法定後見(後見・保佐・補助)と3類型について

法定後見(後見・保佐・補助)と3類型について

2021年4月11日

1.法定後見とは

法定後見とは、判断能力の低下によって現に法的サポートが必要な方に対して、家庭裁判所がサポーターを選任する制度です。

サポーターの選任は、申立権者が家庭裁判所に申立てを行うことによって行われます。また、「申立権者」となる資格は法律で限定されており、ご本人、配偶者、4親等以内の親族などが該当します。
法定後見は、サポーターの権限の範囲によって3段階に区分されています。

  • 後見:判断能力を常に欠いている状態の方に対して
  • 保佐:判断能力が著しく不十分な方に対して
  • 補助:判断能力が不十分な方に対して

類型の判断は、申立時に添付する「医師の診断書」をベースとして家庭裁判所が判断します。

ちなみに「法定後見」の反対の概念は「任意後見」です。
任意後見においては、ご自身の判断能力の低下に備えて、あらかじめ自身のサポータとなる人を自分自身で選んでおくことになります。
任意後見の詳細は、つぎの記事をご覧ください。
【参照記事:任意後見契約について】

2.後見類型

(1)ご本人の状態

後見類型は、周りの人の支援を受けても、契約等の意味内容を理解・判断することが困難である方が利用する類型です。

「全くコミュニケーションができない」という方もいらっしゃいますが、そういった方が全てというわけではなく、会話はできるものの一貫性や記憶保持力に著しい障害が生じている方もいらっしゃいます。

(2)サポータたる後見人の権限

後見類型においては、後見人は広範な代理権を与えられています。

とはいえ、この代理権は、ご本人の身上配慮を当然の前提としており、後見人の独断でご本人の財産を好き勝手に処分できるわけではないという点に注意しなければなりません。

3.保佐類型

(1)ご本人の状態

保佐類型は、周りの人の支援を受けなければ、契約等の意味内容を理解・判断することができない方が利用する類型です。
日常的な買い物は一人でもできるけれど、重要な財産の処分・管理には支障がある状態を念頭に置いています。

(2)サポータたる保佐人の権限

保佐人は、ご本人の財産上重要な行為について「同意権」をもちます。
ご本人が保佐人の同意なく、これらの行為を行った場合、保佐人は本人の行為を取り消すことができます。

また、本人の同意を得たうえで、一定の行為について保佐人に代理権を付与することも可能です。
この代理権の付与は、家庭裁判所の審判により与えられるものなので、代理権付与を希望する場合には、家庭裁判所に権限を付与するよう申立てをする必要があります。

実務上は、保佐人に対して何かしらの代理権を付与するのが一般的です。

4.補助類型

(1)ご本人の状態

補助類型は、周りの人の支援を受けなければ、契約等の意味内容を理解・判断することが難しい場合がある方が利用する類型です。

日常的な買い物はもちろんのこと重要な財産管理についても自分でできるかもしれないが、障害等により不安があるため、サポーターの支援を必要とする状態を念頭に置いています。

(2)サポータたる補助人の権限

補助の場合には、「同意権」も「代理権」も、その内容を家庭裁判所の審判により決定する必要があります。
従って、補助人の選任を申立てる際には、特定の行為について同意権または代理権(あるいは両方)を付与することを求める申立てを同時に行うことになります。

実務上は、補助人に対して何かしらの代理権を付与するのが一般的です。

5.保佐・補助における代理権の付与について

類型判断は、医師の診断書に基づいて家庭裁判所が判断することです。

そのため、医師の診断書を受領した段階で、ある程度、どの類型になるかは予測できるため、想定される類型が保佐や補助の場合には、代理権や同意権の内容についても検討する必要があります。

実務上は、保佐においても、補助においても、ご本人の状況に合わせて代理権を付与するのが通常です。
家庭裁判所のHPで「代理行為目録」を確認すると、様々な代理権の種類があることが確認できます。

どういった代理権を付与するかは、もちろんご本人の同意も必要となりますし、どういった支援が必要となるかを想像しながら、過不足なく範囲を決定する必要があります

こうした点については、後見実務の経験がある司法書士等の専門職に相談しながら決定していくと良いと思います。

6.法定後見の利用には「申立て」が必要!

以上が、法定後見の3類型(後見・保佐・補助)に関するご案内となります。
類型ごとに、サポーターとなる人の範囲が、少しずつことなることに気づいていただけたかと思います。

一方で、こうした法定後見の利用にあたっては、家庭裁判所への申立てが必要不可欠です。
(そもそも、これら3類型のいずれかを選択するかも、最終的には家庭裁判所が決めることです。)

法定後見利用のための申立てについては、つぎの記事にまとめています。
こちらも是非、ご覧いただければ、うれしいです。