【事例で考える】叔父・叔母(おじ・おば)の相続と遺言

【事例で考える】叔父・叔母(おじ・おば)の相続と遺言

2021年1月24日
守秘義務および個人情報保護の観点から、実際の事案を変更・編集して記載しています。

甥や姪が叔父・叔母の生活援助(介護)をしているケースでの遺言活用

依頼者はAさん。(沼津市在住)

Aさんは独り暮らしをしている高齢の叔母Bさんの生活援助(通院の付き添いや介護ヘルパーとの橋渡しなど生活介助全般にわたる援助)をしています。

Bさんに婚姻歴はなく、子供もいなかったのですが、Bさんの姉Cさんの娘であるAさんを、自分の子供のように可愛がってきました。
Aさんも、叔母Bさんに対しては、幼いころから面倒を見てもらったという気持ちもあり、進んで生活援助を行ってきました。

Bさんの推定相続人は、Bさんの姉Cさん(Aさんの母。存命。)と、兄にあたる亡Dさんの子供であるEさんとFさんでした。
Bさんは、Aさんとは小さいころから交流があったものの、Eさん・Fさんとは居住地が遠方だったこともあり、ほとんど交流はありませんでした。

家系図

1.ご依頼に至る経緯(遺言の作成を検討)

最初に当事務所にご相談いただいたのは、遺言の作成についてでした。

Aさんからの連絡を受け、最初は、Bさん宅にて、司法書士も含め3名で打合せを行いました。

打合せでは、つぎの事項を確認しました。

  • 相続財産としては、不動産や預貯金・投資信託がある。
  • 現時点での推定相続人は、Cさんと亡Dさんの代襲相続人Eさん・Fさんである。

Bさんの当初の希望としては、推定相続人であるCさんか、その子であるAさんに遺産を承継させたいというものでした。

2.兄弟姉妹の相続と遺言の効用

Bさんのケースでは、仮にBさんに相続が発生した場合、相続人となるのはBさんの兄弟姉妹です。
そして、兄弟姉妹の中ですでに死亡している方がいる場合には、その子が代襲相続人となります。

そのため、相続人はつぎのとおりになります。

  • Cさん(姉)
  • Eさん(兄Dの代襲相続人)
  • Fさん(兄Dの代襲相続人)

【参考記事:代襲相続について】

しかしながら、Eさん・Fさんは、お互いが疎遠であったため、遺産承継に関与することは遠慮したいということのようでした。

(1)遺言がない場合 → 遺産分割協議(相続人全員が関与)

仮に遺言がない場合には、相続関係は法律の規定に従って決定されることになります。

当事者で「遺産承継には関与したくない」という意向があっても、遺産承継の手続きには、どうしてもEさん・Fさんが関与してくることになります。

一方で、遺言を用意しておけば、Eさん・Fさんの関与を省略することができます。

(2)遺言がある場合 → 遺産承継させる人を指定(協議の省略)

今回のケースでは、Bさんの希望を聞き取りながら、遺言案を作成しました。

  • 遺産はCさんに相続させる。
  • 万が一、Cさんが先に亡くなった場合には、Aさんに相続させる。

そのほかにも、想定されるケースに対応するため、Bさんの要望を法的な言葉に落とし込んでいきます。
【参照記事:遺言書・遺書の作り方について】

遺言は自筆証書遺言ではなく公正証書遺言で作成しました。
【参照記事:自筆証書遺言と公正証書遺言の比較】

弊所との打ち合わせは原則的にBさん宅で行い(3回ほど)、最終的な遺言作成は沼津市の公証役場に出向いていただき30分ほどで手続きを完了させました。

3.成年後見制度・任意後見契約の検討(遺言だけでは不十分?)

遺言の検討を行う中で、もう1つの課題が明確になってきました。

それは将来、Bさんが老人ホームに入居する場合に、Bさん自宅をどうするか、Bさんの財産管理をどうするかということです。

もちろん、Bさん自身がお元気な状態で老人ホームに入居するのであれば、問題はありません。
しかしながら、たとえばBさんが認知症になってしまったということになると、Bさんに代わって財産管理(不動産の売却も含む)を行う人が必要となってきます。

この場合に「Bさんに代わって財産管理等を行う人」を選ぶ仕組みが、成年後見制度になります。
【参照記事:成年後見制度の基本を確認する】

Aさんが、財産管理面を含め対応できるということであれば、任意後見契約がベストかと思いましたが、生活援助や介護については全く問題ないが、金銭管理についてはAさん自身では対応したくない(対応できる自信がない)ということでした。
【参考記事:任意後見契約について】

その他の懸念点もあったため、任意後見契約については見送りとなりましたが、必要な場合にはAさんから成年後見人選任の申立てを行うこと、現時点においては財産目録を作成し「どこに預貯金や投資信託があるか」ということは、いざというときにAさんが把握できるようにしておくこととしました。

4.最後に

上記のケースでは、遺言と財産目録の作成により、老後に備える対応としました。

より万全に対策を行うのならば、任意後見契約の締結なども必要にはなってきますが「実際に制度を利用するかどうかは、個々の事情をふまえて判断するべき」といえます。

今回のケースにおいても、任意後見契約を締結すれば老後への対応策としては100点満点となりますが、具体的な事情を検討した結果、判断能力低下時に成年後見申立てを検討したほうがベターという結論に至りました。

客観的にみて100点満点の対応をすることが正解とは限りません。
個々の事情に合わせて、当事者が納得する判断をすることが重要です。
様々な情報を提供し、こうした判断の手助けをすることが当事務所の役割ではないかと考えています。

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