事例で考える「叔父・叔母(おじ・おば)の介護」への備え

事例で考える「叔父・叔母(おじ・おば)の介護」への備え

2021年8月14日

1.モデルケース
【単身で生活する叔父(または叔母)の生活援助について】

依頼者はAさん。(沼津市在住)

Aさんには弟Bさんがいます。

Bさんには、妻Cさんと、子どもDさんがいたのですが、いずれも先に亡くなっています。
現在は、ご自宅で一人暮らしをしています。

Aさんが心配しているのは、Bさんの老後のことです。

Bさんの身近な親族はAさんだけです。
Aさん自身には子供が2人いますが、2人とも県外に住んでおり、沼津に帰ってくるのは年数回。
Aさんの子供とBさんとの間の交流は、それほど多くはありません。

Bさんが入院したり、あるいは介護が必要となった場合に、Aさんが面倒をみれれば良いのですが、Aさん自身も高齢です。
また、Aさんとしては、Bさんのことで、あまり子供たちに負担をかけたくもないという思いもあります。

そこで、どういった対応方法があるのか、当事務所に相談にいらっしゃいました。

老後における介護や看護について、配偶者・子供・親族が面倒を見ながら、どうしても対応できない場合に病院・施設を頼るという考え方が根強くありました。

ところが、家族観の変化、少子高齢化の進行、晩婚化・未婚化などを背景として、Bさんのような方が増加傾向です。

  • 子どもや親族などがいない。
  • 子どもや親族がいても、さまざまな理由から頼ることができない。

こうした場合には「老後に備える」(いわゆる終活)が必要となってきます。

2.老後の課題の整理(司法書士の立場から)

Bさんのケースについて考える前に、司法書士の立場から、老後に生じる課題を整理してみます。

年を重ねるにつれて、身体能力や判断能力の低下により、次のような課題が発生してきます。

  • 自身で生活環境を整備することができない
    →衣食住といった生活全般への影響
  • お金の入出金や生活費の支払いができない
    →生活の基盤ともいえる金銭管理に大きな悪影響

3.身体能力の低下に対応する

(1)親族による対応

身体機能が低下する場合には、生活介護が必要となってきます。

生活介護といっても、たとえば身体介護(食事、入浴、トイレなどの支援。)・生活援助(買いもの、洗濯、掃除など。)・通院支援(病院との往復や受診付添など。)など、範囲が広く、必要な支援は人それぞれです。

親族で対応できることもあれば、介護保険の活用が必要なところもあるでしょう。介護保険についてはケアマネジャーの助けも重要です。
介護保険による各種介護サービスについては、介護サービス事業者とBさん本人とが契約を締結する必要があります。

生活援助に加えて金銭管理(毎月の収支管理。介護サービス利用料や通院費などの支払い。)についても対応する必要があります。
親族がいるのならば、小口の現金を預かったり引き出したりして、支払いを行うという対応も不可能ではないでしょう。

(2)第三者との契約による対応(財産管理契約)

金銭管理について、親族による対応が難しいケースでは、介護保険と同じく「第三者と契約」を締結することが必要となります。
具体的には「財産管理契約」を締結します。詳細については、参照記事をご覧ください。

【参照記事:終活としての「財産管理契約」】

4.判断能力の低下に備える

(1)親族による対応

ご本人の判断能力の低下は、「生活介護」「財産管理」の両面に、大きな影響を与えます。
生活介護について重要となる「介護サービス」は、すべてご本人が「契約」することで利用可能となるものです。判断能力の低下は、そうした契約をご本人が締結することを困難とします。

財産管理面においては、親族が本人に代わって預貯金を引き出したりすることで対応可能といわれることもあります。しかしながら、定期預金の解約や所有不動産の売却など、本人でなければできない手続きに直面した時には「成年後見制度」の利用が必要となってきます。

【参照記事:成年後見制度を利用するケースについて】

(2)任意後見契約による対応

判断能力が低下してしまった「後」においては、成年後見制度のうちの「法定後見」というものを利用せざるを得ません。
法定後見においては、本人の代理人となる「後見人」は家庭裁判所が選任します。

一方、判断能力が低下する「前」に、判断能力の低下に「備え」るための契約をすることも可能です。
「備える契約」のことを任意後見契約といいます。
任意後見契約や、任意後見と法定後見の比較については、次の記事をご参照ください。

【参照記事:任意後見契約について】

5.相続に備える

(1)遺言の検討

Bさんのような家族関係・親族関係の場合には、亡くなられた後(相続)についても対応が必要なケースが少なくありません。

「兄弟姉妹が相続人となるため遺産分割協議が大変」「そもそも相続人がいない」「相続人以外の人に遺産を引き継いでもらいたい」という場合には、遺言を残しておくことが非常に効果的です。

【参照記事:おひとり様と遺言】

(2)葬儀や納骨を誰が担当するか

また、ご本人が亡くなった後に葬儀や納骨をしてくれる親族がいない場合には、第三者に葬儀や納骨の手続き(死後事務といいます。)を委任する必要があります。
こうした委任契約を「死後事務委任契約」といいます。

【参照記事:死後事務委任契約とは】

5.叔父・叔母の介護においては事前準備が必要

冒頭のBさんのケースにおいては、次の4つの要否を検討する必要があるかもしれません。

  1. 財産管理契約
  2. 任意後見契約(+見守り契約)
  3. 遺言
  4. 死後事務委任契約

もちろん、各種契約の当事者になるのはBさんですから、Bさん本人の意向を確認することは当然です。

加えて、Aさんの子供たちの意向も確認しておく必要があるでしょう。
「生活援助は離れているから難しいけれど、葬儀や納骨については責任をもって対応したい。」ということもあるでしょうし、「親族ではあるけれど、日ごろの交流が無く、どう対応してよいかわからない。」ということもあるでしょう。

各契約や遺言の要不要はひとそれぞれです。
具体的な事案に沿って、要不要を判断すべきですし、個々の契約の内容も事案によって様々です。

こういったご相談を受ける中で強く感じることは、今の社会では「老後や相続について予め自分で決定しておくことが求められている。」ということです。

これまでは、老後や相続について自己決定をしていなくても、配偶者・子供あるいは親族が何とかしてくれたのかもしれません。
そうした当たり前が、少しずつ変化しているように思います。

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