相続手続きのための「ほふり」への照会(上場株式等の相続調査)

相続手続きのための「ほふり」への照会(上場株式等の相続調査)

1.相続手続きにおける「上場株式」などの調査

(1)相続財産である「上場株式」を見つけることの難しさ

甥・姪が相続人となるケースなど、「故人の相続財産の内容がよくわからない相続」は確実に増加しています。

当事務所(沼津の司法書士貝原事務所)では、遺産相続の手続きをサポートする業務(遺産整理業務)を行っておりますが、「故人の相続財産の内容がよくわからない相続」を扱うケースは、10年前とは比較にならないほど増えています。

こうした「故人の相続財産の内容がよくわからない相続」においては、相続財産の調査からスタートするのですが、この相続財産の調査において利用することがあるのが「ほふり」への照会です。

要するに「上場株式」の調査なのですが、「上場株式」の相続手続きの特徴として、つぎの点があげられます。

  • オンライン化が進み、「書面」が残らないので、把握が難しい。
  • 複数の証券会社を利用している方が少なくない(とりわけオンライン証券会社の場合)。

(2)相続調査としての「ほふり」(証券保管振替機構)の活用

この記事では、相続財産の有無を調査する方法として「ほふり」の登録済加入者情報の開示請求をご紹介します。

とりわけ故人の相続財産がわからないケースでは、上場株式の保有の有無を一括して調査できる点が大きなメリットです。

一方で、必要書類や調査請求書を記載する際の注意点があります。
また、照会にあたっては手数料がかかります。

この記事では、「ほふり」の登録済加入者情報の開示請求について、概要を確認していきます。

2.「ほふり」について(相続財産調査との関係)

(1)「ほふり」とは

そもそも「ほふり」というのは、株式会社証券保管振替機構の略称です。

(株)証券保管振替機構は、上場株式等について、所有者や保有数などの情報を、記録・管理・書き換えを行っている機関です。

そのため、「日本国内の証券取引所」で「日本の上場株式等」を売買すると、その売買取引について証券保管振替機構に記録されます。
亡くなった方(故人)が、上場株式等を購入していれば、その購入記録が「ほふり」(証券保管振替機構)に残っているはずです。
そうした購入記録の有無を「ほふり」に照会することで、相続財産たる上場株式等の有無を確認します。

(2)「ほふり」への調査で見つけることのできる「上場株式等」の範囲

「ほふり」への照会によって確認できるものは、次のとおりです。
(国債や外国株式が対象外となる点については、注意が必要です。)

【対象となるもの(金融商品取引所に上場されている、つぎの金融商品。)】

  • 内国株式
  • 投資口(REIT)
  • 投資信託受益権(ETF) などなど

【対象外となるもの】

  • 非上場の内国株式・投資信託受益権
  • 外国株式
  • 国債
  • 社債 などなど

3.「ほふり」への相続照会の方法

(1)必要書類や請求書式について

「ほふり」への相続照会にあたっては、次のような書類を準備し、郵送によっておこなう必要があります。
(必要書類は、いずれも法定相続人本人が照会を行うことを前提としています。)

  • 請求者の運転免許証などの本人確認書類
  • 相続人と被相続人の関係を示す戸籍等
    (法定相続情報一覧図がある場合には省略可能)
  • 亡くなられた方の住所を確認するための書類
    (戸籍の附票が一覧性があってオススメ)

詳細については「ほふり」のサイトをご覧ください。
(【外部リンク】証券保管振替機構HP:必要書類 -法定相続人による請求-

ただし、サイトをご覧いただくとわかるとおり、パターンごとに必要書類が変わってきます。
手続きに困る場合には、司法書士など遺産整理業務を取り扱う士業の活用をオススメいたします。

(2)「住所」や「氏名」の変更がある場合

「ほふり」の照会おいて特徴的なのが、「住所」「氏名」の記載です。

照会作業においては、照会請求書に記載された「住所×氏名」をキーとして検索がおこなわれます。

そのため、引っ越しなどにより証券会社への届出住所が複数あることが考えられる場合には、想定される住所を複数記載する必要があります。
とはいえ、記載する住所が増えると、後述の手数料も増えますのでご注意ください。

(3)「ほふり」への照会手数料について(令和4年8月時点)

「ほふり」への照会にあたっては、手数料がかかります。

手数料は、照会を実施する「住所×氏名」の組み合わせの数によって変わってきます。

  • 「住所×氏名」の組み合わせが1つの場合  :6,050 円(税込)
  • 「住所×氏名」の組み合わせが2つ以上の場合:1件増えるごとに+1,100 円(税込)

ちなみに、必要書類である「相続人と被相続人の関係を示す戸籍等」について、戸籍等を提出する代わりに法定相続情報一覧図を提出すると1,100円の値引きを受けることができます。

【参照記事:法定相続情報証明制度について(相続手続きをスムーズ進めるために有効!)】

4.「ほふり」への相続照会の結果がでたら

(1)相続照会の結果としてわかること

照会結果として確認できるのは、原則として、上場株式等の口座が開設されている証券会社・信託銀行等の一覧のみです。

保有する株式の具体的な会社名(たとえば「トヨタ自動車」など)が判明するわけではありません。

具体的な会社名(保有銘柄)を確認するためには、開示結果として判明した証券会社・信託銀行等に対して個別照会をかける必要があります。

(2)各社への照会を実施

各社への照会方法は、各社の様式に従って行います。
「残高証明書」などの請求により、保有する個別銘柄や銘柄数などを特定していきます。

5.司法書士など遺産整理業務を取り扱う士業の活用を

ここまで、相続財産調査の1つの方法として、「ほふり」への照会を活用する方法をご紹介しました。

上場株式等を一括して調査できる点は、たとえば預貯金の場合(それぞれの銀行に対して個別に調査する必要がある)と比べると、非常に便利といえます。

いっぽうで、必要書類や請求方法の複雑さはネックです。
また、「ほふり」への調査で終了ではなく、その後において、証券会社等への個別照会も必要になってきます。

そもそも、「ほふり」の活用を求められるような「故人の相続財産の内容がよくわからない相続」においては、相続手続き全般について、司法書士をはじめとした士業が提供する遺産整理サービスを利用したほうが良いといえるケースもあります。

司法書士をはじめとした士業の活用についても、ぜひ、ご検討いただきたいです。