不動産・預貯金・株式・投資信託等の相続について(遺産承継手続)

不動産・預貯金・株式・投資信託等の相続について(遺産承継手続)

2021年1月2日

各種財産の相続による承継手続きについて

身近な方が亡くなり、その方の遺産を承継する際に「遺産承継手続」が必要となります。遺産承継手続きの具体的な内容は、遺産の種類ごとに様々ですが、次のような点は共通しています。

  1. 相続人を確定するために、亡くなった方の戸籍や相続人の戸籍を集めなければならない。【戸籍調査】
  2. 相続人全員で話し合いをして、遺産の分け方を決めなければならない。【財産調査】
  3. 相続人全員が所定の書面に実印で押印(印鑑証明書付き)が必要。【遺産分割協議】
  4. 遺産の種類ごとに、法務局や銀行・証券会社に書類を提出しなければならない。【各種承継手続き】

いずれの手続きも、多くの方にとっては、「初めての手続き」であるかと思います。
そのため、戸籍収集に非常に時間がかかったり、遺産の分け方で戸惑ったり、法務局や銀行・証券会社など複数ある相手先ごとに書面を提出するのが面倒だったりと、「非常に苦労した」「とんでもない時間がかかった」との感想を持たれる方が非常に多い印象です。

この記事では、これから遺産承継手続きに望まれる方に対して、それぞれのステップで何が必要となるのか、また簡単にではありますが、注意点をご紹介できればと考えています。
※以下では「遺言書」がないことを前提としています(遺言がある場合には、その遺言に従って遺産承継手続きを行う必要があります)ので、ご留意ください。

【ステップ1】相続人の確定のための「戸籍調査」

まずは、亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍を集めます。これにより「誰が相続人であるか」を確定させることができます。

戸籍の収集においては、「本籍地のある市役所」に戸籍請求をする必要があります。
たとえば、出生時の戸籍は沼津市にあるけれど、結婚に際して戸籍を三島市に移し、そのまま亡くなられた方の場合には、沼津市と三島市に戸籍を請求する必要があります。
沼津市と三島市であれば、近くなのでそれほど手間ではないかもしれませんが、遠方の市町の場合には、郵送で請求することになります。

郵送で請求する場合には、「郵便小為替」といった現金の代わりとなるものが必要になったり、請求者の本人確認のために免許証のコピー等を同封する必要があるなど、非常に面倒な作業を行う必要があります(2024年を目途に、全国の戸籍システムをつなぎ、地元の市役所等で全国の戸籍が取得できるようになる予定です。とはいえ、どこまで手続きが簡素化されるかは現時点では不明です。令和3年8月時点。)。

なお、戸籍調査に関しては、戸籍収集後に、法務局の「法定相続情報証明制度」を利用することをお薦めしています。これは、上記で収集した戸籍と相続人の一覧図(自分で作成)を法務局に提出すると、法務局で内容チェックをしたうえで、一覧図に認証をしてくれる制度です。戸籍の漏れもわかりますし、認証した一覧図は各銀行での遺産承継手続きに利用することができ、手続き時間の大幅な短縮につながります。

【参照記事:法定相続情報証明制度について】

【ステップ2】相続財産の調査

相続人を確定した後には、相続財産の調査が必要となります。
ここはケースバイケースですが、おおむね遺産の内容がわかっている方が相続人になるケースと、まったく遺産の内容がわかっていない方が相続人になるケースでは、調査の必要性が大きく変わってきます。

【おおむね遺産の内容がわかっているケース】

亡くなられた方が財産目録をつくってくれているとか、銀行預金のある口座がわかっているとか、そういったケースにおいては、財産調査にはそれほど時間をかける必要はないでしょう(とはいえ、100%漏れがないとは言えないのが難しいところです。)。

市役所等で不動産の名寄帳を取得したり、各銀行に残高証明書の発行を依頼するというのが主な作業となります。名寄帳で不動産の固定資産税評価を確認したり、各銀行の口座や残高を確認することで、その後の遺産分割協議(遺産の分け方を決める)を適切に行うことができます。

【まったく遺産の内容がわかっていないケース】

こうした場合には、しっかりとした財産調査が必要になります。とはいえ、現状では、100%漏れなく遺産を見つけ出すことは不可能というのはご理解ください。
主たる財産の調査方法は以下のとおりです。

  • 不動産について
    各市町で、名寄帳というものが発行されています。これは、土地や建物などに対して固定資産税を課税する目的で、各市町が管理している帳簿の写しです。各市町の窓口で請求すれば、その所有者が当該市町に所有している固定資産を一覧にして発行してもらうことができます。不動産の所在だけではなく、固定資産税の評価額や課税額も確認できます。
    デメリットは、市町ごとに発行されるものなので、たとえば沼津市の名寄帳には、沼津市内で所有する不動産(固定資産)が一覧として載ってきますが、長泉町の不動産は載ってきません。複数の市町に不動産があるかもしれない、という場合には、それぞれの市町に名寄帳を請求する必要があります。
  • 預貯金について
    各銀行ごとに、口座の有無を照会しなければなりません。一括ですべての金融機関に照会できるシステムがあればよいのですが、残念ながらそうしたものは現時点では用意されていません。
    預貯金の調査については、当事務所で遺産承継手続きの代行をおこなう場合においても、口座がありそうな金融機関を相続人の方と相談の上、調査先の銀行を限定して行っています。すべての銀行に対して調査をするのは事実上不可能だからです。
  • 上場株式・投資信託について
    上場株式・投資信託については、「ほふり(証券保管振替機構)」に対して登録済加入者情報の開示請求をすることで、おおよそのものは発見することができます。開示費用が銀行の残高証明書にくらべると割高という点、住所照合が厳密で融通が効きにくい点が、デメリットにはなりますが、預貯金の調査に比べると網羅性が高く漏れが生じる可能性は少ないです。

財産調査が終わった段階で注意したいことは、相続税申告の要否です。昔は、相続税というと一部の限られた相続だけで問題になっていたことですが、2015年の相続税改正以降、相続税申告の必要な方が増えています。とはいえ、各種の相続税制を利用することにより、申告は必要であるものの課税は無くなる方が多いので、はやめに申告の要否を判断し、税理士さんと相談しながら遺産の分け方を決定するのが良いでしょう。

【ステップ3】遺産の分け方を決める「遺産分割協議」

遺産の分け方は、相続人全員(戸籍調査で判明)で決定する必要があります。相続人全員で話し合いを行い、遺産の分け方を全員で合意します。これを「遺産分割協議」といいいます。
相続人の中に、遺産分割協議に参加できない人(認知症等の病気を抱えた方や行方不明者)がいる場合には、別途、それらの方の代理人を裁判所の手続きにより選任したうえで遺産分割協議を進める必要があります。
ちなみに、遺産の全てについて、1回の遺産分割協議で分け方を決めなければならないというわけではありません。遺産の一部について、遺産分割協議を行うことも認められています。
しかしながら、相続人全員で何度も何度も話し合いをするのは大変ですし、個々の遺産ごとに承継手続きを行う場合には、その都度、相続人全員の印鑑証明書を集めることになってしまいます。これは現実的ではないでしょう。
そのためにも、しっかりと遺産調査をおこない、極力、1回の遺産分割協議で分け方を決めるようにしましょう。
以上の、「遺産の分け方」に関する話は、遺言がなかったり、相続税申告が不要であったりするケースに当てはまる話です。遺言のあるケース、相続税申告が必要であるケースでは、検討事項や手続きの進め方が変わってきますので、ご注意ください。また、相続人間で争いがあるなどの理由で、遺産分割協議が成立しないケースについては、弁護士の選任、裁判手続きの利用等を検討する必要が出てきます。この点にも、ご注意ください。

【ステップ4】遺産分割協議書の作成と押印

遺産分割協議がまとまった場合には、その内容を遺産分割協議書にまとめます。
とくに預貯金のみを相続する方に多いのですが、遺産分割協議書を作成せず、各銀行に提出する書面に相続人全員で捺印して手続きを進めてしまう方がいらっしゃいます。
もちろん、承継手続きが完了すれば、それでよいのかもしれませんが、銀行ごとに相続人全員が捺印するのは非常に手間だと思いますし、何よりも、相続人間での合意事項を明確にする趣旨からは、しっかりと遺産分割協議書を作成し、それに相続人全員で印鑑を押すことが大切だと考えます。
遺産分割協議書には、相続人各人が実印を押印し、後日の遺産承継手続きのために印鑑証明書を添付します(印鑑証明書については1通あれば十分かと思いますが、承継する遺産や、手続きに要する期間によっては、複数部用意する必要がでてくることもあります。)。

【いよいよ】各遺産ごとの遺産承継手続きへ

以上のステップを乗り越えて、ようやく各遺産ごとの遺産承継手続きに進んでいきます。
不動産(法務局・市役所)、銀行、証券会社など、それぞれの取扱機関ごとに必要な書面が違ったり、押印が必要な人が変わってきます。
各手続きについては、遺産の分け方によって内容も変わってくるので、詳細は省略しますが、どこでも必要なる書面・押印としては、主につぎのものが考えられます。

  • 各取扱機関ごとの申請書や名義変更依頼書
  • (上記書類に)遺産を取得する方の押印
  • 遺産分割協議書(相続人全員が実印にて押印)
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 相続関係確定のための戸籍一式(法定相続情報一覧図があると、これが不要になります。)
  • 亡くなった方の住民票

【最後に】司法書士の遺産承継業務について

以上、長々と遺産承継手続きについてご説明しました。
これらの手続きは、相続人ご自身が行うことが可能なものです。実際、多くの方は、司法書士等の第三者に委任せずに、承継手続きを完了させていると思います。
そうしたなかでも、一定数の方が、当事務所を含む司法書士等に遺産承継手続きの代行を依頼しています。
どういったケースで、遺産承継業務の代行を選択したのか、一部ではありますが、当事務所でのお取扱い事例をご紹介します。

(パターン1)各取扱い機関に手続きに行くことが負担または困難

遺産承継手続きは、郵送でも手続きを進めることができますが、提出書面の作成・訂正が非常に面倒になることがありえます。
はじめて手続きする方が多いため、提出書類に訂正がないほうが少ないと思われます。
そうした手間を考えると、不動産であれば法務局、預貯金であれば各銀行の最寄りの支店まで、直接出向くのが効率が良いのですが、いずれも平日しか開いていないため、平日に仕事がある方では難しいでしょう。

同様の理由で、遺産を承継する相続人等が、遠方に住んでいて、たとえば沼津の法務局や、静岡県東部にしか支店のない金融機関に出向いて手続きを行うのが難しいケースも、このパターンに含まれます。

また、最近では高齢化の影響もあってか、相続人自身も、ご高齢であるケースが増えてきました。そうなると、近隣に居住はしているけれども、法務局や金融機関に何度も出向くのは体力的に厳しいという方もいらっしゃいます。

(パターン2)相続関係が複雑で手続き負担が大きい

相続関係が複雑というのは、たとえば、次のようなケースです。

  • 亡くなった父親が複数回婚姻していて、母の異なる兄弟姉妹がいる
  • 相続人が兄弟姉妹である
  • 代襲相続が発生しており、相続人間で世代が異なる
    (代襲相続とは、たとえば親より先に子が
  • 数次相続が発生しており、相続人が多数になっている

こうした複雑なケースでは、最初の戸籍調査から大変です。そもそも集めるべき戸籍が多数になるうえ、本籍地もバラバラで郵送対応が必要になったり、戸籍の取得権限を確認するため請求した市町から例外的な書類を要求されたりと、イレギュラーな事態も発生します。

また、相続人の人数が増える分、遺産分割の仕方も複雑となり、遺産承継手続きを円滑におこなうために、しっかりとした遺産分割協議書を作成することが求められます。これは、何度も押印をもらう手間を省くという意味でも、相続人間で意思のすれ違いが起きることを防ぐという意味でも、重要です。

くわえて、財産調査の面においても、しっかりとした調査が必要になるケースが多いです。亡くなった方と相続人が、別々に生活しており、生活実態が不明確であるため、どこに預金があるのか、株式や投資信託を保有していたのかなど、わからないことだらけのため、ゼロから調査を開始する必要があるのです。

当事務所に遺産承継手続きの代行を依頼する方の4割くらいは、このパターンかと思います。
なお、こうしたケースにおける留意点として、当事務所では遺産分割協議のとりまとめや意見調整を一切行うことができないという点です(これは、法律上の制限が存在するためです。、違反行為は罰則の対象となりますし、そもそも分割協議自体の効力にも影響を及ぼしかねません。)。
遺産分割協議のとりまとめや意見調整を希望される方には、弁護士さんの利用を勧めています。

(パターン3)入念な財産調査が必要

意外と多いのが、相続関係は複雑ではないのだけれど、相続財産が何処にどれくらいあるのか、わからないというケースです(「何から手を付ければよいのかわからない」という困った状態。)。

ある事案は、お父様が亡くなられ、相続人はお母さまと娘さん一人というケースでした。相続人は2人で、しかも同居しており、相続関係は非常にシンプルだったのですが、お父様が秘密主義な方だったようです。業務開始時点において、娘さんが言うには「それなりの財産を持っているはずだけれども、銀行口座は父と母が共有で利用していた1つのものしかわからない。」という状況でした。
相続人の方と話し合い、照会を行う金融機関をいくつかリストアップして調査を始めたのですが、口座やら株式やらが次々と出てきて、相続税の対応も必要となってしまい、税理士さんと二人三脚で対応するという結果に。

ここまで極端な例は少ないとしても、正確な預金残高、保有株式の数や評価、細かな不動産の所在などは、身内でもわからないということは、よくあると思います。
そうしたケースで、当事務所への代行を選択していただいております。

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