子のない夫婦の成年後見・任意後見

子のない夫婦の成年後見・任意後見

成年後見
守秘義務および個人情報保護の観点から、実際の事案を変更・編集して記載しています。

甥子のない夫婦の成年後見・任意後見(事例編)

ご相談者はAさん(妻)。福祉関係者さんからの紹介で来所されました。

主な相談内容は、夫のBさんのこと。
Aさん夫婦には子供がおらず、お二人で生活してきましたが、半年ほど前にBさんが自宅で突然倒れ緊急搬送されました。脳梗塞によるもので、一命はとりとめたものの、運動麻痺や高次機能障害等の後遺症が残りました。
自宅に戻っての生活が難しかったため、Bさんは老人ホームに入所しました。 諸々の手続きは、福祉関係者の援助のもと、Aさんが対応してきましたが、Aさん自身も呼吸器系の病気を患っており、体力的にも精神的にも大変だろうということで後見制度の利用を検討していました。

1.成年後見制度の概要

成年後見制度は、認知症等によって判断能力が低下した人に対する法的なサポーターを選任する制度です。
任意後見と法定後見の2つの種類がありますが、今回の事案だと、Bさんの判断能力低下により任意後見は利用しがたい状況でした。従い、家庭裁判所に、Bさんに代わって財産管理や生活環境の整備を行うサポーターを選任してもらう「法定後見」を利用することとなりました。

2.後見人選任までの流れ

まずは、診断書を取得し、法定後見のうち「後見・保佐・補助」のいずれの類型に該当するかを確認します。Bさんは、後遺症の程度が重く、後見相当ということになりました。
その後は、後見人選任の申立て準備に入ります。
後見人選任の申立てについては、親族でも配偶者か4親等以内の方でないと申立資格がありません。子のない夫婦においては、配偶者(今回のケースだと妻のAさん)は申立人となることができます。
弊所で申立書類作成のサポートを行い、準備から2カ月ほどで、後見人候補者として申立書に記載した弊所司法書士が成年後見人に選任されました(なお候補者については、必ず次項もご確認ください。)。

3.候補者はどうする?

前述のように、後見人候補者については、弊所司法書士がなることとなりました。
後見人の選任は、家庭裁判所の裁量によるところですが、候補者をあげることはできます。後見人になるのに特別な資格は不要ですので、たとえばAさんが候補者となることも可能です。
今回は、Aさん自身の健康上の問題があったため、第三者(弊所司法書士)を候補者とすることにしました。家庭裁判所の後見人候補者名簿に記載されている専門家(司法書士・弁護士・社会福祉士)であれば、特段の事情がない限りは、候補者どおりに選任がなされています。
なお、弊所司法書士が候補者となることを承諾するのは、第1に受託可能な業務状況であること、第2に申立人やご本人との間に利益相反・法的紛争がないこと、を条件としています。この点の判断は、個々の事案によります。

4.成年後見人として行ったこと

成年後見人就任後、主に次のようなことを行いました。

(1)財産関係の整理・管理

Bさんが倒れたのが当然であったため、配偶者であるAさんにとっても、Bさんの財産を把握しきれていない状況でした。
そこで、自宅に保管されていた通帳や金融機関・証券会社からの郵送物を頼りに、後見人の資格で調査を行いました。結果として、判明していなかった定期預金が発見されました。

(2)入所契約・介護サービスの確認

現在Bさんの入所している老人ホームについて、入所契約の確認と、現在提供されているサービスの確認を行いました。施設相談員と打合せを行い、Bさんの現状と今後予想される問題を共有し、適切なサービスが提供されるようお互いに確認します。
とくに、施設で生活する上での、洗濯や衣服の補充、おむつ等の購入については、従前はAさんにて対応していたようですが、Aさんとも話し合いを行い、施設側での購入サービスを利用することにしました。また、再度入院した際に、一旦退所となるのかどうかも、事前に確認した事項です。

(3)収支の整理・管理

Bさんの毎月の収入や支出の確認も行います。収入については、年金収入だけでした。臨時収入として、後述の保険金請求による保険金があります。
支出としては、入所している施設の利用料のほか、日用品費、通院費などがあります。また、Aさんが住んでいるBさん名義の自宅について、固定資産税や水道光熱費、火災保険料なども確認します。すでにBさんが住んではいないのですが、扶養義務の関係を整理して支出の可否を決定します(この点は、個別事情によるところが大きいので、詳細は省略します。)。

(4)保険金請求

Bさんが契約していた生命保険において、重度障害特約が付帯しており、当該特約に基づいて保険請求ができるか否かを確認しました。確認した結果、保険金がおりるということだったので、入院保障に基づく保険金請求とあわせて手続きを行いました。

4.Aさんについては?

(1)任意後見契約の検討

Bさんについて、財産管理や生活環境の整備は成年後見人として継続して行っていくのですが、心配される点としては、Aさんに万が一があったときの対応が気になります。
この点については、たとえば任意後見契約を第三者と契約し、万が一に備えるということも考えられます。
しかしながら、Aさんとしては、現状は問題ないということと、心理的なハードルがあったようで任意後見契約までは行わないこととしました。

(2)法定後見の検討

任意後見契約の締結は見送ったものの、かりに判断能力の低下等が生じた場合に、Aさんに対して成年後見人等の選任申立てをしてくれる人を検討する必要があります。
(なお、配偶者であるBさんが申立てをすることは、現状の判断能力では難しく、また成年後見人にBさんを代理して申立てをする権限は認められないとされています。)
そのため、近くに住んでいるAさんの姪っ子さんと話をし「申立てであれば対応できるよ」という回答をいただき一安心となりました。なお、申立てをしてくれる親族等がいない場合には、市町長による申立てを検討することになります(ただし、静岡県東部地域でも、各市町によって対応にバラツキがあり、安心とはいえないところが残念な点です。令和3年1月現在。)。

(3)この他にも・・

この他にも、相続・遺言・葬儀など検討すべきことはたくさんあるのですが、身体的にも心理的にも負担が大きい事柄なので、ちょっとずつAさんと一緒に進めるようにしています。
法律専門職としては、具体的な課題については速やかに法的対応をとりたいところですが、ご本人や関係者の気持ちや体調にも配慮しつつ、間違っても無理強いしないことを心掛けています。 事例紹介は以上となります。
重ねてとなりますが、上記事例は、弊所利用の際にイメージを持ってもらうべくご紹介しているものです。いくつかの事例を組み合わせつつ、編集したものですので、その点ご承知おきください。

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