成年後見人選任の申立てについて

成年後見人選任の申立てについて

2021年4月11日

1.成年後見制度利用には「家庭裁判所への申立て」が必要

(1)法定後見(後見類型)の利用にあたる申立てについて確認していく

成年後見制度には、大きく分けて2つの種類があります。

  • 法定後見
    ご本人を法的にサポートする人(成年後見人等)を家庭裁判所が選任する。
    また、サポートする人の権限の範囲も家庭裁判所が決定する。
  • 任意後見
    ご本人を法的にサポートする人も、そのサポーターの権限も、ご本人自らが決定し「契約」という形で残しておく。そのため、ご本人の法的な判断能力が低下する前に、事前に準備しておく必要がある。

法定後見、任意後見のいずれにおいても、制度利用にあたっては家庭裁判所の関与が必要となります。

この記事では、法定後見(かつ後見類型)に絞って、制度利用にあたり家庭裁判所にどのような申立てをすればよいのか、どのような書類を準備すれば良いのか、ご紹介していきます。

(2)当事務所のご紹介 ~沼津市の司法書士法人貝原事務所~

当事務所では、後見等開始申立てのサポート、成年後見人等への就任、任意後見契約の利用サポートなど、成年後見制度に関する司法書士サービスを提供しています。

沼津市、三島市をはじめとする静岡県東部地域にて活動しています。

この記事では、そうした活動経験をもとに、成年後見制度の利用にあたり、どういった申立てが必要となるのか、期間や費用がどれくらいかかるのか、ご紹介していきます。

2.後見制度の利用は「後見開始申立て」によりはじまる

(1)家庭裁判所に「後見開始申立て」を行う

後見制度の利用にあたっては、「○○さんに対する成年後見人を選任してください。」という申立てを、管轄する家庭裁判所に行うことが必要となります。
この申立てを「後見開始申立て」といいます。

ちなみに、成年後見制度においては、この「○○さん」に該当する人、すなわち後見人等による法的サポート受ける人のことを「本人」「ご本人」といいます。

(2)後見開始申立てから後見人選任にいたる流れ

さきに、後見開始申立てから後見人選任にいたる全体像を確認すると、つぎのとおりです。

  1. 必要資料の作成・収集
  2. 管轄する家庭裁判所への申立て
  3. 家庭裁判所での面接・調査・審査
  4. 家庭裁判所による審判(後見人の決定)

ちなみに「管轄する家庭裁判所」とは、ご本人の住所地により決定されます。
たとえば、ご本人の住所が沼津市や三島市であれば、静岡家庭裁判所沼津支部が管轄裁判所となります。
ご本人の住所が富士市であれば同富士支部、熱海市であれば同熱海出張所です。

(3)後見人選任にいたる期間

後見開始申立てを家庭裁判所に行ってから、後見人選任の審判がなされるまでの期間は、だいたい1~2カ月くらいです(管轄裁判所により異なるかもしれませんが、静岡県東部の裁判所では、だいたいこれくらいです。)。

ただし、注意すべき点が3つあります。

  • 必要資料の作成や準備にそれなりの時間がかかる。
  • 不足書類があれば、それだけ審判の期間がのびる。
  • 「鑑定」になると、それだけ審判の期間がのびる。

このうち「鑑定」というのは、提出された診断書だけでは不十分と裁判官が判断した場合に、裁判官の判断で改めて医師の判断をあおぐものです。
鑑定が必要となるケースは少ないのですが、いざ鑑定がなされるとなると、鑑定そのものに時間がかかるほか、鑑定費用(5~10万円くらいといわれています。)が追加で申立人の負担となる点に注意が必要です。

(4)後見開始申立てに必要な費用

後見開始申立てにあたり、家庭裁判所に納める費用は、だいたい1万円くらいです。
このほかに次のような費用がかかってきます。

3.「後見開始申立て」の申立人は法律で限定されている

(1)「後見開始申立て」をできる人は限られている

後見開始申立てをできる人は、法律で決められています。

代表的な人が、本人・配偶者・4親等の親族です。
4親等の親族には、子供や孫は当然に含まれますし、兄弟姉妹や甥・姪も含まれます。

そのため、身寄りがいなかったり、身寄りがいても協力を得られない場合には、家庭裁判所に対する申立てそのものが難しいケースもあります。

そうしたケースにおいては、次項において紹介する「市長申立て」の活用を検討することになります。

(2)市町長による後見開始申立て(いわゆる首長申立て)

近年、申立権者としての存在感が強くなっているのが、市区町村長です。
(実際のところは、各市区町村の福祉担当課が申立てを行っています。)

上記のように4親等以内の親族であれば申立権者となることができるのですが、該当する親族がいなかったり、該当する親族がいたとしても疎遠であり申立てに非協力的であるケースが増えています
そうした場合に、市区町村長が申立人となるのです。

ただし、静岡県東部地域に限ってみても、市町長申立てへの取組みには、市町によって非常に大きな差があります。行政による対応の改善が望まれるところです。

4.後見開始申立てに必要な書類の準備

(1)後見開始申立てに必要な書類はたくさん

後見開始申立てにあたっては、申立書や各付属書類のほか、財産目録や収支状況報告書などの提出も必要となります。
また、財産目録等の提出にあたっては、その裏付け資料(預金通帳、年金振込通知書など)のコピーも提出することになります。

ちょっと長くなりますが、主だったものをご紹介します。

  • 後見開始申立書
  • 申立事情説明書
  • 診断書
  • 本人情報シート
  • 親族関係図
  • 財産目録(場合によってはプラス相続財産目録)
  • 収支予定表
  • 後見人等候補者事情説明書
  • 親族の意見書
  • ご本人の戸籍抄本、住民票
  • ご本人の「登記されていないことの証明書」
  • 後見人等候補者の住民票

このうち、とくに重要なものについては次号以下で個別に確認していきます。

(2)医師の診断書と本人情報シート

医師の診断書や本人情報シートは、類型判断(後見・保佐・補助)に必要となる資料であり、またご本人の心身の状態を確認し、適切な後見人等の選任につなげることを目的としています。

ちなみに本人情報シートは、ご本人を日ごろから支援している福祉関係者(たとえばケアマネージャー)に記載をお願いするものです。

(3)戸籍や登記されていないことの証明書

申立てにあたり、ご本人の戸籍等が必要となります。
「登記されていないことの証明書」とは、申立ての段階で後見制度を利用していないか確認する目的で取得するもので、各都道府県の本局(静岡県の場合だと静岡市にある静岡地方法務局本局)か、東京法務局にて取得できるものです。
この「登記されていないことの証明書」の取得にあたっても、申立人とご本人の親族関係を証明するための戸籍が必要となってきます。

(4)財産関係書類

申立てに際して、預貯金通帳や年金振込通知書などの財産関係の資料を添付する必要があります。

ただし、本人が管理していたものの、管理能力を喪失していたため財産が散逸しているケースなどでは、不十分な内容にて申立てを行わざるを得ません。たとえ親族であっても、金融機関や市町担当課では、本人の財産内容を教えてはくれませんので、申立段階ではやむを得ないのです。

一方で、親族が後見人となることを目指すようなケースでは、これまでの財産管理の状況などをできるだけ正確に家庭裁判所につたえるべきケースもあります。
そのため、親族が後見人となることを目指すようなケースでは、司法書士等に相談しながら申立て手続きを行うことをオススメします。

(5)親族の意見書

「親族の意見書」とは、ご本人の推定相続人に該当する親族に記載してもらう書類です。
後見開始申立てそのものへの賛否や、後述する「後見人等候補者」に関する意見などを記載し、家庭裁判所に提出します。

この意見書の有無や記載内容により、ご本人を巡る親族間の見解の相違や紛争がないかがチェックされます。

申立ての内容に反対する親族がいたり、意見書を提出してくれない(あるいは提出できない)親族がいる場合には、その理由を申立人は裁判所に伝える必要があります。

5.後見開始申立てにおける「後見人等候補者」の意味

(1)後見人等の選任は家庭裁判所の専権事項

申立書には、後見人等候補者を記載することができます。

本来、後見人等の選任は家庭裁判所の専権事項なのですが、候補者欄に記載がある場合には、まずは候補者を選任することの是非を判断するという流れになります。

候補者欄に記載された者が不適当であると判断されれば、原則通り家庭裁判所が適任と考える者を改めて選任することとなります。
この際には、家庭裁判所の候補者名簿に記載された者(弁護士、司法書士、社会福祉士など)から選任されることとなります。

また候補者欄が空欄(すなわち裁判所の判断に任せるということ)の場合にも、家庭裁判所の候補者名簿に記載された者(弁護士、司法書士、社会福祉士など)から選任されることとなります。

(2)親族が後見人になることを希望する場合には

そのため、親族が後見人になることを希望する場合には、何にせよ候補者欄に親族の氏名等を記載する必要があります。

そのうえで、後見人等候補者欄に記載された親族が、後見人となるのに適切な人物であることを家庭裁判所にアピールしていく必要があるのです。
くわしくは、つぎの記事をご覧ください。
【参照記事:親族が後見人になれるのか?】

6.後見開始申立ての司法書士によるサポート

ここまでで、後見開始申立てにの流れや必要書類を確認していきました。

申立書や必要書類については、家庭裁判所HPにおいて丁寧に案内されています。それらを参照すれば、とりあえず申立てをすることは、さほど困難ではないかもしれません。

ただし、親族を後見人としたいとか、遺産分割や不動産売却など特定の目的をもって選任手続きを進める場合には特に、裁判所に申立人の意図を正確に伝えることが必要となってきます。

くわえて、そもそも成年後見制度を利用すべきケースであるのか、成年後見制度のデメリットも理解したうえでの申立てであるのか、申立てまえに確認すべきことが多くあります。

そうしたケースにおいては、是非とも司法書士への相談や申立書作成のサポートを活用してください。