相続人の確定(戸籍調査)

相続人の確定(戸籍調査)

2021年1月10日

相続による遺産承継手続きにあたっては、必ず戸籍調査が必要となります。
遺産分割協議は、亡くなられた方の相続人全員で行う必要があるところ、「誰が相続人であるか」は、原則的に、必要な戸籍を集めて確認します。
法務局(不動産の名義変更)においても、銀行(預貯金の解約)・証券会社(株式・信託の承継)においても、相続関係を確認できる戸籍一式の提出を求められます。 以下では、遺産承継に必要な戸籍の集め方と、手続き負担を軽減させてくれる「法定相続情報証明制度」の紹介をいたします(なお、複雑になるのを避けるため、相続関係については、現行民法を前提としています。)。

(はじめに)なぜ複数の戸籍を取得する必要があるのか  

戸籍一式の提出は「相続人を公的に確認するため」に求められています。
この目的を達成するためには、まず第1に、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を集める必要があります。これは、亡くなった方の「配偶者」と「子」の存否を確認するためです。
そして「出生から死亡までの戸籍」は、多くの方にとっては1つではありません。
一例として「Aさんの出生から死亡までの戸籍」を列挙してみます。

  1. 出生の時の戸籍
    Aさんは父Bと母Cの子として出生しました。そのため、BC夫婦の戸籍(本籍:沼津市)に記録されました。
  2. 婚姻時の戸籍
    AさんはDさんと婚姻しました。これにより、新たにAD夫婦の戸籍(本籍:三島市)が作成されました。
  3. 転籍による戸籍
    AD夫婦は、本籍を三島市から沼津市に変更しました。これにより、あらたに沼津市に、AD夫婦の戸籍が作成されました。
    その後、本籍の変更はなく、Aさんは死亡しました。

上記の例だと、1から3の戸籍3通が、Aさんの出生から死亡までの戸籍となります。
新たに戸籍が編製されるのは、婚姻・転籍・分籍など当事者の事情によるものが多いのですが、戸籍は法律の改正により新たに作られることもあります(「家制度」廃止やコンピューター化による戸籍編製など。)ので、必要な戸籍の通数は、人それぞれになります。

(ステップ1)亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍を集める

戸籍調査の進め方としては、まず、亡くなられた方(以下「被相続人」といいます。)の出生から死亡までの戸籍を集めます。
相続人が、本籍地を把握していれば、その戸籍を取得します。本籍地を把握していなければ、住民票を取得し、住民票に記録された本籍を確認します。そのうえで該当する本籍地に戸籍の発行を請求します。
なお現時点(令和3年1月)においては、戸籍の請求は本籍地の市町村に直接請求しなければならない仕組みとなっています(この点は、遠くない将来において、法律改正で改善される予定です。)。
近くであれば直接窓口に行って、遠くであれば郵送請求によって、ということになります。これが非常に面倒で、とくに郵送請求の場合には、戸籍等発行手数料の納付を現金ではなく郵便小為替というもので行う必要があるなど、一層手間がかかります

(ステップ2)配偶者の有無を確認する

被相続人が亡くなった時の戸籍に、配偶者が記録されている場合、その配偶者は相続人となります。死亡前に離婚していれば、その方は相続人とはなりません。
内縁の妻(または夫)がいたとしても、法律上の婚姻がなされていなければ、相続人とはなりません。これらの方に遺産を分けたい場合には、遺言を作成しておく必要があります。
(あくまで相続人とならないだけであって、遺族年金や生命保険の受取人等になるか否かは、個別の法律あるいは契約により決定されることなので、ご注意ください。)

(ステップ3)子の有無を確認する

相続第1順位の子の有無を確認します。
出生から死亡までの戸籍に、被相続人の子がいれば、その子が相続人となります。子がいれば、その子の戸籍を集め、戸籍調査はここで終了です。
なお、子が被相続人の死亡以前に死亡していた場合、その子に子(つまり被相続人にとっての孫。)がいれば、孫が相続人となります。これを代襲相続といいます。この場合には、その子の出生から死亡までの戸籍と、孫の戸籍が必要になります。これは、代襲資格者たる孫の存否を確認するためです。

ちなみに、子の代襲相続については、孫だけでなく、要件を満たせば曾孫以下まで代襲する可能性がありますが詳細は省略します。 子が既に死亡していて、代襲相続人がいない場合には、「子がいない場合」と同様、次のステップに進みます。

(ステップ4)子がいない場合には父母・祖父母の存否を確認する

子がいない場合には、相続第2順位の直系尊属、すなわち父母・祖父母の存否を確認します。
一人でも生存していれば、その方が相続人となります。この場合、父母の戸籍収集の作業はここで終了です。
いずれも死亡している場合には、相続第3順位である兄弟姉妹の確認に移ります。

(ステップ5)直系尊属も死亡の場合には、兄弟姉妹の存否を確認する

直系尊属も死亡している場合には、相続第3順位である兄弟姉妹の確認をします。これには、被相続人の父・母それぞれの「出生から死亡までの戸籍」と取り寄せます。これは、「被相続人にとっての兄弟姉妹」=「父・母それぞれについての子」となるためです。
兄弟姉妹がいれば、その戸籍を取得して、戸籍調査は終了となります。
なお、兄弟姉妹についても一代限りで代襲相続が可能です(つまり被相続人の甥・姪が相続人となりうる。)。この場合には、亡くなっている兄弟姉妹の出生から死亡までの戸籍と、甥または姪の戸籍が必要となります。

(まとめ)

以上のとおり、遺産承継手続きを行うに際して必要となる戸籍は、場合によっては非常に多数に上ります。
上記では触れませんでしたが、代襲相続のほか数次相続(相続人が更に死亡するケース)、旧民法の適用など、複雑になる原因は、ほかにもいろいろあります。弊所でも、一部の相続登記の案件では、相続人が数十人となり、100通を超える戸籍を集めるということも少なくありません。
そのようなことから、戸籍調査の段階で、遺産承継手続きの代行を検討される方が一定数いらっしゃいます。「途中まで集めたんだけど」とか「本籍地すらわからないんだけど」とか「家族関係が複雑なんだけど」とか、どのような状況でもかまいませんので、「大変だな」「難しいな」と感じたら、是非とも弊所の活用をご検討ください。

【おすすめ】法定相続情報証明制度の利用!

戸籍集めは場合によっては、非常に複雑な作業となります。
とりわけ兄弟姉妹の相続の場合だと、一般的な相続でも、戸籍の通数が数十通となることも、まれではありません。
そうした場合、遺産承継手続きを行う際に、いちいち戸籍一式を提出し、提出を受けた金融機関等で全て確認してという作業を繰り返すのは非常に手間です。
このような場合には、法務局で行われている「法定相続情報証明制度」を利用するのが非常にオススメです。
この制度は、集めた戸籍一式をもとに法定相続人の一覧図を作成したうえで、これらを法務局に提出すると、法務局で一覧図を認証してくれるものです。数十通の戸籍の束が、たった一枚の一覧図に変換されるのです。
認証された一覧図を、遺産承継手続きを行う金融機関等に提出すれば、戸籍を提出する手間も、提出された戸籍を確認する時間も省略されます。
弊所の遺産承継業務でも、基本的には、最初の段階で、この法定相続情報制度を利用して、一覧図の認証を受けています。一覧図の利用をすることで、従来2~3時間程度はかかっていた金融機関での遺産承継手続きが、1時間程度で完了するためです。
ご自身で遺産承継手続きを行うという方にも、法定相続情報証明制度の利用を検討いただければと思います。

【参照記事:法定相続情報証明制度について】