設立に関する手続は当事務所にご相談ください

(1)株式会社・合同会社・一般社団法人等の設立手続き

当事務所では、会社・各種法人の設立手続きを、代行しています。
設立手続きにおいては、会社設立後の運営を見据えた、定款設計を心掛けています。
一部の営業許認可については、設立手続きと一緒に、当事務所司法書士(行政書士資格保有)にて対応することも可能です。お気軽にご連絡ください。

(2)ご依頼にあたっては原則面談を必要としています

ご依頼にあたっては、原則として、当事務所での面談が必要となります。
なお、沼津法務局管轄内の以下の市町については、事前にご相談いただければ出張も可能です。
沼津市・裾野市・御殿場市・三島市・伊豆市・伊豆の国市・富士市・富士宮市・熱海市
駿東郡小山町・清水町・長泉町
田方郡函南町

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