相続人の調査(戸籍調査)の必要性について

相続人の調査(戸籍調査)の必要性について

2021年1月10日

1.戸籍調査の必要性(相続人を確定する)

(1)相続人は誰かということを「戸籍」をみてチェックする

相続による遺産承継手続きにあたっては、必ず戸籍調査が必要となります。

たとえば、遺産の分け方を決める「遺産分割協議」は、亡くなられた方の相続人全員で行う必要があります。
遺産分割協議によって、不動産や預貯金を相続した人は、法務局(不動産)・銀行(預貯金)・証券会社(株式・投資信託)に「相続人全員で協議した結果、自分が相続財産を取得しました。」といって手続きをしに行くことになります。

法務局や銀行で相続手続きをする際には、遺産分割協議書を含めて、つぎのような書類を提出するのが一般的です。

  • 遺産分割協議書    (⇒遺産の分け方を証明)
  • 戸籍一式       (⇒誰が相続人かを証明)
  • 相続人全員の印鑑証明書(⇒すべての相続人が同意していることを証明)

戸籍を提出することは、法務局・銀行・証券会社に対して、「誰が相続人か」ということを公的書類によって証明することを意味するのです。

(2)相続人が確定できるよう戸籍を集める必要がある

「相続人は誰か」ということを証明するために戸籍を提出するのですが、そのときには遺産を承継した人の戸籍だけを提出するだけでは不十分です。

法務局・銀行・証券会社などは「相続関係を確認できる戸籍一式を提出してください。」といってくるでしょう。

では、「相続関係を確認できる戸籍一式」とは、具体的にどういうものなのでしょうか?

以下では、「相続関係を確認できる戸籍一式」として必要な戸籍の集め方を確認していきます。
また、集めた戸籍の使用にあたって、手続き負担を軽減させてくれる「法定相続情報証明制度」の紹介をいたします。

※なお、説明が複雑になるのを避けるため、相続関係については、現行民法を前提としています。また、代襲相続・養子・数次相続などは、基本的に考慮していません。

2.「相続関係を確認できる戸籍一式」の集め方

(1)前提となる相続関係を確認する

戸籍集めをする前に、「相続関係」について基礎的なことを知っておく必要があります。

相続関係とは、要するに「亡くなられた方(被相続人)について、誰が相続人となるか。」ということです。
相続人となる資格は、法律によって、次のように決まっています。

  • 配偶者
  • 第1順位:子
  • 第2順位:直系尊属(父母や祖父母)
  • 第3順位:兄弟姉妹

配偶者は必ず相続人となりますが、その他の親族は、法律によって順位付けがされています。
自分より先の順位の相続人がいる場合には、その親族が直系尊属や兄弟姉妹であっても相続人にはなりません。

(2)戸籍集めは他に相続資格を持つ人がいないことを証明できるように集める

戸籍集めの鉄則は「他に相続資格を持つ人がいないことを証明できるように集める」ということです。

そのため、まず最初に、いれば必ず相続人となる配偶者の有無を確認します。

次に、子の有無を確認します。第1順位の相続人の有無を確認するのです。
子がいない場合には、直系尊属の有無を確認します。
さらに直系尊属がいない場合には、兄弟姉妹の有無を確認します。

子がいるようであれば、直系尊属や兄弟姉妹は相続人にはならないので、直系尊属や兄弟姉妹の有無を調べる必要はありません。
同じく、直系尊属が相続人となるのであれば、兄弟姉妹の有無を調べる必要はありません。

このように、相続関係によって調査すべき戸籍の範囲は変わってくるのです。
この他にも、代襲相続・養子・数次相続などの特殊事情によっても、調査すべき戸籍の範囲は変わってきます。
必要な戸籍集めるためには、相続関係を正確に理解できる専門的な知識が必要なのです。

パターンごとに集めるべき戸籍については、つぎの記事もご参照ください。
【参照記事:相続パターンごとの「相続手続きに必要な戸籍」について】

3.「出生から死亡までの戸籍」を集めることの意味

(1)ある人の「出生から死亡までの戸籍」を集めると子の有無がわかる

どのような相続関係にせよ、戸籍調査においては、必ず「亡くなられた方(被相続人)の出生から死亡までの戸籍」を集めることになります。

この意味は、要するに「被相続人の子の有無」を確認することにあります。
第1順位の相続人である「子」の有無を確認するため、被相続人の出生から死亡までの戸籍を集めるのです。

(ちなみに、いれば必ず相続人となる「配偶者」については、被相続人の死亡したときの戸籍を調べればすぐに確認ができます。)

(2)1人の人に対して複数の戸籍が出てくる理由

人によっては、「出生から死亡までの戸籍」が1つだけの人もいます。
一方で、「出生から死亡までの戸籍」がいくつもある人もいます。

これは、つぎのような理由で戸籍の変遷が発生するためです。

  • 婚姻や転籍などによる変遷
  • 戸籍の様式変更などによる変遷

たとえば、婚姻すれば、夫婦に対して新しい戸籍が作成されます。
また、沼津市から三島市に本籍地を移した(転籍)とすれば、三島市に新しい戸籍が作成されます。

婚姻や転籍は、個人の事情による新たな戸籍が作成されるパターンですが、この他にも、戸籍の様式変更によっても、新しい戸籍が作成されることがあります。

代表例が、戦前の「家」単位による戸籍編成から、戦後の「夫婦」単位での戸籍編成に変更になったケースです。
このほかにも、手書きの戸籍からコンピュータ化した戸籍に変更になることもあります。

(3)誰の「出生から死亡までの戸籍」を集めるのか

戸籍集めにおいて「出生から死亡までの戸籍」というのはキーワードです。

というのも、第1順位の相続人の確認は、被相続人の「出生から死亡までの戸籍」を集めることになります。

そして、第3順位の相続人の確認は、被相続人の父母それぞれの「出生から死亡までの戸籍」を集めて確認していきます。
これは、「被相続人の兄弟姉妹」=「被相続人の父母の子」であるからです。

この記事では説明を省略しますが、代襲相続においても、被代襲者の「出生から死亡までの戸籍」を集めて代襲相続人を確認していきます。
【参照記事:代襲相続について】

4.具体的に「相続のための戸籍集め」ってどうやるの?

(1)集めたい戸籍の本籍地がある市区町村に対して請求する

ここからは、具体的な「戸籍集め」の進め方を確認していきます。

戸籍集めのポイントは、「本籍地のある市区町村に対して戸籍発行を請求しなければならない」という点です。

たとえば、沼津市に住所をもつAさんが亡くなったとします。
Aさんの本籍地は、富士市だったとします。

そうなると、まずは死亡したときの戸籍を富士市に対して請求することになります。

ここで、富士市の戸籍は婚姻の際に作成されたもので、生まれた際の本籍地が三島市にあったとします。
その場合には、さらに三島市に対して戸籍請求をすることになります。

(2)遠方であれば郵送請求も可能

さきほどの例では、沼津・三島・富士と、比較的近い距離だったので、直接、各市役所に行くことも可能かもしれません。

ところが、これが、生まれたときの本籍地は札幌市、そのあと転籍して鹿児島市、さらに婚姻の際に三島市に本籍を置いたということになると、直接行くのは現実的ではないでしょう。

そんなときには、郵送請求が可能です(近くの市役所でも郵送請求を利用することはできます。)。

ただし、請求書・定額小為替・本人確認書類・疎明資料などなど、いろいろなものを要領よく準備する必要があり、非常に面倒くさいです。
詳しくは、外部リンクとなりますが、沼津市の「郵送による証明の請求方法」のページをご覧ください。

参考記事(外部リンク)
静岡県沼津市の公式ウェブサイトです。市民のみなさま向けや事業者のみなさま向けの情報、市政情報、観光情報などを提供しています。
www.city.numazu.shizuoka.jp

5.相続手続きのための戸籍集めは難しい

(1)相続関係・戸籍に関する知識が必要となる

ここまで、相続手続きにおける戸籍調査について確認してきました。

一見すると、非常に難しく思えるかもしれませんが、つぎのようなケースでは非常に簡単に終わることもあります。

  • 被相続人は、生まれてから亡くなるまで、ずっと同じ本籍地だった(沼津市だった)。
  • 被相続人には、生存する子供がおり、その子らが相続人となる。
  • 相続人となる子らも、本籍地は被相続人と同じだ(沼津市だった)。

このケースでは、相続人が沼津市の窓口に行き、相続手続きに利用する旨を疎明資料等で示すことができれば、すぐに相続手続きに必要な戸籍を集めることができます。

一方で、つぎのようなケースでは、戸籍集めは非常に大変となるでしょう。

  • 兄弟姉妹が相続人になるケース
  • 代襲相続・数次相続・養子縁組など相続関係が複雑なケース

こうしたケースでは、相続関係に関する法的な知識が必要となってきます。
また集める戸籍の量が増えてくるので、ひとつの市町では戸籍集めが完結することはマレでしょう。

(2)郵送による戸籍請求が非常に面倒くさい

また、戸籍集めにおいてネックとなるのが、郵送による戸籍請求です。

さきほど、沼津市のHPをご紹介しましたが、どの市町においても、郵送による戸籍請求に際しては、少なくとも次のような対応が必要になってきます。

  • 戸籍手数料の支払いに「定額小為替」が必要になる。
  • ケースによっては他市町で取得した戸籍のコピーなどを要求されることがある。

とくに困るのが定額小為替です。
ゆうちょ銀行で販売しており、発行には証書1枚につき200円が必要となります。

詳しくは、外部リンクとなりますが、ゆうちょ銀行のHPをご参照ください。

参考記事(外部リンク)

(3)法律専門職に依頼することも可能

相続手続きにおける戸籍集めは、ときに非常に大変な作業となります。

そこで、法律専門職に活用することをオススメします。
とくに、このあとご案内する法定相続情報証明制度の利用を依頼することは、後続する遺産承継手続きにおいても非常に大きなメリットとなるでしょう。

6.【おすすめ】法定相続情報証明制度の利用!

(1)法定相続情報証明制度とは

戸籍集めは場合によっては、非常に複雑な作業となります。
とりわけ兄弟姉妹の相続の場合だと、一般的な相続でも、戸籍の通数が数十通となることも、まれではありません。

法務局で行われている「法定相続情報証明制度」は、集めた戸籍一式をもとに法定相続人の一覧図を作成したうえで、これらを法務局に提出すると、法務局で一覧図を認証してくれるものです。

【参照記事:法定相続情報証明制度について】

(2)法定相続情報証明制度の利用を司法書士に依頼する

法定相続情報証明制度の利用は、所定の書類を作成したうえで、相続人から法務局に対して申出をすることにより行います。

申出にあたっては、「相続関係を確認できる戸籍一式」が必要となります。
法定相続情報証明制度を利用するにあたっても、当然ながら、大変で面倒くさい戸籍集めが必要となってきます。

そうしたときには、法定相続情報証明制度の利用を、司法書士に依頼することを検討してみてはどうでしょうか?

法定相続情報証明制度の利用を司法書士に依頼すれば、戸籍集めを、司法書士が代行することも可能となります。
さらには、法定相続情報一覧図などの提出書類も、司法書士が代わりに作成してくれます。

さらには、認証された一覧図を遺産承継手続きを行う金融機関等に提出すれば、戸籍を提出する手間も、提出された戸籍を確認する時間も省略されます。

当事務所の遺産承継業務でも、基本的には、最初の段階で、この法定相続情報制度を利用して、一覧図の認証を受けています。
一覧図の利用をすることで、従来2~3時間程度はかかっていた金融機関での遺産承継手続きが、1時間弱で完了するためです。

ご自身で遺産承継手続きを行うという方にも、法定相続情報証明制度の利用を検討いただければと思います。