この記事では、モデルケースを利用して「遺産承継業務(兄弟相続)」に関するご依頼を、初回相談から課題解決まで、どのように進めていくのか確認していただくことを目的としています。
1.モデルケース ~兄弟姉妹(または甥姪)が相続人となる遺産承継~
沼津市にお住いのAさん。
叔父Bさんが亡くなり、Bさんの遺産承継の手続きを行おうとしていました。
Bさんには、妻や子がおらず、相続人はBさんの兄弟姉妹である、Aさん、Cさん、Dさん、Eさん、Fさんの5名です。
このうち、Aさん・Cさん・Dさんは代襲相続人(Bさんの亡長兄の子)であり、Bさんの甥または姪にあたります。
Bさんの遺産としては、伊豆の国市の不動産のほか、預貯金もあるようですが、生活を別にしていたため詳細は相続人全員がわかっていませんでした。
当初は自分で手続きをしようと思ったものの、遺産調査から相続人で対応するのは難しかったこと、縁遠い親族もいるため専門家に依頼し堅実に手続きを進めたかったことから、当事務所への依頼を検討することとなりました。
2.初回相談の内容
(1)依頼内容 ~預金調査から始める遺産承継業務~
ご依頼の内容はつぎのとおりです。
- Bさんの遺産の調査(とりわけ金融機関)
- 伊豆の国市の不動産について相続登記(相続による名義変更)
- 預貯金について解約・承継手続きを行う。
(2)当事務所からの確認事項
- 口頭で、相続関係の確認を行いました。相続関係としては複雑な要因はなく、親族間の日常的な交流は少ないものの、今回の相続に関しては協議も円滑に行えるとのことでした。
- 相続人間で簡単な話し合いを行い、基本的にはAさんが不動産等を取得しつつ、いくらかのお金を他の相続人に分配するという方向性は固まっているようです。
- まずは、戸籍収集による相続人の確認と、遺産調査を実施し遺産目録を確定させることとしました。
- また、初回相談の段階で、費用概算をお示しし、ご了解をいただきました。ある程度、遺産調査が進めば、確定したお見積りを提示することについても了解をいただきました。
3.課題解決までの流れ
(1)当事務所の対応
- 戸籍調査による相続人の確定
- 名寄帳を取得して不動産の確認
Bさんが住んでいた土地・建物のほか、伊豆の国市内の山林を所有していることが確認できました。
亡くなられた方が縁遠いケースだと、どういった不動産を所有しているのかわからないケースは少なくありません。そうしたケースでは、名寄帳を取得することで同一市町内の所有不動産を確認することができます。 - 各金融機関で残高証明書を取得して、預貯金の価値を確認。
Bさんの遺産には不明確な点が多く、預貯金についても、どこの金融機関に口座があるのかはよくわかっていませんでした。ご自宅に残されていた通帳やキャッシュカード等を確認しながら、めぼしい金融機関には直接残高照会を行い、金融資産を確認する作業を行いました。 - 遺産目録を作成する。
- 遺産分割の結果を、遺産分割協議書として文書化する。
- 遺産分割協議書のほか、法務局や金融機関に提出する書面をそろえ、関係する相続人に郵送にて捺印をもらう。
- 法務局にて相続登記の申請を行う
- 金融機関にて預貯金及び投資信託の解約・承継手続きをおこなう。
(2)お客様にお願いする作業
- 遺産分割の話し合い
- 相続人全員が印鑑証明書を取得
- 遺産分割協議書のほか、相続手続書類への押印。
このケースでは「主たる遺産をAさんが承継しつつ、他の相続人に代償金を支払う」という内容で相続人間の協議がまとまりました。これは、いったんBさんの遺産はAさんが取得したうえで、そのかわりにAさんから他の相続人に対して幾らかのお金を支払うというものです。
遺産分割協議書に、代償金の支払いについて明記します。
4.対応期間
こうしたケースでは、半年~1年程度の期間で承継手続きが完了することが多いです。
とりわけ、最初の段階の相続財産調査がポイントで、深くまで調査するケースだと、調査だけで数か月かかってしまうケースもあります。
また、相続人の人数も少なくないので、分割方法に関する話し合いや、相続人の押印手続きなどで、予定以上の時間がかかる可能性もあります。


