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1.一般社団法人とは
(1)一般社団法人とは「非営利法人」
一般社団法人とは、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」によって規定される手続きを踏むことで設立可能な「非営利法人」の一種です。
「非営利である」というのは、余剰利益を法人の構成員で分配しないことを指します。
勘違いされる方が多いのですが、非営利法人も、余剰利益の分配をしなければ、収益事業をおこなってもOKです(ボランティア活動だけに活動が制限されるわけではない)。
また、事業に従事する役員や従業員に対して適切な報酬・給与を支払うことも可能です。
(2)営利法人の代表が「株式会社」
非営利法人の対義語は営利法人です。
営利法人の代表格は「株式会社」であり、株式会社は会社構成員(株主)に余剰利益の分配(いわゆる「配当」)を行うことを目的としています。
非営利法人である一般社団法人は、利益配当が禁じられています。
2.一般社団法人の設立
(1)最低人員は社員2名・理事1名
一般社団法人の設立にあたっては、法人の構成員である「社員」が2名以上必要です。
当事務所で取扱いの多い「比較的小規模の一般社団法人」においては、社員2名・理事1名(理事は社員のうちの1名が兼ねる)という構成が多いです。
(2)設立の手続き
一般社団法人の設立手続きは、つぎのように進めていきます。
- 社員による定款の作成
- 定款認証
- 設立時の役員(理事・代表理事等)の選任
- 設立時理事等による調査
- 設立登記申請
1カ月弱をみていただけると余裕を持ったスケジュールになります。
「定款の作成」にどれくらい時間をかけるのかによって、スケジュールは長くも短くもなります。
3.一般社団法人においては「定款作成」が重要
(1)定款に必ず記載すべき事項がある
一般社団法人の定款に、最低限、どういった事項を定めるべきかは法律で規定されています。このうち、特に重要な事項は次のとおりです。
- 目的等:
法人の目的及び目的達成のために行う事業を定めます。目的等は登記される事項であり、対外的にも目にされる事項です。
組織の究極的な目標・存在意義をアピールする箇所であり、広報的な意味合いも含めて、丁寧に慎重に検討すべきです。 - 社員資格の得喪に関する規定:
一般社団法人の構成員である「社員」は、この定款規定に従って社員となったり、社員としての資格を失ったりします。
株式会社と異なり株式の有無により判断されるのではないため、資格の得喪に関する規定をどのように定めるのかは、法人の性格を決定するものとなります。
(たとえば同窓会、趣味サークルなどでは、それに則した資格の規定を定める必要があるでしょう。)
(2)実質的な「組織のルール」を定款に定める必要性
法律によって定款に記載することを強制される事項のほかにも、記載は必須ではないものの定款に定めることで効力をもつ規定があります。
一例として「経費負担に関する規定」があげられます。
事業収益で組織を維持するための経費がまかなえるケースであれば検討する必要はありませんが、「社員から入会金・会費を徴収」して最低限の経費を確保することが求められる場合があります。
この場合には、定款上に、社員の「経費負担に関する定め」を置くことを選択します。
4.他の法人と一般社団法人の比較
(1)株式会社との比較
株式会社 | 一般社団法人 | |
法人の特徴 | 営利法人 | 非営利法人 |
最小の構成 | 1名 (株主かつ代表取締役) | 2名 (社員2名) (うち1名が理事・代表理事) |
役員の登記 | すくなくとも10年に1回は必要 | すくなくとも2年に1回は必要 |
いわゆる「配当」 | 可能 | 不可 |
定款認証 | 必要 | 必要 |
- 株式会社は1人だけでも設立可能です。
- 株式会社では、会社構成によっては、役員登記を10年に一回とすることができます。
一方、一般社団法人は少なくとも2年に一回は役員登記を行う必要があり、手続・経費負担が生じます。 - 一般社団法人では、利益剰余金の分配ができません。
したがって、毎年利益が貯まっていくような事業を行う場合には、株式会社・合同会社などの営利法人を選択することも検討するべきかもしれません。
(2)合同会社との比較
合同会社 | 一般社団法人 | |
法人の特徴 | 営利法人 | 非営利法人 |
最小の構成 | 1名 | 2名 (社員2名) (うち1名が理事・代表理事) |
役員の登記 | 変更がない限り不要 | すくなくとも2年に1回は必要 |
いわゆる「配当」 | 可能 | 不可 |
定款認証 | 不要 | 必要 |
- 合同外野は1人だけでも設立可能です。
- 合同会社は、設立にあたって、定款認証手続きが不要です。
- 合同会社は、役員任期を設けないことも可能です。
(3)NPO法人との比較
つぎの参照記事をご覧ください。
【参照記事:一般社団法人とNPO法人との比較】
5.法人税法上の「非営利型」一般社団法人について
この項目は、一般社団法人の税務に言及するものです。
税務に関するアドバイスは、税理士の領分であるため、この項目ではごく初歩的な事項をご紹介するのみにとどめております。
詳細は税務署・税理士に確認いただくようお願いいたします。
(1)一般社団法人の位置づけ
原則的には、一般社団法人も、株式会社や合同会社と同じように、普通法人として全ての所得が課税対象となります。
(2)税制上の「非営利型一般社団法人」について
ただし、特定の一般社団法人については「非営利型一般社団法人」と定義されており、法人税法上の収益事業から生じた所得のみが課税対象となります。公益目的事業から生じた所得は課税対象とはなりません。
この「非営利型一般社団法人」とは、①非営利性が徹底された一般社団法人と、②共益的活動を目的とする一般社団法人を指します。
(3)非営利性が徹底された一般社団法人
次の要件を満たした一般社団法人は「非営利性が徹底された一般社団法人」となります。
- 剰余金の分配を行わないことを定款に定めていること。
- 解散したときは、残余財産を国・地方公共団体や一定の公益的な団体に贈与することを定款に定めていること。
- 上記1及び2の定款の定めに違反する行為(上記1、2及び下記4の要件に該当していた期間において、特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを含みます。)を行うことを決定し、又は行ったことがないこと。
- 各理事について、理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の 1 以下であること。【要するに役員を身内で固めてはダメ!】
(4)共益的活動を目的とする一般社団法人
次の要件を満たした一般社団法人は「共益的活動を目的とする一般社団法人」となります。
- 会員に共通する利益を図る活動を行うことを目的としていること。
- 定款等に会費の定めがあること。
- 主たる事業として収益事業を行っていないこと。
- 定款に特定の個人又は団体に剰余金の分配を行うことを定めていないこと。
- 解散したときにその残余財産を特定の個人又は団体に帰属させることを定款に定めていないこと。
- 上記1から5まで及び下記7の要件に該当していた期間において、特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを決定し、又は与えたことがないこと。
- 各理事について、理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の 1 以下であること。【要するに役員を身内で固めてはダメ!】
6.一般社団法人をはじめとした各種法人の設立手続き
(1)沼津の司法書士貝原事務所の紹介
この記事は、沼津市の司法書士法人貝原事務所が作成しています。
「沼津の司法書士貝原事務所」には2名の司法書士が所属しており、うち1名は行政書士兼業です。
業務の受託にあたっては、かならず「面談での打合せ」を行っているため、静岡県東部地域(沼津、富士、三島など)のお客様が中心となっております。
(2)一般社団法人の設立にも対応!!
当事務所では、一般社団法人をはじめとした各種法人の設立・変更手続きを代行しています。
株式会社・一般社団法人のほか、社会福祉法人・医療法人・事業協同組合などの特殊法人の登記にも対応していますので、お気軽にお問合わせください。