【事例で考える】おじ・おばの遺産承継手続きと遺言のススメ

【事例で考える】おじ・おばの遺産承継手続きと遺言のススメ

2021年1月24日
守秘義務および個人情報保護の観点から、実際の事案を変更・編集して記載しています。

甥や姪が相続人となるような遺産承継手続き

依頼者はAさん。
Aさんは独り暮らしをしていた高齢の叔父Bさんの生活援助(通院の付き添いや介護ヘルパとの橋渡しなど生活介助全般にわたる援助)をしていました。

Bさんは、5年ほど前に奥様を亡くしてからは、一人暮らしをしていました。
Bさんには子供がおらず、そのためBさんからみて甥にあたるAさんが親族を代表して、3年ほど前からBさんの生活援助を行ってきたのです。

Bさんの相続人は、Bさんの兄にあたる亡Cさんの子供であるAさんと、Bさんの妹にあたるDさんの2名でした。Dさんは遠方に住んでおり、Bさんと会うのは年に1回か2回程度でした。

1.ご依頼に至る経緯と遺産調査

Bさんの納骨を済ませた段階において、各種遺産承継を効率的に進めたいということで、弊所の利用を検討いただきました。

Aさんが、Bさんの生前より生活援助を行っていたため、ある程度の財産状況を把握されており、その情報をもとに見積もりを作成することができました。
見積りの内容をご承諾いただき業務開始となります。

遺産調査は、預金口座があることが判明していた銀行に加え、他にも取引がありそうな銀行も含めて行いました。
結果として、想定した以上の口座・残高があることが判明しました。

また、自宅不動産についても、名寄帳を取得し、道路持分も含めて漏れなく確認していきます。

2.遺産分割協議

遺産分割協議は、AさんとDさんが、Aさん宅にて行いました(Dさんは遠方に住んでいたため、日程調整で苦労されたようです。)。

AさんとDさんは、姪と叔母という関係にあります。
世代が異なると、相続や遺産に対する考え方、亡くなられた方との関係性などが異なるため、互いに誤解のないよう慎重に遺産分割協議を進める必要があります。

Dさんは、生前のAさんの貢献をよく知っており、また非常に感謝もしていたため、基本的にはAさんが遺産を承継することとなり、若干の金銭をDさんに支払う形で協議がまとまりました。

合意内容を弊所にて書面化し、AさんとDさんに実印を押印してもらいました。

3.遺産承継手続き

遺産分割協議書に基づいて、各資産の遺産承継手続きを行いました。
相続による不動産の名義変更(相続登記)、銀行口座(3行)の承継手続きを弊所にて代行しました。

本来であれば法務局(相続登記)+3銀行をまわって手続きすべきところ、弊所に来所して準備された書面に押印するだけで一連の承継手続きが完了するため、非常に手間が省けたとAさんにはおっしゃっていただきました。

承継した遺産の中から、遺産分割協議にて取り決めた金額をAさんからDさんに支払い、弊所の遺産承継業務は完了となりました。
完了時には、戸籍謄本・遺産分割協議書・残高証明書等々を一まとめにして、Aさんにご返却いたしました。

4.承継した不動産の売却

弊所の遺産承継業務が完了したあとも、Aさんには、Bさん相続に関連し、やるべきことがありました。

それは、Aさんが承継したBさん自宅不動産の売却手続きです。
自宅の動産類の整理(遺品整理)や、不動産仲介など、折にふれてAさんにはお話をいただき、弊所から紹介やアドバイスできるところはサポートさせていただきました(不動産登記との関係で不動産業者とは継続的な付き合いがありますし、昨今は、成年後見業務において不動産取引の当事者となるケースも増えています。)。

それなりの苦労もあったようですが、Aさんにて無事に不動産の売却と売却に伴う確定申告をおえて、一連の遺産承継が完了となりました。

5.遺言のススメ

Aさんのケースでは、相続人であったAさんとDさんが、問題なく遺産分割協議をまとめることができたため、非常にスムーズに承継手続きが完了しました。

しかしながら、兄弟姉妹あるいは甥・姪が相続人となるケースでは、相続人が多数となったり、相続人の中に認知症等により意思表示ができない方が含まれるなどして、円滑な遺産分割協議が困難である事例も多々あります。

また、今回は、DさんがAさんの貢献を理解し感謝していましたが、必ずしもDさんのような人ばかりというわけではありません。
悪気はなくとも、疎遠であったため、生活実態を知らず周りの親族の貢献度を評価できないというケースもあります。
遺産分割協議の結果に、Aさんの貢献度が反映されるかどうかは未知数なのです。

これらの事情を考えると、生前、Bさんにおいて遺言を残すという方法も検討されるべきではなかったかと思います。

万が一、遺産分割協議が不調となると、葬式代の工面や、残された自宅不動産の処分など、迅速性を求められる場面でも対応ができないことがでてきます。
また、Aさんの貢献度が、自身の遺産分割に全く反映されないことは、遺産を残したBさんにとっても本意ではないでしょう。